ハジメの始め。
むかしむかしのそのむかし、地獄と天国がありました。
……ずーっと時間が経った今、暫しの裁量で二つに分けることが困難となり、執行猶予的空間に押し込めることを閃く神がおりました。
【……んでさ、どんな奴を対象にするの?】
同じ領域を司る神が尋ねますと、暫く考えた閃き元の神はこう答えました。
【同じことを考えてる連中をまとめて入れてみよう!ほら、蟲毒とか言うじゃね?いい具合に化学反応起こしたりして面白そうじゃん?】
【うわぁ~それは……ある意味興味深いよねぇ……】
ニ柱の神がヒソヒソと話してますと、三柱目の神がやって来て詳細を聞き、
【はぁ、なるほどねぇ……じゃ、さっそくあの連中が対象になるかな?】
指差す方には、様々な理由を持ちながら、一つの願望を持った魂の集合体がゴチャゴチャ蠢いてます。ま、かなりきしょい感じです。
【あいつらね……何か、転生だか転移だかを願ってポシャった連中だったよね?……普通に頑張れなくて、何を担保にすればそんなラッキーな生まれ変わりが実現出来るとか思えるのかしら……ホント、虫がよすぎるわよ……】
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【……って、始まったのよ?こーゆー面談形式の対話型転移って!……ん、ちょっと待っててね?……は~い!はいはい…………えっ!?本当なの……?……参ったわぁ……】
……そんな話を聞きながら、俺はその傍らで三柱目の神さんと面談途中……なんですよ、えぇ。
一応その部屋には、ウネクネしてる集合体を入れた水槽(ガラス張りのあんな奴ですよ?)が端っこに有ったり、応接間みたいな机とソファが置いてあったり……あ、このお菓子食べていいの?いいの?
……うわっ、これマカロンじゃん!?さっくさくで軽くてしかもふっわふわだし!うまっ!!
【……ゴメンねぇ、ちょっと取り込んでて……どうしたの?】
「いぇ、このマカロンが美味しくて……すいません……」
俺は慌てて目線をマカロンに戻した。
……え?何でかって!?
……だって、目の前の神さん、マイクロビキニですよッ!?マシュマロみたいなやわふわ感全開の辺りにキュッ、と張り付く三角形と、キュッとした腰回りのお臍の真下でキュ~ッ、と二等辺三角形な鋭角がズドン!!ですよ!?それ以外着てないんですよッ!?見ますよ!!えぇ見ちゃいますよ悪いですか!?……えぇ、そうですよねぇ……。すいません。
【あら~♪それ気に入ってくれたの?よかったわぁ~!妹分の神にそれが大好きなのが居てねぇ~、「私はそれ無しでは過酷な神業務を遂行出来ません!」とか言って製造元を困らせてるのよ~!彼、お菓子屋さんじゃないのに、わざわざ世話になってるからって時々届けにきて、「皆さんも召し上がってください!」って置いてくのよ~♪】
「……あ、そうなんですか!いや、良いと思いますよ?美味しいですから……」
そこまで話した後、急にモジモジし始めた神さんは、俺に向かって申し訳なさそうに手を合わせながら……、
【それはそうと……、ホント……ゴメンねぇ……ついさっきのヒトで、在庫が品切れになったのよ……発注忘れちゃってて……棚卸しが近くてついつい節約しなきゃ!……なんて、ねぇ……】
そう言いつつ顔の前で指先を合わせながら、ゴメンね……!と繰り返す神さん。
頭には白い透けた絹みたいなのを被っていて、神様らしいけれど……合わせた腕でマイクロトップが隠れてます。だから一見すると上半身は裸にしか見えません。おかしいです。変です。変態です神なのに……。
【……だから、ここはひとつ、代わりにハジメ君の願い、一個だけ叶えるから……許してもらえない……かしら?】
その変態じゃない神さん、俺の真横に座り、脇からグイッ、と身を寄せてきて柔らかく自然なボディタッチをしてきて……うわぁ……フワッと神さんの髪の毛から頭がクラクラする位のあまぁ~い匂いが……流石は神スペック……り、理性が保てないぃ……
「じじじじじじじじゃあせせせせ先導的なななななななななポポポジション的ににににににににぃ」
