プロローグ 過ちは感情と
初投稿です。不定期更新ですがよろしくお願いします。
君に会うまでの僕は、ただそこに在るだけのモノだった。
何かをするという事もなく、話す事もない。
考える事もなければ、動くこともない。
永遠とも言える寿命を、ただ無為に過ごすだけの存在。
それが僕。 いや、僕たち。
「ここは綺麗だね」
――世界に音があることを知った。
「これはね、花輪って言うんだよ」
――世界に色があることを知った。
「ねぇ、君の名前は何?」
――世界に匂いがあることを知った。
「君の好きなものは?」
――世界に言葉があることを知った。
自分以外の存在に会ったことは何度かあった。
だけど力が欲しいだけ。
僕ではなく、僕の力が。
それが当たり前で、普通の事。
君だけが違った。
「初めて笑った」
――世界に感情があることを知った。
「ふふふ、おいしいでしょ」
――世界に喜びがあることを知った。
君に会って僕は、僕が生きていることを知った。
何千、何万の日々を過ごしたはずなのに。
嬉しかった、楽しかった。
君が訪れる日を、指折り数えた。
……だけど、始まりがあれば終わりがある事を知った。
「あなたは悪くない」
――世界に戸惑いがあることを知った。
「ごめんなさい」
――世界に苦しみがあることを知った。
「独りにして、ごめん……なさい」
――世界に悲しみがあることを知った。
僕には力があった。
望みを叶える為の力。
請われれば与える為の力。
だから僕は、僕の願いを叶える為に力を使った。
――それが禁忌の願いであっても。