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高嶺の花 10

視点がごちゃごちゃになります。

すみません(。-人-。)


ちょっと長いです。





「タイト!」


闘技場で仰向けになったタイトに、観客席からレリィスアが叫んだ。貴賓席にいたはずなのに観客席の手すりまで来ている。

と、手すりを支点にふわりと飛び越えた。


ギョッとしたタイトだが、今は助けに行けない。しかしレリィスアは綺麗に着地をしこちらに走って来た。とても姫がする動きではない。

……お嬢め……なんつー事を覚えさせた……!


ドロードラングでは元気に過ごしていたレリィスアだが、ここまでお転婆な事をしているとは思ってなかった。タイトがレリィスアから離れ出した隙にそんな事を教えるのは一人しか思いつかない。


せっかくの綺麗な格好が台無しだ。

タイトがその姿をぼんやりと眺めていると、顔に水滴が落ちて来た。


「……何でそんな顔で泣いてんだよ……勝った甲斐がねぇなぁ」


地面に座りこんだらドレスも汚れるだろうよとぼんやり思う。

拭ってやりたいが、タイトの体はまだ動かない。


「だ、だって、怪我だらけじゃないの! 私、治せないのに! 何で降参しなかったの!?」


レリィスアの言葉にタイトが顔をしかめる。うるさい。


「しょうがねぇだろ。姫を貰おうってんだ、足は困るが腕の一本取られるくらいの覚悟はして来たんだよ。それと声デカイ」


レリィスアは慌てて口許を両手で隠す。その行為を変わらねぇなぁと少し笑った。身体中が痛い。


「……ひ……姫をもらうって……何の……話?」


レリィスアが真っ青な顔色で聞いてくる。ちょっと離れた間にそんなにも嫌われたかと思ったが、伝える事もせずに帰っては優勝した意味も無い。当主の意向など空の彼方だ。


「農夫が、姫を、嫁に貰うのに、この大会で優勝するしか手が無かったんだよ。しかも決勝が兄貴とか、殿堂入りした騎士が大会に出てくんじゃねぇよ。腕一本どころか命懸けだったわクソッタレ」


「だ、誰が……ど!どこの姫を嫁にもらうの!?」


更に青くなったレリィスアを見たタイトの目があからさまに呆れた半目になる。強調したつもりだったがレリィスアには通じなかったようだ。


「どこの国の姫……? だ……誰を……?」


怪我のせい以上の脱力感に襲われたが、やはり、はっきり言わないと伝わらないらしい。仰向けのままタイトは叫んだ。


「今現在成人しても売れ残ってる姫はお前だけだろうが! 他所の国の姫なんぞ俺は知らん! 俺はお前が欲しくてここに来た! うちは今が収穫期だ! 忙しいところを無理矢理出てきたから俺はもう帰る!」


レリィスアの目が丸くなる。よっこらせと言って上体を起こし、タイトはレリィスアの目をじっと見つめた。

こんなボロボロの格好でプロポーズをするとはマークを笑えない。

だがそれは、タイトの自業自得である。


「俺はお前が好きだ。結婚したい。だが俺は城勤めは無理だからお前が嫁に来るしかない。だから大会に出た。一緒に行くならすぐ準備しろ。準備に時間が掛かるなら農閑期に迎えに来る。選べ」


聞こえたのかどうかレリィスアは目を丸くしたまま微動だにしない。姫に向かって横柄すぎたかとちらりと思った頃、小さい声が聞こえた。


「え……それ……どちらを選んでも……私が……タイトの……お嫁さんに、なっちゃうよ……?」


「そうだ」


また無言で動きのなくなったレリィスアに、いよいよ本気で時期を見誤ったかとタイトが思った瞬間。


「今行く!」


レリィスアは傷だらけのタイトに思い切り抱きついて来た。


「いぃいっ!?って~~……お前本当に頭いいのかよ? 馬鹿だろ」


「だってタイト本当に置いていくもの!」


レリィスアの体が震えていた。今しか無いとでも言うようにタイトの背に回った手がぎゅっとタイトの服を掴む。

タイトの腕がレリィスアを包み、背中をトントンとあやす。


「迎えに来るって言っただろうよ。お前と引き換えに腕一本と思って来たが、お前が俺の骨を折るなら怒るぞ」


農夫の腕だ。義手義足が発達したとはいえ二本しかないものをレリィスアの為に一本覚悟したとタイトは言う。


馬鹿なのはこの男の方だ。でも、レリィスアはこの上なく喜んだ。


このふてぶてしく、ずっと想い続けた男が、レリィスアの為に、命の次に、いや命と共に大事な五体を欠かしてもいいと言ったのだ。


「嬉しい……」


涙が止まらなくても離れたくない。抱きしめてくれる腕を夢にまで見たのだ。


「嘘みたい……嬉しい……」


「そんなにか……やれやれだ。十年も飽きずによく待ってたもんだ。俺の何が良いんだかな? 趣味悪いな、リィスは」


きっとニヤニヤしているだろう口調を間近で聞けることを噛みしめていたらとんでもない単語が出た。その愛称にレリィスアはガバッと顔を上げると、顎を掠めたのかオワッと言った男を穴があくほどに見つめた。


