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精霊王の旅路  作者: つる
第一章 のんきな記憶喪失者
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冒険者ギルド

 ~ようこそ、イルノブルへ~


 二人の頭上には町の入り口の看板が掲げられていた。

 イルノブルの町はジャード王国の東端に位置しており、人口は多くない。それでも多数の人々に出会えたことに変わりはなく、アルフィンは自分のことを知っている人物への期待を膨らませ、通りを行く人々を見つめる。


「人がいっぱい……」


 町の入り口から伸びる通りは商店が軒を連ね、少し先には冒険者ギルドの看板が掲げられている大きめの建物が建っている。この通りは町のメインストリートのようで人々で賑わっていた。

 瑞々しい野菜を棚に並べ「安いよー!」と声をかけている男性、小さな子供と手を繋ぎ楽しそうに歩いている女性、その横を元気よく走っていく子供達、腰に剣を下げた冒険者らしき屈強な男性と様々な人が通りを行き交っている。


「見覚えがある建物とか、懐かしく感じるものとかはある?」


「ない、かな……」


「そっか……、とりあえず冒険者ギルドにいきましょ。ギルドなら人探しのクエストや情報も集まっているはずだし、何か分かるかもしれないわ」


 見覚えがないということに少し肩を落としたアルフィンだが、冒険者ギルドに向かうべく歩き始める。

 数分で到着した冒険者ギルドの建物は二階建てで、入口はアーチ型の両扉になっている。ルーシアは慣れた手つきで扉を内へ押すと、冒険者ギルドの中へ入り、アルフィンも続いて冒険者ギルドへと足を踏み入れる。


「それじゃ先にクエストの報告してくるからちょっと待っててね」


 そう言ってルーシアはギルド職員のいる奥のカウンターへ歩いていった。

 アルフィンは入口側に何個か置かれている丸テーブルの方へ向かうと、そのうちの一つに腰を下ろす。まだクエストに行っている者が多いのか、人影は疎らだ。


「これが冒険者ギルド……」


 アルフィンはそう呟くと、冒険者ギルドを見渡す。

 入口正面には横長のカウンターが一つあり、ギルド職員らしい同じ服を着た人が等間隔で座っている。今は人が少ないからか少しのんびりした雰囲気がしており、そのうちの一人とルーシアは話をしていた。

 カウンター横の壁には『クエストボード』と掲げられた大きい板に何枚か紙が貼られており、冒険者らしき男性が貼り付けられた紙を剥がしてカウンターに持っていく姿が見えた。


「あれにクエストの内容が書いてあるのかな……」


 アルフィンは立ち上がりクエストボードの前まで行くと、張り付けてある紙を眺める。薬草採取、魔物退治、さらに逃げ出したペットの捜索という内容のものまであり、ルーシアが何でも屋と言っていたことに納得する。自分を探しているようなクエストは無いかと探してみるが、残念ながらそれらしきクエストは見つからなかった。


「アルフィーン! こっち来てー!」


 声の方へ振り向くと、クエストの報告が終わったらしく「こっちこっち」とルーシアが手招きをしていた。


「この人は冒険者ギルド職員のアイリさん。クエストの報告が終わったからアルフィンの話をしようと思って」


「アイリ・ホーエンです。冒険者ギルドの職員をしております。以後お見知りおきを」


 アイリと名乗った女性は黒髪を肩口で切りそろえ、涼しげな目元に眼鏡をかけていることも合わさってか真面目そうな印象を受ける。


「僕はアルフィン。記憶を失くしてしまって本当の名前は分からないけど……ルーシアが名付けてくれた……」


「美人な子を拾いましたね」


「子犬拾ったみたいな言い方しないでよ……」


「ふふっ、冗談ですよ! ……さてアルフィンさん、大体の経緯は先ほどルーシアさんからお聞きしています」


 アイリは見た目とは裏腹に冗談が好きらしく、ルーシアと軽口を言い合っていた。だがすぐに真面目な表情に戻ると、眼鏡をくいっと上げてアルフィンを見つめる。そして手元に置いていた二十センチ程の金属のようなプレートに「接続」と呟く。するとルーシアのギルドカードのように不思議な模様が一瞬浮かぶと空中に数個の画面が浮かぶ。


「しかし……アルフィンさんは恐らくこの町の住人ではないですね。髪の色もこの地域では珍しい金髪ですし。見かけていれば間違いなく目につくと思います。私もこの町に滞在して三か月になりますが、お見かけしたことはありません。……人探しの情報も、合致するものはありませんね。お役に立てず申し訳ありません。ただ目を覚まされた時の状況がかなり特殊ですし、もしかしたら何らかの事件に巻き込まれていた可能性もあります。一時的ですが、ギルドの方で身柄を保護することもできますが、いかがしますか?」


 浮かんだ画面を次々と操作しながら情報を確認し終わると、アイリは申し訳なさそうにアルフィンに告げる。


「そう……どうしようかな……」


 今後についてアルフィンが悩み始めた時、しばらく黙っていたルーシアが声をかけた。


「……ねぇ、アルフィン」


 ルーシアは真剣な眼差しでアルフィン見ると、意を決したように口を開く。


「一緒に冒険者にならない?」

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