【あら?ハジメ君たらいきなりバグっちゃった?ヤワねぇ……ま、いっか?】
はわわわわわわわわわわぁ~、とかクラッシュしてる場合じゃないぞ。見ればポチポチと虚空をタップしながら神さん、何かをクリックしたみたいです。
【ふむふむ……つまり、先頭に立って導く、ねぇ……うん?あ、違った。それじゃ……意味の同じフュギィアヘッド……かな?】
……ん?何だか微妙にニュアンスが違うぞ?……俺はマスコット的なポジションのリーダーになりながら控え目なヤマトナデシコ風な女の子とかとしっぽりと穏やかな生活がしたいんだけど……でも、声に出して言わなくてもいいからね?ウフフ……私は神なのよ?とか言われたりで……ズルいよ、そーゆー言い方は……。
【あ、これかな?うんうん、ヤマトタケルノミコト的な雰囲気の……うっわ!!金色かぁ……ん?どうせなら強そうな奴を……って、あっ!!きゃはははははははは!!もうコレコレ!この一択しかないじゃん♪あ、そーれポチッとドーン♪】
《ピンポンパンポーン♪……お知らせ致しま~す!イチ・ハジメのアクティブスキルに「超時空戦艦」がインストールされました!》
「アクティブスキル……超時空……戦艦?」
【ん~?パッシブスキルって知らないの?受動的、って意味で条件を満たすと発揮される技能よ!】
「そこじゃないですよ?超時空戦艦って物の名前ですよね?技能って技術や経験で身に付くことだから、そこは物の固有名詞が当てはまる場所じゃないですよ?」
【……つまり、あなたは今日今この瞬間から、超時空戦艦のフィギュアヘッドとして頑張って♪】
「あ~、僕の仕事はマスコット~!ビルのアソコに貼り付~くマークぅ~♪……的な?」
【そう!……あ、ちなみに他にもう一つのアクティブスキルと特典技能もおまけしちゃうから張り切ってイってらっしゃいなぁ~♪……それとスキルの変更申請は、レベルアップ時に行えるから心配しないでね!】
……そう言われつつ俺は、マイクロビキニ神に見送られながら……残りのニ柱の神に、水槽の縁に立て、と促されたので……水槽の横に近付き、スロープのついた台に上がり……後ろを振り向いて言ってやったさ!!
「…………押すなよ?」
はいドーン!いやードボーン!きゃはははははははは!!ばしゃばしゃビチビチしてるぅ~♪
……溜めも侘び寂もない一撃(感触としては生足で背中を蹴られたようだ)で、俺は爆笑する三柱の神に送り出されました……。
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「……で、ハジメの前に能力を貰ったヒトって、どんな能力を得たの?」
丁度良い高さの岩棚にチョコンと腰掛けて、すらりと伸びた足をブラブラとさせながら、クァイナはハジメに訊ねる。
二人の目の前では、ハジメがぐっちょぐちょのケチョンケチョンにしてしまった正体不明の生物(未確認の怪物らしい)の残骸を、全身黒ずくめの人達(話し掛けても《イーッ!》としか言わない)が手分けして回収し、街中の処理施設へと運ぶ準備をしていた。
「んーと、確か……《三島由紀夫位の細マッチョでもベンチプレス二百キロを軽々と持ち上げられるベストガイで居られる》能力……だったかな?」
「……あ、そぅ……。まぁ、人それぞれだからねぇ……」
予想を遥かに下回る願望にクラッとしながら、クァイナはところでさ、と話題を切り替えて、
「ハジメはどーしてパーティ募集のチラシにあんなこと書いたの?」
と、ストレートに聞いてみる。もう遠慮なんてする間柄なんかじゃない、一蓮托生なんだから当然だろう。
「あれ?あー、実は……あの店長の入れ知恵だったんだよ……」
「……い、入れ知恵ぇ~ッ!?」
意外な答えにやや驚嘆気味のクァイナ、その反応の強さに一瞬気後れしたものの、ハジメはしかし、正直に答える。……一蓮托生なんだから当然だろう。
「《くえばわかる亭》で食事して、手持ちがあんまりない、パーティ編成の仲間が見つからないって愚痴ったら、店長さんが【ここの常連に似たような娘が居るから言う通りにチラシを書いてココに貼れ】って……」
