ルール違反
怪人協会のある一室。
一人の少年が通話をしていた。
その横にはボンテージの服に身に包んだ羽の生えた一人の少女が立っている。
「やぁやぁ、そっちから連絡を入れてくるなんて久々じゃないか。で、こんな時間にどうしたんだい?」
「ん? なんか怒ってない? 怒ってる?ってなんでさ~。」
「怪人のヒーロー君の事をなんで報告しなかったんだって? あっはっは。君は馬鹿だなぁ。そもそも、君らが言ったんじゃないか。『怪人はヒーローになれない。』『怪人とヒーローは全く別の生物だ』ってさ。居ないと言われていた者を知らないかと言われてもね~。」
「知らなかったのかって? いや、怪人協会の間でも噂は流れてたよ。怪人なのにヒーローになる奴がいるって噂がね。」
「おいおい。そんなに怒鳴るなよ~。そういう情報が必要なら必要だって先に良いなよ。責任転嫁は良くないよ。」
「『他に黙ってることはないのか?』 だって。 やだな~。もしかして僕そんなに信用ない?」
「くくっ。愚問だったね。打算の付き合いなんだ。信用なんてないよね。」
「そうそう、話は怪人のヒーロー君の事に戻るんだけど。こいつ怪人名は、屍怪人GUYコツって言うんだよね。君らの方で彼が今どこにいるとか知らない?」
「いや、僕は全く用はないんだけどね。ライ雷オンが彼を躍起に追っかけてるからさ。餌に出来ればいいかなって思ってさ。」
「そっかぁ。知らないか~。君らの調査能力も大してことないんだね。」
「あはは。馬鹿にしてる訳じゃないよ。肝心な時に役に立たない無能だな。とは思ってるけどね。それで要件はこれで終わり?」
「どこかで会えないかって? えー。それは難しいんだよな~。今、僕は別の計画で忙しいんだ。何か僕にメリットあるなら考えても……」
「へぇ……それは随分なプレゼントじゃないか。有翼人は、虐めると面白いからねぇ~。そうだ。アンザイを送り出すよ。アンザイもS級の怪人だからね。不足はないと思うよ。」
「そうそう。ドラゴンの件をよろしくね。だから僕が君らと組んであげてるんだから。忘れてるなら君らの頭が……」
「パーン」
「ってなるよ?」
脅し文句と共に少年は通話を切る。
そして、受話器を隣に立つ羽の生えた少女に渡す。
「ふぅ……やれやれあいつらも使えないなぁ。ねぇ、キュエもそう思わない?」
「フェーン様…… はい……」
少女の顔はトーンは暗い。
「あのフェーン様…… さっき電話口で言っていた有翼人とは……」
「新しいおもちゃをくれるってさ。そうだ。キュエ。アンザイにつないで。」
フェーンの命令を聞いて、少し考えこむように動きを止めてしまう。
「……」
「どうしたの?」
「私がここに居ます…… だからフェーン様には新しいおもちゃは必要ないんじゃないでしょうか……?」
「僕に意見するの?」
「そんな。そんな滅相もありません……」
「なら、早くアンザイに連絡を取りなよ。お願いじゃない。命令だよ。」
フェーンの雰囲気は、周囲の温度を数度下げるほどの威圧感があった。
見た目は愛らしい子供だが、その性根は怪人なのだ。
「言葉がすぎました…… 申し訳ございません…… 今すぐお電話をおつなぎしますので少々お待ちください……」
キュエは頭を下げて、アンザイに電話をかける。
☆☆☆
それとは裏腹に、別の場所では赤髪でツンツンに立てられた短髪の男が怒りに震えていた。
突然切られた電話を投げ捨て、叫びをあげる。
「くそ!!! あのクソガキが!!! 何様のつもりだ!!! 怪人風情が調子に乗りやがって!!!」
近くに居た鎧を着こんだ兵士がその様子を見て声をかける。
「アイン様! どうか落ち着いてください!」
兵士が止めに入ったことで、興奮を抑えてソファに座る。
「あぁ、そうだな。感情的になっていた。今は怒っていてもしかたないな。今はもっと忌々しい糞野郎の対策を講じなくてはだ。」
「お前はブレインズ-セブンによる会議を計画しろ。緊急集会を開く必要がある。」
「はい! 今すぐ用意します!」
兵士は礼儀正しくお辞儀をすると駆け足でアインの傍を離れ行く。
アインは一人になるとグラスに注がれたワインを片手に考える。
「シラセ…… あの怪人を潰したのは良い。しかし、もっと厄介な奴が出やがった。
この世界に何が起きている。 なぜ、怪人のヒーローなんて輩が出てるんだ?
これはルール違反だ。しかもそれも最悪のタイミングで民間人に情報が回ってしまった。
まだ隠れているなら内々で処理ができたのだがな。
しかも、クソガキの話では怪人の間では奴は前々から、噂になっていただと?
つまり、怪人のヒーローは前から暗躍していたことになる。
一体いつから何故?
ここまで報告がなかったという事はヒーロー側では誰も知らなかったのか?
いや、映像で見たタマキキャットの様子を考えると、あれはあの怪人を前々から知っていたんじゃないだろうか?
しかし、あの娘にはピカリンが付いていたはずだ。ならば、ゼクスが知らないはずはない……。」
呟きながら考えをまとめるが、アインの中で線が繋がらない。
頭を切り替えるために、グラスを口につける。
グラスの注がれたワインが既に空になっているとことに気が付いた。
「ふぅ…… 酔いも回ってきたな。」
アインは腰を落としていた高級なソファから立ちあがり夜風に当たるためにベランダに出る。
窓から見える景色は沢山の光が地面で輝いていた。
「この世界は須らく俺達の物だ。怪人のヒーロー、GUYコツ……奴の正体がなんであれ、俺たち、ブレインズ-セブンの決めたルール外の物は許すことはない。」
アインは赤く光る瞳で眼下に広がる夜景を見つめながら歯を噛みしめていた。




