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青の戦域    作者: 綿乃木なお
第四章 新戦争(ネクスト・ウォー)
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G-1・G-2・G-3vs大型機械兵器

 Gー2の二本の剣(ダブル・ソード)が横一線に白刃の光を放つ。頭部と胴体部分を切り離された五体の機械兵器は、二歩三歩、足を後ろに後退させてから戦域の大地にその大きな機体を横たえた。


「よぉし!残り二十五機!」


「二十三機だよぅ」


 ロラが走行兵器二体の両脚を(はがね)のリボンですぱりと切り刻みながら、ルシルが口にした数を訂正した。

 両足を失った走行兵器が大人しく地面に鎮座する。ロラはG-3の右脚のホルダーから拳銃を引き抜いて、その脳天を撃ち抜いて止めを刺した。 

 一列に並んで一斉射撃で弾幕を張っていた二足走行兵器が突然散開して、四方八方に逃げ出した。


「おいおい、どうした?まるでパニックでも起こしたみたいに逃げて行きやがる」


 自分達に背を向けて走る二足走行兵器に首を傾げながら、ルシルがロラに言った。


「どうでもいいから、あいつら早く片付けちゃおうよ。あたしらにはハンヌ様から仰せつかった大事な任務があるんだからさ」


「それもそうだ」


 逃走するだけになった二足走行兵器を、G-2とG-3は喜々として追尾した。


「おい、敵との距離をあまり詰めるな。慎重に行け」


「分かってますって!大丈夫っすよ」


 オーリクの心配をよそに、ルシルとロラは二足走行兵器を機関銃で掃射する為にスーツの走行速度を落とした。走行兵器が縦横に飛び跳ねながら機体を揺らして赤い大地を駆け回る。


「おっと。うまいこと逃げるようになったじゃないか。機械の頭も、ちっとは学習したってことか」

 

 スーツの攻撃を回避しようと脱兎の如く走り回る走行兵器の一体に、ルシルはヘルメットに装着されている照準器でロック・オンした。


 引き金を引こうとした瞬間、照準器の端に走行兵器とは全くタイプが異なる新しい敵機が姿を現した。ガグル社製生体スーツと変わらない大きさの人型ロボットだ。

 ガグル社スーツのように荘厳な銀色の光を放ち、連邦軍の生体スーツに似た西洋の甲冑を纏った堂々とした体躯の機械兵器が、G-2から百メートル先の小高い丘に立っていた。


「何だぁ?」


 ルシルが瞬時に照準を人型機械兵器に変えてトリガーを引く。

 敵の機体が恐ろしい速さで横に移動しながら、G-3に向かって機関銃を連射し始めた。

 驚いたG-2が敵機と同様に横にスライドして高速移動で敵に銃弾を回避した。

 だが。敵機はG-2の動きを的確に捉えていた。

 G-2の動きに合わせて銃身を調整する。敵機の銃から発射された弾丸は、ルシルが追い回していた走行兵器とは比べ物にならないほどの威力でG-2の肩を撃ち抜いた。


「ぐっ!」


 生体スーツから伝わる激痛で、ルシルの動きが一瞬鈍った。


「ルシル!!」


 ロラが叫んだ。

 G-2を援護しようと、現れた敵機に向かって機関銃を乱射した。 

 敵機が左腕を前方に突き出した。腕に巻き付いている蛇腹状の金属が瞬時に拡張して長方形の盾になり、ロラの放った銃弾を全て跳ね返した。それを見たオーリクが叫んだ。


「アメリカ軍の新型機械兵器だ。ルシル、ロラ、俺が援護する。後退して戦闘態勢を立て直せ!」


「了解です!」


 G-1が銀色の機械兵器に向かって銃撃を開始した。

 銀色がオーリクの攻撃を受けて銃口をG-1に向ける。その隙にG-2とG-3が銀色に機関銃を連射しながら後退を始めた。

 三方から攻撃を受けて、銀色は防御態勢しか取れなくなった。右手で機関銃を撃ちながらルシルがガトリング銃を、ロラがグレネードランチャーを、それぞれの左手で背中のホルダーから引き抜いて、銀色に向けた。