オーマイッ……、と有りがちな感嘆句を発しながら、けれど何処か晴々とした表情で、
「もう……モルフィスったら……お節介焼きなんだからぁ……でも、確かにそうね……実は私も、なかなかパーティが組めなくて、あそこに入り浸りでずーっと過ごしてたのよ……」
どこか遠くを見つめながら、クァイナは静かに語り出した。彼女の声は決して大きくはなかったが、その穏やかな表情と静かな声で語る話は、ハジメの心に染み込むように伝わってくる。
「……少しだけ昔ね、あるところに【ねっとあいどる】を気取った女の子が居たのよ……彼女は画面の中では高飛車で大胆で……時にはン万単位のお捻りを画面越しに貰ったり、時には《指定する場所まで来たらベンツとマンションを買ってやる》とか言われたり……まぁ、調子に乗ってたのかもね……」
指先で栗毛色の髪の毛を玩びつつ、クァイナの独白は続く。それをハジメは彼女の横に座り、時折頷きながら聞いている。
「……でもね?……流行り廃りの早さなんてあっと言う間よね……気がつけばマンションは解約されて、運転手付きのベンツもさよ~ならぁ~♪……フフフッ……ほんと、あっと言う間だったわ……で、その女の子はどーしたと思う?」
予想のつかないハジメは、首を横に振りながらクァイナの眼を見つめて、《判りません!はよ続きなう!》と念話で語り掛けたが、無論クァイナに伝わってはいない。そりゃそーだ。
「……思い詰めて、《元ねっとあいどるがクソゲーやってゲームオーバーになったら自殺する!》って動画投稿をしたのよ。……それなりに注目されたら復帰出来るかな?って思ってね……」
無言のハジメだったが、その先の内容は彼にも予想が出来ていた。何せ「ゲーム絡みで命を落とした人間」が集められて……この世界へとやって来た筈だったから。
「で、……ほんっとクッソゲーだったわ!!もー、無茶苦茶にクソゲー!!呆れて指先が硬直しちゃったもん!……で、まぁ……その後はご覧の通り、見事に生まれ変わりました!っとさ……ご静聴ありがとうございましたっ!!」
道化を演じたつもりか、深々とお辞儀をするクァイナだったが、ハジメは最後まで真面目に聞き、顔を上げたクァイナを真っ直ぐに見ながら、
「……色々なことがあって、ここに集めらたれんだよね……俺達。……でも、《宇宙チーレムフリゲート!提督ぅ~私と艦隊どっちが大切なんですか!?》は、何日間も徹夜して初めて作った商業化作品だったんだよね……」
「……お前が作ったんかぁ~いッ!!コラはじめ、おいコラはじめ。何だよ何なんだよあれはッ!?」
さっきまでの穏やかな雰囲気は鳴りを潜め、クァイナの身体は怒りに満ち溢れていたが……、
「……ん?あれ?……あっ!!私の……私のレベル……ガン上がりなんですけどッ!?」
今更ながら気付いたクァイナだったが、ハジメにしてみれば戦い終わった直後から「パーティメンバーのレベルアップ時のファンファーレ」がしつこい位に鳴り響いて五月蝿かったのだが、何となく言う機会を失っていた為に伝えられなかった……。
「よかったじゃん!……まぁ、もしかしたらこーなるかもしれないってムギュッ!?」
それなりにクールな印象をイメージして、斜に構えた態度のハジメだったのだけど、涙目になりながら無言で抱き付くクァイナの豹変振りとやわらか肌触りそしてふわぁっと香る豊かなフレーバーby蜂さん印の香油……うん、悪くないいいや、すっごく悪くないッ!!
「あじがどぉ~っ!はじめぇ~っ!!わだじ……もうずっど……レブェルアッブじながっだがらぁ……諦めでだがらぁ~っ!!」
「あ、そ、そうですか。そ、れは、よっ、かたねぇ」
ズリズリと顔を振りながら、感情を爆発させるクァイナのふにゃふにゅやわにゃこな各所を脳内セーブ&ロックしながら、ハジメは頭をヨシヨシしつつ、
(……それにしても、《イーッ!》としか言わない人達って、いつの間にやって来たんだろう……呼んでもいやしないのに……)
と、全く関係のないことを考えつつ、ハジメはクァイナを促して町へと戻って行くのでした。




