惨劇の始まり
怪人達が体育館を占領してから数時間後。
教室の一室で、そんな事を知るよりもない二人の少女が机に突っ伏して惰眠を貪っていた。
薫と凪の二人である。
小さな寝息を立てて、机の上にだらしなく涎を垂らしいる。
しかし、その夢心地も肌が感じとった冷気によって邪魔をされてしまう。
「「さむぅ!!!」」
机につっぷしていた薫と凪は、ほぼ同時に叫び机から顔を上げた。
「なんなの? かおるん、今日寒くないー?」
「だよね! 寒すぎてヤバイ! これはマジで洒落にならない。」
二人は顔を見合わせたあと、自分の体を摩る。
吐く息は白くなっていた。
それは部屋の温度がどのくらい冷たいのかを示しているようだ。
「折角、熟睡してたのにー。マジでこれはないってばー。こんな寒くちゃ寝れないよー。何がどうなっているのよ!」
震えた声で叫ぶと、凪は席を立ち、窓の方に歩いていく。
「暖房つけよ!」
薫も徐に立ち上がり、寒い部屋に暖房を入れるために部屋のエアコンに電源を付けた。
振り向くと、 窓際で顔を真っ青にしている凪が外を見つめていることに気が付く。
「ナギナギ? どったの?」
様子のおかしい凪に近寄った。
近づいてきた薫に気が付いた凪が何も言わずに、人差し指で窓の外を見るように合図をする。
薫は疑問に思いながら外を見た。
そこに映っているのは、今の季節では考えられない光景だ。
窓の外では雪が吹き荒れている。窓枠は氷が張っており、冷気を部屋の中が入り込んできている。
太陽が隠れてしまうほどの厚い雲によって、日差しもなく辺りは暗い。
まるでどこかの山奥にでも入りこんでしまったようだ。
現実みのない光景に思わず、薫は頬を軽くつねった。
「いたい……夢じゃない? なんで雪?」
「アタシも知らないよー。」
凪が困った顔して答える。
「だよね。」
「でも凄い雪だねー。この町って滅多に雪が降ることないのにー。なんで雪なんて振るのかなー。」
「それよりも季節的に異常でしょう。今は夏なのよ。雪が降るなんてどう考えても可笑しいって。」
二人は再び窓の外をのぞき込んだ。
窓の外からは校庭が見える。
しかし、薄暗く白銀の世界になっている事で、いつもとは違う世界のようだ。
「ねぇ、かおるん。あれ、何かな?」
「ん?」
凪は顔を青くしたまま、指を指しながらそうつぶやいた。
凪の指先を追って薫の視界を白銀の世界となった校庭に向ける。
校庭を凝らして見ると、そこにはいくつかの黒い影が蠢いていた。
「なにあれ?」
疑問に思いながらその黒い影を見続けていると、突然、体育館のある方から一つの人影が飛び出てきた。
その人影を追うように黒い影が動き出す。
素早い獣のような動きだ。
ジグザグに動きながら人影を追い詰める。
そして―――それは二つに裂かれた。
白い雪の上で動かなくなったそれらから、大量の色のついた液体が飛び散ちる。
「きゃああああ!!!!!」
凪の悲鳴が隣で聞こえてくる。
薫も口を塞ぎ、その光景をまじまじと見つめていた。
目の前で起きた惨劇は始まりでしかない事を今は知らない。




