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世界の滅亡

「どうしてこうなった……」

 俺は、ただただ真っ暗な闇だけが広がる空間に立っていた。

 そこには一切の生物が存在せず、かすかな光さえも無かった。

「周辺探知」

 探知スキルを使って辺りを探索するも、生あるものの存在は何も見つからない。本当に何もない。虫一匹さえも見つからない。

「魔王を……」

 俺以外に音を発するものは何もなかった。ただ俺の呟きだけが聞こえるだけだ。

「魔王を倒したっていうのに、どうしてこんなことになるんだ!?」

 俺はこの剣と魔法の世界に生まれ変わりやってきた。

 そう、転生というやつだ。

 そのさい神様から欲しい力を聞かれた。

 俺はダメもとふざけ半分に、最強の能力値とスキルを要求した。

 そうしたら簡単に全てをくれたのだ。

 攻撃力や体力はもちろんのこと、かしこさやすばやさなど全てのステータスの能力値がMAXなうえ、特殊能力のスキルも全て持っているという状態で転生したのである。

 まさに『強くてニューゲーム』ならぬ『最強でニューゲーム』状態。

 そう転生後の俺は、まさに最強だった。

「なのに、どうしてこうなった?」

 転生した世界では1000年前に魔王が封印されていた。

 しかし、その魔王の封印がそろそろ解けるという噂が世界に暗い影を落としだしていたのだ。

 俺はすぐに魔王の眠る場所を探索スキルによって割り出した。最強ステータスを持つ俺からすれば、魔王を探し出すことなど簡単だった。

 そして、その場所へ真っすぐと進み、約10日で封印の解けかけた魔王を葬ることに成功したのだ。

「そう、確かに魔王を葬ったはず」

 しかしその瞬間、魔王の断末魔とともに闇が世界に広がったのだ。

 その闇はあらゆる全てのものを飲み込み、そして闇と自分だけしかいない、この今の空間が出来上がった。

「どうしてこうなった……」

 もうこのセリフを何万回つぶやいただろうか。

 ただ闇だけが広がるこの空間に、いったいどれだけ立ち尽くしているのだろうか?

 数日、数か月……いや、もう何年も経っているのかもしれない。

「ちょっとは反省したかい?」

 急に声をかけられた。

 いや、幻聴か?

「幻聴じゃないよ」

 いや、幻聴じゃないよという幻聴なのか?

「もう、しょうがないなぁ」

 突然、目の前に光があふれ出し世界が真っ白に変わった。

 まぶしくて目を細める俺の前に、ひとりの少年が立っている。

 白いシャツに白いズボンという真っ白ないで立ちの美少年である。

 この少年には見覚えがあった。

「神様……」

 そう彼こそが俺をこの世界に転生させた張本人だ。

「いったい何がどうなってんですか?」

「いきなり魔王倒したら、そりゃ世界が崩壊しちゃうでしょ」

「魔王は倒すべきでしょ!?」

「物事はさぁ、プロセスも大事だと思わない?」

「過程の問題ですか?」

「過程もそうだし、バランスとかさぁ……世界ってそういうもんでしょ?」

「いきなり魔王倒せるほどの力を授けたのは、あんたじゃないか!」

「それを望んだのは君でしょう?」

 その言葉とともに神様が俺の鼻先に、人差し指を突きつける。

 それを言われると返す言葉がない。

「簡単にいうと君の出現で世界のバランスが崩れてしまったんだね。さらにその力を躊躇なく最大限に使ってしまった。そして封印されるべき闇が世界に暴走してしまったというわけ」

「そ、そんなぁ……」

 つまり俺が調子に乗って魔王を瞬殺したから世界が滅んだというわけか?

 でもどうせ世界を救うなら早いほうがいいじゃないか。いや、それがバランス、世界の秩序を乱すということなのか……。

「僕も責任は感じているんだよ」

 思わず黙り込んでいると神様は優しく語りかけてきた。

「世界最強の力を手にした人間がどういうことになるのか、つい見たくなっちゃってね」

「ほんと調子にのってました、すいません」

「そりゃあんな力を手にしたら調子にものるよね。人間だもの」

「ほんと反省してます」

「じゃあ、その反省を踏まえて、また君には転生してもらおうかな」

「もうミジンコにでも、なんにでもしてやってください」

「そんな意地悪はしないよぉ。また同条件でやり直してもらうだけ」

「え?まったく同じ転生ですか?」

「そうそう」

「ま、待ってください!こんな過ぎたる力、扱いきれませんて!せめてもう少し弱くしてください!」

「ダメダメ。それじゃあ罰にならないでしょ」

「罰って」

「きみ、世界滅ぼしてんだよ」

 それを言われると、また返す言葉もない。

「さぁ転生させるよ。次は上手くやってね」

「そんなぁ……」

「じゃあ頑張って」

 そう言うと、目の前にある神様の笑顔が真っ白に輝きだし消えていった。

 いま俺の2度目の転生が始まろうとしていた。

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