盛大なパーティ
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ここは怪人協会にあるフェーンの部屋。
ベッドのきしむ音と女の甘い矯正が絶え間なく続いていた。
pipipipipi!!!!!!
突然、電話の着信音が鳴り響いた。
フェーンは電話を一瞥する。
大きく息を吐きだし、ベッドの上で息を切らしていて横になっているキュエの頬を叩き目を覚まさせる。そのまま、気だるげに顎で指示をする。
その意図を読んだキュエは無言で頷くとゆっくりと立ち上がり電話に向かう。
電話に出ると少しばかり艶のある声で応対した後、
「ふぅーぅ……はぁ……いま、主に代わりますので、お待ちください。」
絶え絶えの息遣いでその言葉を述べてから、キュエはフェーンを見やる。
「代われ。」
感情の起伏のない静かな物言いだった。
命令を受けて、キュエは受話器を持ってフェーンに近づく。
そして、膝をつき頭を垂れて受話器をフェーンに差し出した。
電話を受け取ると、いつものようにニヤニヤとした軽口で話出す。
「代わったよ。奴隷ちゃんの粗相はごめんねー。で、君はだーれ?」
先ほど、キュエに向けていた態度とは百八十度変えて応対をする。
「あー、君かー。こんな時間に怪人に連絡してくるなんてどうしたのさー? 僕、お楽しみの最中だったんだけど……」
『――――――――が分かった。奴は今、――――!!!』
受話器から漏れるほどの声量。
フェーンは思わず耳を離して、顔をしかめる。
再び静かになった受話器に顔を傾けると苦い顔をしたまま苦言を呈する。
「君、興奮し過ぎ。うっさいなぁ。あまり聞こえなかったよー。もう一回言って。なんだって?」
「それ本当なの?」
フェーンは不敵な笑みを浮かべた。
悪巧みをしている時の怖い顔だ。
キュエはただただその矛先が自分に向かない事を願うばかりだ。
「へぇー。そっか。そっか。GUYコツは学校に潜んでいたんだねー。ちなみにこれは誰情報なの? 信用できるわけ?」
「君たちの信に値する情報筋からの情報ねぇ? でもさー。場所が割れたならヒーローにやらせればいいじゃん。ほら、チョチョイと。」
「ヒーロー達が正式な情報を出してこない? あはっ。なにそれ? 君たち信用ないんじゃないのー?」
「あはは。怒らないでよ。ほら僕って思った事が口からでちゃうタイプだから。」
「いや、それは待ってくんない? ……僕的にはこっちのシナリオの方が好都合かな。うん。こっちで調整してみるよ。また、連絡するね。それじゃーね。アイン。」
フェーンがキュエに視線で電話を切るように合図をすると、それに応じて電話を切り受話器を元の場所に戻す。
フェーンの口角が上げて独り言をつぶやいた。
「あはぁ。これは忙しくなるかなー。」
何を思いついたのか。
主の言葉を恐怖に震える。
しかし、キュエは何も言えず何も聞けない。
「キュエ、ライ雷オンに取り付けて。」
ただ黙って、その命令に従うだけだ。
服を着て、深々とお辞儀をして部屋を後にした。
☆☆☆
「で、フェーン君、話とはなんです?」
キュエに呼ばれてフェーンの部屋にやってきたライ雷オンは椅子に腰掛けながらフェーンに問いただす。
「私も暇じゃありません。今は新しい幹部を選ぶ作業が残ってるのでね。」
多くの怪人が独立したことことで、組織運営の忙しさが全てライ雷オンに周ってきてしまうのだろう。
目の下に大きな隈が出てきてる。
「いやいや、君が欲しがってる情報を手に入れたから報告だよ。」
「欲しがっている情報? 優秀な怪人の居場所とかですか?」
「GUYコツの隠れてる場所。」
「本当か!?」
ライ雷オンは椅子から立ち上がりとニヤニヤとしているフェーンの肩を掴む。
「うん。本当だよ。」
「奴はどこに!?」
「ライ雷オン近いよ。近いってば。」
フェーンは目を見開き問い詰めるライ雷オンを押して距離を取る。
「あぁ、すみません。感情が高ぶってしまった。それで、奴はどこにいるんです?」
「カズノコ学園。GUYコツはそこに居るよ。」
「そうですか。くくっ。奴を殺すための盛大なパーティをひらきましょう。これは忙しくなりますねぇ。」
「だねぇ。僕も計画が進みそうで嬉しいよ。」
高らかに笑うライ雷オンに相槌を打ちながら、フェーンも上機嫌に振る舞う。
「GUYコツの征伐を新しい怪人協会の最初に大仕事にしましょう。うん。私はそのための準備をしないといけませんね。そうだ。フェーン君、あの子を連れてきてくれませんか?」
「あの子?」
「タマキキャットです。ほら、数週間前に私が連れてきた。」
「あぁ……分かったよ。で、今はどこにいるの?」
「拷問室ですね。GUYコツの情報を全く吐かずだったので」
「あちゃー。そりゃあの魔女っ子は怪人からは嫌われてるだろうけど、あまりに惨いねぇ。」
☆☆☆
ここは怪人協会のアジトにある一室。怪人達が溜まった自己の欲望、鬱憤、憤怒、劣情、妄想を発散する場所だ。
現実に地獄という物があるなら、まさにここはその一つと数えられるだろう。
普段は漆黒に染まった部屋では極度の冷気を帯びて常に静寂に包まている。
そんな部屋にフェーンはキュエを連れて入ってきた。
石壁に囲まれた部屋の中に乾いた足音が響く。
「ごめんなさい……ごめんなさい……ごめんなさい……ごめんなさい……ごめんなさい……」
暗い部屋の中から小さくつぶやくような謝罪の言葉が聞こえてくる。
電気も通っていない部屋だ。
蝋燭の灯りが部屋にともされていく。
「いやー、今日も盛んだんだねぇ。ばっちぃなぁ。」
フェーンは鎖につながれた少女を見て嗤う。
フェーンが見下す少女は変わりはてた玉置梢だった。
その柔肌には無数の傷がつけられていた。
ここに来た時には白かった肌も埃や煤によって黒く汚れてしまっている。
特に大きな変化はその目だろう。
生気のない目で、新しくやってきた怪人に謝罪の言葉を機械のように繰り返す。
謝罪の理由は呟いている本人も分からない。
ただその言葉を繰り返すことだけがこの状況を逃げる手段なのだ。
「キュエ、あの子を掃除しといてよ。」
「はい……」




