来訪者
慌ただしく過ぎていく日々。
今日も部室には梢、薫、陽平の三人が集まり、事務作業に追われていた。
「はぁ……」
梢はひときり大きなため息をついて一旦作業に区切りをつける。
「疲れた~」
「ねっ。お疲れ様。」
と、後ろから近づいて来ていた薫が缶ジュールを梢のほっぺに当てる。
「ひゃん!」
驚声を出してしまうが、相手が薫と気が付くと梢は笑いながら缶ジュースを受け取り蓋を開ける。
「かおるんの方は終わったー?」
缶ジュールを受け取りながら梢は薫に聞く。
「まだだよ。 でも、私も休憩。」
薫は体を伸ばしながら、梢の質問に答える。
「怪人が出てなくなったらなったでこういう作業は疲れるよな。」
梢と薫が休憩してるのを見て陽平も会話に割り込んできた。
「今やってる事務作業は、今まで歴がこっそりと片付けてくれてたものもあるのよね。」
「そうなのか。菊水にはかなり助けられてたんだな。知らなかったぜ。」
「勇二もだけど歴も何やってるのやら……会ったら、捕まえてでも話を聞けるのに。」
少しばかり、不満を漏らす薫に梢も同調する。
「すっかり三人だけになっちゃったねー。部屋も少し広く感じるよ。」
「そうだよな。あっ、もしかして勇二も菊水も玉置が怒ってるから戻ってこれないんじゃないか?」
陽平も缶ジュースの蓋を開けて飲みながら笑いながら冗談交じりに梢をからかう。
「あたし、そんなに怒ってないよ!」
「『そんなに』なのね。」
「ちょっとだけだもん! ゆーじもれきれきも戻ってきて欲しいと思ってるよ!」
「だな。会えないと文句すら言えないからな。」
「そういや、玉置はあの怪人ヒーローを探してるんだろ? 行方は分かったのか?」
「そっちも全然だよ。」
手を上げて、お手上げのポーズをしながら梢は答える。
「あの記者のトシさんも躍起に探してるみたいだけど、全く情報なしだって。」
「そうなのね。記者さんでも追えないなら見つけるのは難しいかもね。」
「あたしもあきらめないよ!」
「もしかしたら、案外、近くに居るのかもね。」
「近くに?」
「例えば、この学校の中とか居たりして。」
「ははは。花村、それはないだろ。怪人が学校に居るとかどんな状況だよ。」
「ほらでも、今回、怪人は人に化けられるってわかったでしょ? だから、人に化けて学校に紛れている可能性もあるんじゃないかなーって。」
「なるほど。玉置は学校は探したのか?」
「そんな事…… あるのかな? 確かに学校は探してなかったよ。灯台下暗しだね!」
「よければ俺も探すの手伝おうか?」
「よーへい、いいの?」
「おう。俺もその怪人ヒーローって会って話してみたいし。」
「私も手伝うよ。」
「かおるん! よーへい! ありがとう! 早速、探しに行こうよ!」
「まぁ、落ち着け。この事務作業が終わってからな。」
陽平は、机に広がる紙の山を指さして、興奮する梢を静止する。
「そうだよね……」
「パパっと片付けちゃおう。」
「よーし。休憩終わり! 頑張るぞー!!」
梢が意気揚々と立ち上がった時に、ノックがする。
「「「誰?」」」
三人は目を見合わせて、確認をし合う。しかし、誰も来訪者に心当たりはないようだ。
またもノック音が続く。
「誰かいませんかー?」
外から女の子の声がする。
「この声!!」
何かに気が付いた陽平が扉に向かい開ける。
扉の先には綺麗な透明の羽が生え、メイド服を着たショートヘア―の少女が立っていた。
その少女を見て陽平は声を上げる。
「ミュエっち? え? なんで?」
「陽平くん、ひさしぶりだね。」
ミュエは、はにかみながら陽平に答える。
そして部屋の中に居た薫と梢にもぺこりと頭を下げる。
「皆さんもお久しぶりです。」
薫は陽平の態度やメイドの恰好をしていることから、一つの推察をして質問をした。
「あっ、もしかして、ゼクスさんのお城にいたメイドさん?」
「そうだよー。あっ、陽平くんや勇二くんや優一お兄さん以外は自己紹介してなかったよね。ミュエと言います。」
ペコリと頭を下げて梢と薫に挨拶をする。
それを見て薫と梢がひそひそと話だす。
「なんか、よーへいの態度おかしくないかな?」
「もしかしたらこの子は陽平が連絡取ってる言ってた子なのかも。」
「えー! そうなの? あたし、知らなかったよ!」
「この前にちらっと言ってたのよ。」
「そうなんだ。でもよーへいが連絡をするってなんか意外かも。」
「でしょ。私もそう思ったわ。全く隅に置けない奴なのよね。」
ミュエが頭を上げると同時に梢と薫はヒソヒソ話すのをやめる。
そして、今度は梢と薫が挨拶を返す。
「私は花村薫よ。陽平がミュエっちって呼んでるようだから私もそう呼ぶね。気に障ったらやめるわ。」
「あたしは玉置梢だよ。みゅえっち、よろしくね。」
「薫ちゃん、梢ちゃん、よろしくね。」
三人が簡単な自己紹介をし終えると、ミュエを部屋の中に招き入れる。
「今、バタバタしてるけど、部屋に入って。」
「それで陽平とはどんな関係なの?」
「えへへ。ミュエは陽平くんにはいろんな事教えてもらってたの。ミュエは外の世界出たことないから、全部新鮮な事ばっかりで凄く面白いの!」
「ふーん。陽平がねぇ。」
薫は頷きながらも、ニヤニヤした顔で陽平を見つめる。
「それにしてもヒーローって凄いんだね! この前もなんか凄い悪い人達と戦ったって聞いて心配だったんだよー」
「あっ、ミュエっちそれは、」
「そうなんだよ! ヒーローって凄いの! ―――」
梢が身を乗り出してミュエに話しだした。
ミュエは半笑いのまま表情が固まってしまう。
陽平はそんなミュエの肩を叩き、そっと耳打ちする。
「ミュエっち、梢はヒーローオタクだから。ヒーローの話題はほどほどにな。」
「で、ミュエっちはなんでここに?」
「えっとねー。ゼクス様の命令で、ここに来るようにって言われたの!」
「ゼクスさんの?」
「うん! 初めての外の世界に出れて、目新しいものばかり! 凄い楽しいの! 本当は街の方もみてみたいの?」
「それじゃ、今日はさ。みゅえっちの街案内をしようよ!」
「良いの? こずこずは、怪人ヒーローさんを探したいんじゃない?」
「うん。でも街案内しながらだと楽しみながら探せそうだし。学校の中の探索は、今日はもう遅くなりそうだかしね。」
「それもそうね。それじゃ、私達は事務作業を急いで済ませちゃいましょう。」
「そうだな。ミュエっち、ちょっと待ってて。」
「ミュエも何か手伝うよ!」