「アメリカの新兵器さんよ!これで、あんたをお釈迦にしてやるぜ!」 


 二人が同時にトリガーを引こうとした瞬間。

 ルシルは自分が肩に担いでいるガトリング銃の機関部に備え付けてある弾丸箱(アンモボックス)が真っ赤に焼けていることに気が付いた。


「あれっ?お、おいっ!ロラ、ヤバいぞ。俺から離れろ!」


「何だって?」


 ポカンとこっちを見たロラに、説明している暇はない。

 ルシルは力を込めてガトリング銃を前方に放り投げると、高速で後ろに飛び退き地面にスーツを伏せた。

 その行動が何を意味するのかロラが理解した瞬間、ガトリング銃の弾薬箱が爆発してバラバラに吹き飛んだ。

 無数の弾丸が四方八方に飛び散り、G-3に襲い掛かる。


「きゃあ」


 ロラが悲鳴を上げてグレネードランチャーから手を離した。

 飛んでくる弾丸から身を守ろうと、ロラはG-3の巨体を砂地に転がした。


「大丈夫か、ロラ!」 


 ルシルが側に寄ってG-3の状態を確認する。G-3の機体に暴発した弾で抉られた傷が数か所あったが、幸い深刻な損傷はない。


「この馬鹿!何やってんのよ!戦闘中に銃を暴発させるなんて!!」


 ロラはすぐに起き上がると、銀のロボットに向かって機関銃を撃ち放しながらルシルに怒鳴り声を上げた。


「おかしいな。戦闘前に整備兵に念入りに点検してもらってんだぜ。弾詰まりなんて起きる筈ないんだが」


 G-2は機関銃を乱射するG-3の足元に落ちているグレネードランチャーを手に取ると、すぐに攻撃体勢を取り直した。


「今度こそ、あの銀色に弾をぶち込んでやる」


 ルシルがグレネードランチャーのグリップトリガーにG-2の親指を置いたまさにその時、敵地の丘陵にゆっくりと大型の機械兵器が三体、新たに姿を現した。


「何だ?あいつら…」


 ルシルとロラは呆然として生体スーツの動きを止めた。

 銀色の機械兵器同様、金色、深緑、真紅に塗られた機体が奇妙な甲冑を纏っていた。

 それは、エンド・ウォー以前に栄えた国々の歴史ある武具を模したものだった。が、歴史の断絶した後の世界に生まれたルシルやロラが知る由もない。

 それでも、敵を威圧する物々しい装飾に加えて機械兵器の頭部が人の上半身になっているのが目に入れば、あまりの異様さにどんな屈強な兵士も肝を潰すだろう。

 巨大な機械兵器が、銀の横一列に並んで生体スーツに向かってゆっくりと銃を構えた。

 その中の一体が大きな銃を肩に乗せている。


「G-2、G-3!スコープを熱線感知に切り替えて、戦闘態勢を維持しろっ!!」 


 オーリクの怒声が、ルシルとロラの骨伝導イヤホンに響いた。

 上官の大声で我に返った二人は、すぐさま熱線センサースコープのスイッチをオンにする。

 切り替えたセンサーアイが異常な高温を捉えた。

 金色の機械兵器の肩の上にある超大型の銃口が白く輝いている。その光の意味を速攻で察知したルシルとロラが、機械兵器がトリガーを引くよりわずかに早いスピードで、生体スーツを瞬間的に移動させた。

 G-2とG-3が左右の方向に飛び退くと同時に、肉眼では見えない鋭い閃光が戦域の乾いた空気を切り裂いた。


「気を付けろ!あれは、レーザー銃だ!!」

  

 オーリクが大声で怒鳴った。


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