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屍怪人 GUYコツの受難  作者: 恐竜列島
カズノコ学園の死闘!!
129/214

ヒーローはどこにいる?

 突然、現れた怪人達の凶行。

 既に何名かの犠牲が目の前で出てしまった事もあり空気は重い。


(こんな時に怪人の襲撃かよ。)


 陽平の心中は穏やかではない。

 立て続けに起きた事象に頭が追い付かずに直ぐに動く事が出来なかった。

 しかし、それは陽平の命を救っていたことでもある。

 もしも、冷静さを欠いたまま飛び出していたとしても、目の前の状況は一切好転せずに無駄死にしていただろう。

 雪による寒さと外に飛び出した生徒が狼の怪人に引き裂かれたことで、少しだけ冷静さを取り戻した陽平はこの状況を打破する方法を考え始めた。

 犠牲者もいるのだ。早く動かねば事態は悪化するだけだ。


「ねぇ、陽平君……」


 ミュエも震えている。


「大丈夫。俺が何とかするから。」


 外は大雪。そして、狼の頭の怪人が徘徊している。

 体育館の中ではライオン頭の怪人は腕を組みながら、笑みを浮かべてこちらを睨みつけていた。

 

(二体一か。花村の奴がいれば分担できたのに……)


 多人数体一となる状況。それは戦闘においては、回避するべきことである。

 なぜなら、人数の比率はそのまま戦局の有利不利につながってしまうからだ。

 可能なら一対一での戦いにしないといけない。

 逆に、人数比で有利になる状況を作れることは意識する必要がある。

 これは、アクセル――榊優一から耳にタコができるほど煩く教えられてきたことだ。

 

(まずは入口を壊して、狼の奴が中に入ってこれないようにした上でライオンの奴と戦うか? 外に駆けて行って狼の奴と戦うか……でも雪か……足元がおぼつかないよな。速攻は無理そうだ。)


 陽平は頭を悩ましてしまう。

 こういう考え事はあまり得意な方ではない。

 しかし、無謀に突撃をしても碌な結果を生まないことは今までの経験から学んできている。


 陽平が次の展開を考えて唸っていると、

「怪人ども! お前らは知らないだろうが、この学校にはタマキキャットが居るんだぞ!!!! この街のヒーローなんだ!!!」

 一人の生徒が声を上げたのだ。


(うぉっ、マジか!? 俺が考えてる時に、怪人に喧嘩を吹っ掛けるなよ!)


 無論、叫んだ生徒は玉置梢が休んでいる事を知らないのだろう。

 もしくはタマキキャットが居ると噂で聞いただけかもしれない。


 その言葉で生徒の顔色は様々な変化をする。

 梢が休んでいるという状況を知らない人達は、嬉々として希望を口にする。


「そうだよ。うちらにはタマキキャットさんがいるもの!!! 早くアイツをやっつけて!」

 

 一部の生徒達の中にもそんな希望の盛り上がりが広がっていく。

 次第に大きな「タマキキャット! タマキキャット!!!」と呼ぶコールが体育館の中で溢れる。


(今は玉置が居ないんだから、タマキキャットは来ないんだけどな……あのライオン顔が何かをしようものなら、どんだけ不利でも俺が出なきゃ……)

 

 陽平は、怪人が激昂して襲ってこないかに注意してじっと様子を伺う。

 すると、壇上で腕を組んでいたライオンの怪人は鼻で笑った。


「ふっ、タマキキャット……ですか。」


 ライオン頭の怪人は騒がしくなった生徒達を一瞥すると、天に向かい大きく吠えた。


「ぐおぉぉぉおおおおおおおおお!!!!!!」


 今、怪人の様子を伺い変身してでも飛び込もうとしていた陽平の意志を挫くには十分な迫力だった。

 勿論、それまで騒がしかった生徒達も黙ってしまう。


 獣の咆哮が鳴ると天井に開けられた穴や出入口から怪人達がわらわらと入ってくる。

 数はゆうに数十を超えていた。


(おいおい、マジかよ……)


 陽平は驚きを隠せない。

 すると、陽平の横っ腹をミュエが軽く突いてきた。


「どうしたの?」


 ミュエは黙ったまま視線を一点に向けていた。

 その視線の先を陽平も見る。

 一体の怪人がリードのつけられた一人の少女を無理り引きずりこんできた。

 その少女は梢だった。

 怯える様子が遠目からでも伝わってくる。


「梢ちゃん!!!」

「玉置ちゃん!!!!」


 隣のクラスの梢の友達たち、加奈子と真理絵の二人が大きな声を出して呼びかけている。

 その声で一瞬だけ動きが止まったが、視線を合わせることもなくずっと下を向いたままだ。


「ほら、きりきり歩け。お前は自分の立場ってもんが分かっているんだろう?」


 梢は怪人達に小突かれながら、皆の眼前を通り前の方に連れて行かれてしまう。

 無理やりとライオンの怪人の前に放り出されてしまう。

 ライオンの怪人は先生の血で赤く黒く染また大きな手を梢の頭に乗せて、皆に見せつけるように優しく撫で始めた。


「そうそう。この場には知らない人もいるかもしれないですね。この子がタマキキャットなのですよ。」


 そこにあるのはヒーローが怪人に屈服しているという状況だ。

 怪人の口元は不気味な笑みを浮かべている。


「さぁ、タマキキャット。君に期待してる方々がこんなにいますよ。で、どうしますか? 彼らを守るために戦いますか? 私は良いですよ? でも、負けたら――そうですね。今より酷いことになりますとだけ言っておきますか。」


 唇を噛みしめたまま、震えた声で梢は「皆、ごめんなさい……怪人様には逆らいません……」と零す。


「謝罪するときは、どうすると教えましたか?」

 

 びくりと体を震わせると、梢は頭を床につけて、土下座をする。

 その姿勢のまま何度も謝罪の言葉を繰り返していた。


―――――

―――


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