動く歯車
GUYコツがヒーローの研究室を初めて訪れてから数日後。
「おいっすー!」
ミュエが制服のスカートをはためかせながら、元気よく挨拶をしながら部室に入ってくる。
「よっす、ミュエっち。」
「やぁ、今日は遅かったのね。」
既に来ていた陽平と薫が挨拶を返えす。
「今日は、ミュエね。クラスの日直だったんだよ。これから、アレグラちゃん達のところに行くの?」
ミュエが鞄を席に置き一息をつこうとすると、本棚の後ろからもう一人の人物が挨拶を口にしながら顔を見せる。
「よっ。ミュエ。」
「あれっ、司君も来てたんだ。」
「まぁな。」
「GUYコツは俺よりも早く来てたぜ。絶対、俺らが授業中から部室に居たって。」
そう言うのは今日一番最初に研究室に来ていた陽平だ。
「アジトよりもこっちの方が面白いからしょうがない。」
そうこの男。
怪人の癖にヒーローの部室に入り浸り、部屋に置かれているヒーローマガジンを読んでいるのだ。
「司君、毎日良く来るねー。」
「アジトに居ても暇だからなぁ。そっちだって俺達のアジトに毎日顔を出してたんだし、おあいこって事で……良いよな?」
「でも、毎日毎日部室に来て大丈夫なの? 他の子らは何やってるのよ。」
「大丈夫。大丈夫。学校の中だし。」
GUYコツは軽く答えながら、雑誌のページをめくりながら、「アレグラ、スルメン、テッペキンはデパートに買い物に行ってるよ。キャットシーは真昼間から酒飲んでるな。博士は何やら機械の整備中だ。」っと答える。
「ふーん。割と自由なのね。」
「まぁ、俺以外は特に制限されてないからな。なぜか俺だけ外に行くのは禁止されてるんだよ。だからってアジトに居るとキャットシーに酒を飲まされるからな……ここは唯一の癒しの場所なんだ。」
「随分と世知辛いのね。私のお父さんが、家に居場所ないからってホテルに行くとか言ってるのと同じ匂いがするわね……」
「おいおい、花村の家はどうなってるんだよ。」
「ちょっと、『お風呂は先に入るなー』とか『洗濯物とか一緒にしないで!』とか『半径10メートルは近づくな』とか普通の事を言っただけよ。」
「それは花村の親父が可哀想じゃ……」
「ミュエは薫ちゃんの気持ちわかるよ。おじさんの洗濯物が一緒はちょっとやだなぁって思うかも。」
「まさに思春期って奴だな。ミュエも薫もそういう年頃になんだろ。」
「あんたに上から分析されるとちょっとムカつくわね。もうちょっとお父さんに優しくしようかしら……」
「まぁ、そうして貰えれば、薫のお父さんも泣いて喜ぶかもな。」
四人が雑談に花を咲かせていると、突然、ノックされる。
それは誰かの来訪を意味しているのだ。
ミュエと薫と陽平は顔を見合わせて合図を送る。
三人の緊張の糸を断ち切るように、一瞬の緊迫した状況の中、GUYコツが惚けた声をだした。
「この部室ってお前ら以外も来るのな。」
三人の顔がGUYコツに向かう。
それを無視して陽平が薫に聞く。
「流石に学校に不審者が居る状態は流石にまずいよな。」
「不審者だと!? 外に居る奴がか!?」
「……司君のことだよ。」
ミュエの冷ややかなジト目から目を逸らして、
「あぁ……俺か……そっかそうだよな……」
と呟く。どうやら自分の状況を理解したようだ。
「で、誰が来るんだよ。俺は全く知らないけど、花村は聞いてるか?」
首を振って否定を知らない事を回答する。
「なら、ミュエっちは?」
「ミュエも知らないよ。」
二度目のノックがされる。
「誰もいないのー?」
外から女性の声がする。
「GUYコツはさっさと隠れなさいよ。」
薫に急かされるも、この部屋にGUYコツが隠れられる場所なんてないのだ。
「隠れる場所なんてないぞ? 流石に本棚の後ろはばれそうだな……」
「うーん……」
「そうだ! ミュエ、良いアイディアあるよ! いっそ怪人の姿になって、人骨模型の振りをするのはどうかな?」
「……しかたない。それで行くか……裸になるのは恥ずかしいが仕方ないか。」
GUYコツが人皮を脱ぎ捨てて、人骨模型として振る舞うべく棒立ち状態になった。
遠目で見れば、見事な人骨模型である。
それを確認した薫がノックした者を部屋に招くために扉を開けた。




