勘と悪寒
「「「はぁ……」」」
ゼクスが部屋を出て行ったことで、緊張が解かれて、三人は大きなため息を吐き出した。
「いきなり来るなんてびっくりしちゃうわ。心臓に悪い!!!」
「ほんとだよなぁ。でも、ゼクスさんもGUYコツを探しているのか……どうするよ? 薫。」
「どうするって言うと?」
「GUYコツの事、報告しようかって事。今回は咄嗟の事で隠したけどよ。」
「私はこずこずに会わせてからって考えてるのよね。」
「あのっ! 二人とも!」
ゼクスが来てびくびくとしていたミュエが震えた声を上げた。
「ミュエっちどうしたんだ?」
「ミュエは司君の事をゼクス様に言った方が良いと思うの!」
「まぁ普通に考えたらそうよね。でも報告すると嫌な予感がするのよ。」
「どうしてなの?」
「勘よ。勘。」
「陽平君はどう思う?」
「こういう時の薫の勘って悪い方に当たるからなぁ。俺は割とどっちでも良い派ではあるんだけど。まぁ、隠し事は嫌ってミュエっちの気持ちはわかるぜ。」
「ううん。隠し事が嫌なんじゃないんだけど……」
ミュエは歯切れ悪い言葉を発しながら暗い顔を浮かべた。
何かあるのだろうか?
そんな気がした陽平が声をかけようとしたときに、
「おいおい。さっきの奴は誰だよ。」
「あっ、GUYコツ。」
人骨標本に化けていたGUYコツが姿を見せる。
「あんた、凄い汗出てるわよ。」
「お前達、良く平気にしてるよ。あんな化け物は初めて見たぞ……」
「化け物は怪人の方だろ。ってツッコミ待ち?」
揶揄う陽平に、不服そうな表情をしていたので、見かねた薫が代わりに答える。
「あの人はゼクスさん。ヒーロー協会のお偉いさんなんだって。」
「ヒーロー……? アレが?」
「ゼクスさん自身はヒーローじゃないわよ。 そうよね?」
「さぁ、俺は知らね。」
陽平がミュエを見ると首を振る。
分からないという事をジェスチャーで伝えているのだろう。
「ミュエっちも知らないってよ。」
「そうか。ゼクス……あれはヤバい奴だな。どうやらヒーロー協会ってのは胡散臭い組織なのか。」
「ちょっと、さっきから失礼じゃない。」
「そうだぜ。ゼクスさんは気の良いおっさんだよ。」
「……いやな。お前達―――」
pipipipipipipi!!!!!
pipipipipipipi!!!!!
pipipipipipipi!!!!!
突然、どこかで電話が鳴り響く。
この部屋に備わる電話のものではない。薫と陽平は自分の携帯電話を取り出して画面を見るが自分の物じゃないとわかると直ぐにポケットにしまった。
「誰の電話?」
「ミュエっちの鞄から鳴ってない?」
「あれぇ? ミュエなのかなぁ?」
ミュエが自分の鞄に近づいて中にあるバイブレーションによって激しく震える携帯電話を取り出した。
「わわ! ミュエの電話が鳴ってたんだ。」
携帯電話の操作に慣れていないのだろう。
何やら戸惑いながら、ぎこちない手つきで操作をし始める。
「ミュエは機械音痴なんだな。こりゃアレグラ並だ。」
「司君ひどいよー。ミュエはお屋敷の方では、こういうの使った事無いから難しいの!」
「お屋敷?」
「そう。ミュエっちは、ゼクスさんのお屋敷で働くメイドさんなのよ。」
何とか画面を見た瞬間。ミュエの顔が青ざめる。
見かねた薫が口をはさむ。
「ミュエっち、どうしたの? 顔凄く青くなってるけど……」
「ううん。大丈夫。なんでもないよ。ミュエ電話出てくるね。」
それだけ言ってミュエは電話を持って外に出て行ってしまう。
「ここで電話すりゃいいのに。変なの。」
陽平がミュエの出て行った扉を見ながらつぶやいた。
「多分、秘密があるのよ。ミュエっちも女の子だもの。」
「秘密? 秘密って?」
「彼氏とか?」
「彼氏だとっ!!!????」
陽平は突然の単語に飛沫が飛ぶほどの声量で薫に向かって叫ぶ。
「落ち着きなさいよ。冗談よ。冗談。全く、ほんと陽平は馬鹿ね。」




