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一夜の忖度(そんたく)

長いタイトルに変更しました。まぁ、読めば判るんだが、読んで貰う為に判りやすくしました。……隣近所に喧嘩売ってみたりしてますが。



 「そー言えばぁ、ハジメって、レベルアップしないの?」


モルフィスさんは何杯目か判らないがビールから金色の蜂蜜酒ソーダ割りに切り替えて飲み続け、そう訊ねてみた。


「はい?……あ、俺カンストっぽいんで成長しないみたいです」


ビール続行中のハジメはぐび、と飲みながらそう答える。


「そーみたいね……うん、確かに1/1、ってなってるよ。……レベル1でカンストか……いいんだか悪いんだか……ま、私、軽く12は上がったけどね!!」


確認を終えてクァイナはそう言うと、ビールを空けながら……うん、少し酔ったかも……と呟く。


ハジメはそんな二人に囲まれて、昼は既に過ぎてすっかり陽も暮れて、今夜の寝床を決める頃合いになっていたことに気づき、


「クァイナさん、今日はそろそろ宿に帰って……あっ、そうだった……荷物を取りに行かないと……でもまぁ、大したものは無かったっけ……」


「ハジメはいいかもしれないけれど、私は……色々とお気に入りのアレやコレやら何やらが有るから絶対に……あああっ!!」


二人は当然ながら違う宿に滞在していたのだけれども……クァイナは突然叫ぶと椅子の上で、くたり……と脱力してしまう。



「……宿代……明日にならないと手に入らないよ……」


悲しそうに俯きつつ話すクァイナ、それを聞いて確かに……と思い起こすハジメ。そしてそんな二人をほっこりとした表情で見ながら、変わらぬペースで飲み続けるモルフィス。


「ウチに二人とも泊まれば?好きなだけ!」


ゆぅらゆぅら……と、触角を揺らめかせながらニコニコと微笑むモルフィスの背後に、後光が射して眩しい位……その位に、今の二人には神々しく彼女が見えた……後にそう語るハジメとクァイナであった。



✳✳✳✳✳✳✳✳✳✳✳✳



「せっかくの門出を祝う席がつけ払いだとか、宴の御開きが宿無し野宿とかじゃ寒々しくて酔いが覚めちゃうでしょ?」


いつの間にか皿に盛り付けたピクルスをつまみ上げ、パリパリ噛み締めながら蜂蜜酒に口をつけ、ほぅ……♪と熱い息を吐きつつ、


()()()()()()()()()()()()()()()()()なんだから、門出を祝うのはワタシら人生の先輩の役目と相場が決まってるでしょ!?うんうん、絶対にそーでしょ!」


あっさりとしたピクルスを摘まみつつ、あっさりと気前よく、でも後半はあっさりと聞き流せない気になることをやっぱりあっさり言いのけるモルフィス。


「人生の先輩の役目って……あの、失礼ですが店長さんって……幾つなんですか?」


恐る恐る訊ねるハジメに(バカ!怒ったらどーすんのよ!?)と小声で叫ぶクァイナだったが、


「ワタシ、幾つに見っえるかなぁ~?ぷふふぅ~♪……あ、ちなみにワタシの世界じゃ年齢を数える習慣自体無いから概算でいーよね?」


ニヤニヤ笑いに切り替えたモルフィスは、二人の(……まさかのロリババァ?)と言いたげな顔色を見つつ、まず一口ずび、と蜂蜜酒を飲んでから、


「まず単身渡航したのが三十二年前、んで、親戚のおねーちゃんの結婚式に出たのが二年前で、ここに店を構えたのが一年前!!……て、とこかな?」


「あ……だとしたら……いやぁ~とても三十代前半には見えませんね!!いつ見てもキレイで若々しい!!」


何となく空気を読んで持ち上げてみるハジメと裏腹に、(……で、故郷での時間経過がスルーされてるのは何故?)と怪しむクァイナ。


「そう?キレイで若々しい!?そっかー、やっぱそう見えちゃうかぁ~♪じゃ、今夜は一緒に寝るか!ハジメ!!」


うんうん、と力強く頷きながら腕組みしつつ満更でもない表情のモルフィスだったが、酔っているのかいないのか、やっぱりあっさりと聞き流せない発言を平気で言ってのけてしまう。……家主だからか?それとも天然だからか?……と、そう思う二人ではあったが、


「だってウチの二階、寝床はダブルベッド二つしかないも~ん♪」


……え?マジ?とモルフィスの発言に戸惑う二人。


クァイナは(……どちらにしてもハジメは同衾じゃん!……いや、ハジメだけ一つのベッドで寝るってことも有りよね?)と安心したけれど、


ハジメは(ダダダダダダダダダドダブルベッドでででっ!?)……軽く心中にてバグってた。


そして言い出しっぺのモルフィスはと言えば、妙にしっとりとした色に複眼の下の単眼を濡らして(元々がそうだが)ハジメにしなだれつつ、訴えるような……甘えるような言葉使いで……、


「なぁハジメ……()()()()()()()()()()()()()()()()()……やっぱりヤダとか言うのは……失礼じゃないか?」


エプロンを外したタンクトビキニ姿で寄りかかっていたモルフィスからは、強烈且つ効果的フェロモン因子が眼に見えるんじゃないか!?っと言う位に発散されているのは一目瞭然で……ハジメのヒットポイントはほぼゼロだった。


「ハジメ!あんたまさか……床で寝るとか言うつもりじゃないでしょうね!?一応はパーティのリーダーでしょ!!……んなこと言ったら私もいっしょに床で寝るからそのつもりでね!?」


……そこに追い討ちをかけるクァイナの発言で、ハジメは倒れそうになった。……だが三人で……だと!?


苦し紛れに閃いたハジメは思わず叫びこう言った。



「さ、三人でいっしょとかはどーでしょーか!?」



ほんの出来心で計算づくです済みませんでも反省はしてません。

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