戻ってきた日常と暗躍しだす影
Side:GUYコツ
俺はベッドの上だった。
視界に一番に入ったのは博士の顔だった。
「GUYコツ、やっと目を覚ましおったか。全く、お前はとんだ張り切りボーイじゃな。」
「博士か? あんたここで何してるんだ?」
「お前さんの看病じゃよ。全く、骨の怪人とは言え、不死身ではないのじゃ。心配にもなろう。お前はこれからの儂の計画に必要なのじゃから。」
「あぁ。」
全く意図しない返答に俺は困惑してしまう。
まさかこの博士から心配という言葉が出るとは。
「皆は?」
「お仲間は別の部屋で休んでおるよ。お前さん、どのくらい寝てたと思っておるんじゃ?」
「一時間くらい?」
「一週間じゃ。馬鹿もん!」
「一週間!? そんなに寝てたのか…?」
「お寝坊な奴なのは愛も変わらずじゃな。そのおかげで時間もあって、お前の左腕は治しておいたぞい。」
手を見ると確かにシラセとの戦いのときに壊れた左手が戻っている。
握りしめて感触を確かめる。
少し違和感はあるもの問題なく握りしめることができた。
「おお、博士ありがとうな。」
「儂とお前の連れ共に感謝せいよ。奴らがお前をボロボロの状態で持ってきたときは何事かと思ったわい。」
俺はシラセを倒した後、気を失ってそのまま眠りこけてしまったらしい。
どうやら、キャットシーが俺を助けてくれたとの事。
そして、運び込まれた後、俺は博士の秘密基地で治療を受けていた。
既に一週間が過ぎたらしい。
自分の不甲斐なさに情けなりつつ、俺は博士に聞く。
「それで、シラセの奴はどうなったんだ? 梢は無事だったのか?」
「フォッフォッフォッ、儂にはよーわからん。ただ、お前の連れが何やら情報誌を見ながら盛り上がっておったぞ。」
「そっか。どうなったのか気になっていたんだが。」
「それにしても、そうかシラセが。お前は奴と戦い。そして勝ったのだな。」
「多分な。でも博士はシラセも知ってるんだな。てっきり怪人なんて興味ないのかと思ったぜ。」
「お前は儂を何だと思っとる。まぁ、確かに怪人協会なんてもんに興味なんぞないが、シラセは別格じゃよ。奴はライ雷オンに並ぶ怪人じゃ。もともと儂の計画に組み込んでいた怪人なのじゃからな。」
「その計画って奴が分からんけど、あんな奴を入れるとか正気かよ?」
「奴は強さを得るためならば、どれだけも非情にもなれる。いや、寧ろ楽しんでそれを手を出すだろう。儂はそういうところを買っていたのだよ。計画の話はまずGUYコツの体を完全に治してからじゃな。やれやれ。お前ももう少し休養が必要じゃろうて。」
「なんかすまんな。」
「しょーもないことに突っ込むのはいいかげんにしてくれよ? どれ、今、お前の連れを呼んできてやろう。」
そう言って博士は俺の傍を立ち上がり、部屋の外に出て行ってしまう。
「はぁ……でも、今回は流石に無茶し過ぎたよな。」
ベッドに寝ころび物思いにふける。
梢はあの後どうなったんだろうか?
キャットシーが梢をフォローするとも思えないがドンパチやってなけりゃいいが。
考えていても仕方ないか。
博士が皆を連れてきてくれたら聞いてみるか。
ヒーローズとか面白いことやってたし、その話も聞いてみたいな。
☆☆☆
「GUYコツ、起きたのか―! この馬鹿! 心配かけ過ぎにゃ!!」
「……ったくよ。お前の勝手に振り回される俺らの身になれってんだ。まぁ、無事でよかったな。」
博士に連れられて来たのは、キャットシーとスルメンの二人だった。
「本当にごめん!」
「あれ? アレグラとテッペキンの奴は来ないのか?」
「……嬢ちゃんならお寝んね中だよ。今は外は真昼間だしな。」
「あの子、あなたの事を心配してたんだから、ちゃんと謝るんだよー。」
「そうなんだな。それは悪いことをしちまったな。」
「……テッペキンの奴は買い出しに行っちまったんだよ。キャットシーの命令で酒と肴をな。」
「ふん。アイツには雑用くらいしかやらせることないからね。」
腕を組みながら、キャットシーは膨れ面で言い放つ。
「まぁ、酒はほどほどにな。」
「GUYコツ、今日は酒盛りだにゃ。あたいに付き合え。」
「おいおい。俺は病み上がりだぞ。スルメンも何か言ってやってくれ。」
「……約束破って、自分勝手な行動したお前が悪い。」
「そんな……」
「それじゃ、あたい達はアイツが酒買ってきたら、また来てやるにゃ。」
☆☆☆
Side:ライ雷オン
GUYコツがシラセを倒した。
この事実は、奴に対抗できる怪人は私しかいないという事になる。
猫の怪人にさらわれて行方不明になってしまったが、奴の潜む場所はまだカズノコシティのはずだ。
募集していたGUYコツの討伐作戦に参加希望者の結果が出てくるだろう。
「ライ雷オン様、GUYコツの討伐作戦への参加者がまとめ終わりました。」
「そうですか。それGUYコツ討伐作戦に何名の怪人が志望しましたか?」
「それが……数名です。」
「数名?」
「そりゃ、GUYコツの奴がシラセに勝ったって事は、もう雑魚を追う簡単な任務じゃなくて、危険な任務になりますからね……」
「はぁ……全く怪人も腑抜けてしまっているという指摘を博士から受けてしまうでしょうに。
まぁ、その数名で構いません。明日までに広間に集めてください。明日、作戦会議をやりますので。」
「あの……ライ雷オン様、お言葉ですが、もうGUYコツとかどうでもいいんじゃないですかね?」
「確かにGUYコツ自体はどうでもよいですが、ネオ怪人協会には必ず博士を取り戻さないといけません。
しかし、GUYコツがシラセを超えるならば、単に博士を返してもらうだけでは駄目です。GUYコツへの期待も信用も全てを壊してやらないと意味がない。
何、シラセに勝ったのが偶々だとわからせてやればいいんです。私が奴を叩き潰す。それでおしまいです。
今回、志願の在った怪人達で力を合わせて奴を討ちます。
そうしたら、また怪人協会は正しい形に戻ります。」
私は手を握りしめて、GUYコツを叩き潰すための作戦を組みたて始める。
奴の性質、行動原理を思い起こす。
今、どこに居るのかわからない以上、まずは奴をおびき出すための餌が必要だ。
私は、GUYコツにとって魔法少女タマキキャットがキーパーソンになっている事を思い出す。
最初に奴を見た時から、今回のシラセの件でも、GUYコツの近くに彼女がいた。
勿論、魔法少女タマキキャット自体も手ごわい相手ではあるが、今回正体が分かったのだ。
玉置梢。
まずはこの小娘からだな。




