謝罪
「ちょっと染みますわよ。」
「いたた……」
「司、男の子なら我慢なさいな。」
ビートブルーから受けた怪我をアレグラが治療してくれている。
戦いというよりも一方的な暴力を受けた怪我だ。
「どうして司は反撃しなかったのかしら。」
「まぁ……陽平の言い分も最もだったしな。全く耳が痛いよ。俺の考え無しの行動が多くの人を傷つけていたってのは……正直ショックだったぜ。」
「そんなに思いつめる事無いと思うのだけど……」
アレグラがフォローしてくれるのは嬉しいが、それを受け入れてしまえば、恐らく自分は心まで人であることをやめてしまうかもしれない。
そんな気持ちから真っ先に否定の言葉出てしまった。
「いや、ヒーローってのはやっぱり暗い気持ちを吹っ飛ばす存在だからこそだぜ。そんな奴が、多くの人を悲しませるなんてあっちゃいけない事だよ。
そもそも襲撃計画を聞いた時に、断れば良かったんだ。怪人協会なんて知るか―!ってさ。」
「でも、司は誰も傷つけてないわ。」
「直接的には……な。街一個消し飛んだのは俺らが居なきゃ起こらなかったかもしれないだろ。それが間接的に多くの人を悲しませた。
はぁ……それを見ないように、気付かないようにしてたんだなぁって……」
GUYコツは溜息を吐いて、顔を暗くする。
何かフォローの言葉をかけようとしているアレグラも少し困り顔を浮かべていた。
そんな二人の間に「図星を突かれたって奴?」、会話を聞いていた薫が、横から口をはさんできた。
「そうそれ。」
「あんたってやっぱり本当に変な怪人だわ。」
「そうか?」
「そうよ。本来怪人は、自分勝手で乱暴者なんだから。他人の心配なんて普通はしないはず……って話を聞いていたんだけど。」
そう断言する薫に、GUYコツは自分が出会ってきた怪人達を思い起こしていた。
まず思い起こしたのはここにいる仲間達だ。
自分の無茶にも付き合ってくれるし、なんだかんだと面倒見はよさそうだ。
それどころか、ヒーローズなるヒーローの真似事もやってくれている。
他に知っている怪人達。
そう考えてGUYコツが次に思い起こしたのは、今まで戦ってきた敵達。
今、考えると彼らはどこか独善的なようにも思える。
そう考えると、今ここに居る仲間達は少し特殊なのかもしれない。
「……そうかもな。俺が戦ってきた奴らは、割と薫の言ってる特徴に合うかもしれないな。」
「怪人なのに怪人と戦ってたの? シラセじゃなくて?」
「あぁ、他にも色々とな。」
「司は悪鬼を倒してくれてのですわ!」
「悪鬼?」
「あぁ、スラッシュの奴な。あんときも死ぬかと思ったぜ。」
「スラッシュ? 知らない怪人ね。」
「他には、切り裂きジャンパーとか、リンドウとか。今、思えば俺って割と戦ってきたなぁ。」
「切り裂きジャンパー? 何か聞いたことあるわ。」
「テッペキンが言うには割と有名な奴らしいぜ。なんでもヒーロー狩りを趣味にしてる怪人だとか何とか……」
薫がGUYコツの言葉を遮るように、手で壁を作り、
「ちょっと新しい人物多すぎるわ。テッペキンって誰よ?」という言葉にアレグラが耳打ちをして答える。「鉄男の事ですわよ。」
「アレグラちゃんありがと。そうなのね。――ヒーロー狩り……あっ、思い出したわ。切り裂きジャンパーってタマキキャットに大怪我負わせた奴じゃん。あんたも戦ってたのね。」
「あぁ、梢がやられてたから俺が途中で入ったんだよ。あんときに何が何だかわからずヒーローに変身出来たんだよな。」
「なるほど。そこからタマキキャットと縁が出来たのね。へぇー。」
何かに納得するように薫は首を縦に振っている。
「切り裂きジャンパーはタマキキャットに引き渡したね。」
「あいつ生きてるのか? 割と本気で致命傷だった気がするが……」
「今は捕まってるわね。」
「捕まったって、どうしてるんだ?」
「私はよく知らないの。」
薫とGUYコツが話し始めているのを遠くから陽平は見つめていた。
そんな陽平に横からミュエが話かけてくる。
「ねぇねぇ、陽平君、ごめんなさいしたら?」
「ミュエっち。別に俺悪いことしてないし。」
「陽平君ったら拗ねちゃって。」
ミュエの言いたい事は、なんとなくわかる。
一方的な暴力になってしまった事を謝罪しておけと言う事だ。
ある意味で処世術の一つとしては、正しいだろう。
「陽平、こっちきなさいよ。」
「なんだよ。」
考え事をしていた陽平は薫に呼ばれてGUYコツと薫の間に複雑な顔をした陽平も加わった。
「捕まった怪人がどうなるか知ってるか。だって。私は知らないのよね。」
「確かに、俺もそれは知らないな。もしかしたら、玉置だったら知ってるかもしれないけど。」
「そうなのか。」
「なんで? そんな事を聞くんだ? 捕まるのが怖いとか?」
「まぁな。怖いっちゃ怖いな。それ以上に、興味からだな。罪を償った後は、どうなるのかってのも疑問だしな。無罪放免で世に出てこれるのか。それとも、二度と世に出れないようになるのか。怪人だからと迫害されているなら、世に出すことはないだろうし……
もしかしたら人に戻れるとかあるかもしれないし。」
「あんたは人に戻りたいのか?」
「そりゃな。俺は望んで怪人になった訳じゃない。あの博士、ジジイに無理やり怪人させられたんだから。」
「そうなのか……? 無理やり怪人に……」
それを聞いて、陽平は、少しだけ、同情する気持ちが生まれた。
だからか、先ほどの一方的な暴力になってしまった事を謝罪の言葉が自然にできてきたのだ。
「……あのさ。さっきは悪かったよ。」
「いや、陽平が言ってたことは事実だよ。気付かせてくれてありがとうな。」
「陽平君ちゃんと謝れたね! ミュエも良かったって思うよ!」
ヒーローの部室の隣ある奇妙な怪人達の秘密基地。
報告するべきかどうか。
薫と陽平は自分の立場を考えるなら、報告はすべきだろう。
しかし、こいつらに害はあるのか?
報告をしたらどうなるのか。
二人は少しだけ頭を悩ませる。
そして出した結論は様子見だったのであった。