「……私を、リィスって呼ぶの……?」


レリィスアの声が震えた。


「呼ぶさ。奥さんになるんだ。当たり前だろ?」


小さい頃、祖父と祖母がお互いだけの愛称で呼びあっていた。それを一度だけタイトに言った事がある。彼を意識するかどうかの頃だ。

皆はレシィって言うから、旦那様にはリィスって言われたいの。

その時は、ヘェ小さくても女って面倒くさいな、とレリィスアの夢も希望も打ち砕かれたのだ。


それを今、言うのか。


嬉しすぎる。


「……卑怯者。大好き」


「……どっちかにしろ」


「そろそろ表彰式をしたいのだが?」


声の方を見れば国王とその他がズラリと並んでいた。

場外にいたはずのシュナイルもボロボロの姿で表彰の為にそばにいた。

レリィスアは真っ赤になってあたふたとしたが、タイトはよっこらせと飄々と立ち上がる。

国王と視線を合わせる不遜な態度にレリィスアの方が緊張する。


「タイトよ、よくぞここまで戦った。優勝おめでとう」


式典の順序をすっ飛ばして国王が突然話し掛ける。だがその目はタイトを見つめたままだ。

タイトも見つめ返したまま頭も下げずに礼を返す。


「ありがとうございます」


国王を前にして膝もつかない男の姿に周りには緊張が走る。


「して、優勝目録だが、「レリィスア・アーライルを下さい」


国王の発言を遮ってタイトは言い切った。大臣たちが色めき立つ。いくらドロードラングでも無礼極まれり!と。


二人のいつの間にかの睨み合いが続く。

そして国王がニヤリとすると、タイトが息を吐いた。


「娘さんを俺の嫁にいただきます」


「ほう? 教師としてとは聞いていたがな?」


「優勝したのは俺なんで、嫁の方が優先です」


「我が儘だぞ?」


「俺には諦めきれなかった最上(さいじょう)の女です」


「ふっ!……そうか最上か!」


あっさりと、レリィスアの夢でしか見られなかった事が進められている。


「あ。俺んち狭いんで持参金は要りません。勿体ないので国政に使って下さい」


「ふむ、そういう事ならドロードラング領の税率を半年だけ割引にしてやるか」


ニヤリとした国王に、レリィスアは変に焦る。


「チッ割引かよ。懐の小せぇ親父だな、でっかく半額にしてくれよ」


タイトのふてぶてしい態度に、レリィスア以上に会場の緊張が高まる。それに反して国王はまたもニヤリとした。


「やかましいわ若造が。お前の領地が何処よりも恐ろしく稼いでおるだろうが。半年だけの割引でも財務から怒られるのは私だ。代わるなら一年まで交渉してやるぞ」


「あ~、そういうことなら半年でいいです。一人で怒られて下さい。じゃあ俺そろそろ倒れるんで帰ります」


それを叶えれば当主に喜ばれるだろうが、タイトにそこまで付き合うつもりはさらさら無いし、いよいよ視界もぐらぐらしだした。このままでは不味い。


「待て待て、優勝の証にこの盾を持って行け。名を彫ってしまったからな。領主への証拠になるだろう? ……では、()を頼んだぞ」


娘。

タイトは盾をしっかりと受け取ってから、真っ赤になっているレリィスアをしっかと抱き寄せた。

国王が苦笑した。


「幸せにします。あ、結婚式には呼びますんで農閑期まで待ってください。勝手に押し掛けても誰ももてなしませんから。亀様、終わったんでお願いします」


盾と真っ赤な顔で目を回しているレリィスアを抱いて、タイトは皆の前から消えた。




さてと国王が振り返ると、大臣から近衛まで、タイトの先程の暴言に倒れんばかりに真っ赤や真っ青になっている。

笑っているのは王妃、王子、側妃たちだけだった。


落ち着かない空気の中をものともせず、治癒回復されたシュナイルが他の二人と膝を着くのを待って、国王は四位までの褒賞を読み上げる。


「では、これにて大会を終了する!」


最後には国王が自ら閉会宣言をするという、大会が始まって以来の歴史に残るぐだぐだな閉会式であった。












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