強襲
薫が出て行ってから凪が机に突っ伏すこと数十分。
電気を灯した事で、明るくなった部屋は、わずかにではあるが精神力を回復させてくれる。
気持ちが落ち込むことも少なくなった。
ただ、既に眠気はどっかに飛んでいってしまったため、ただただ暇な時間が流れる。
凪の体感ではもう一日が終わるくらいの時間を過ごした気がした。
静かな教室の中に壁に飾れた時計のカチカチという針の音が妙に大きく感じる。
「はぁ……暇だわ〜。」
時計の音に紛れて部屋の外から足音が聞こえてくる。
「ん? 足音? もしかして、かおるんが戻ってきた?」
最初は薫の者だと思っていたが、やけに振動が大きい気がする。
足音はどんどん近づいて来ているようだ。
誰かが走ってきているのだろうか。
音の間隔から察するにその速度が異常なほど早い。
明らかな異変だった。移動してきているのは人ではないような気がした。
ふと、天井を見上げる。
明るく光る電気が見えた。
「もしかして……これ目印? なんか? ヤバイ?」
凪は机から勢い良く立ち上がり、ロッカーの中に隠れた。
息をひそめて隙間から出入口を見る。
そいつが来たのは凪が隠れてから直ぐの事だった。
狼の顔。赤黒い血塗られた巨大な爪。
大きさは人ほどだが、瞳に宿る殺意は部屋の気温を数度下げるほどだ。
「ぐおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!!!!!!!」
まるで獣唸り声。
漏れそうになる嗚咽を殺して、じっと見つめる。
「GUYコツ!!! ここに居るんだろう? 出て来い!!!!」
怒りの咆哮が教室の中に轟く。
誰かを探しているのか教室の中を荒らしていく。
部屋の中が滅茶苦茶になった。
そいつの目が凪の隠れるロッカーに向けられた。
(やば……)
化物が近づいてくる。
「ぐおおおお!!!!!!!!」
右手を振りかぶる。
その瞬間、凪は扉を開けてそいつの前に転がり出た。
「あはは……」
二人の間が凍ったように泊まる。狼男の目が凪を捕らえている。
凪は頭を掻きながら、「あー、アタシは多分探し人じゃないですよー。」と笑う。
「ぐおおおおおおおおおお!!!!!!」
狼男は腕を大きく持ち上げた。
「で、ですよねー……」
青ざめた顔で、溜めてから大きな悲鳴を上げた。
「きゃあああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!」
―――
――
―
アジトの外に出たGUYコツとキャットシーは、地震の原因を探るため、校内の歩いていた。
電気は消えて人気のない廊下は少しばかり、陰鬱な雰囲気が漂っている。
「寒いにゃー!! にゃんで雪が降ってるわけー?」
「俺に聞かれても分からん。なんでだろうな。」
「こんにゃことにゃら、外にでにゃきゃ良かったー。部屋でぬくぬくしてるんだったにゃー。」
キャットシーはずっとこんな感じでぼやきっぱなしだった。
「まぁ、そう言うなって。こんな異常気象が起きてるって事は、さっきの地震も何か関係してるかもしれないんだから、ちゃんと調査しようぜ。」
「そんにゃ事言う、GUYコツも不満だらだらにゃー。」
痛いところをつかれたと、苦い顔をしながら頬を掻いて、話を聞いていた。
「部屋の外に出れたのに、こんにゃ雪じゃ学校から外に出て行くのは難しいからってさー。」
「流石に雪は想定外だったからなぁ。」
「それにしてもお嬢達は大丈夫にゃのかにゃー? 雪が降ってるって教えてくれても良かったのにねー。」
「うーん。」
GUYコツは電話を取り出して画面を見る。
「アイツらから連絡はないんだよな。」
朝早くから買い物に出かけたアレグラ達は一体何処にいったのやら。
連絡のない待ち受け画面を見ながら、GUYコツはふぅと小さく息を吐く。
「何はともあれ、さっさとこの異常事態を解決して、俺らも外に行こう。」
「はいはい。でも、これ解決したら、あたいは、酒飲みに戻るからにゃー。」
「これから基地の移動するとか言われたのに、酒ばっか呑んでると準備が―――」
GUYコツはキャットシーに呆れながらやれやれとした様子で話す。
その途中、二人の耳に大きな悲鳴が聞こえてきた。
「きゃあああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!」
「にゃ!?」
「ん!?」
悲鳴は上の階層から聞こえてきたようだ。
「キャットシー行くぞ!」
「はいはい。」
GUYコツが走って行ってから、キャットシーもやれやれとしながらその後を追いかけた。




