輝く新星たち3
俺は今だ目星を付けたアイドル生がいないから、この暑い空の下を歩き回っている。
あと、残り一週間で視察活動(アイドルはアピール活動)が終わるのに。
もし、選べなかったり、ドラフトで契約出来なかった場合、残ったアイドル生はプロデュース科の生徒の中から、獲得したアイドル生が少ない順に交渉する権利が与えられる。
それでも、契約できなかったら、普通科に強制的に回される。
だから、俺は三日続けて自身が求めるアイドルの卵を探している。
アイドルのためなら俺は元気百倍だ! どやーーーーー。
奮起している所に前方から赤色制服の学生が見えてきた。
ライバル登場。
『聖桜歌学園』は男女ともネクタイ。ネクタイはピンク色。
同じ学科の生徒と通りすがると、互いに何も無い。
俺たちの勝負、軽く掌を見せない。
同じ卵を狙っている敵かもしれないのだ。
ここは戦場。
味方などいない。俺たちは孤独なソルジャー。
歩いているうちに、目的地の建物に着いた。
上に行く階段に地下に行く階段。
ここからでも聴こえてくる歌声、俺はゆっくりと階段を降りて行く。
徐々に歌声が鮮明に聴こえてくる。
扉を開けると、俺は立ちつくした。
唖然に近い驚きが俺を襲った。
人が数えるほどしかいない。ざっと数えて十人くらい。
さっき見た愛実は観客が数えても五十人ほどいたのに。
これが、ドラフト有力候補との差だと知った。
「こんな観客が少ないのに一生懸命に歌っているなんて。それに、笑顔が眩しい」
分る。彼女は全力で歌って踊っている。
『海崎絢音。あなたの心に火を付けちゃうぞ! 紅い声援を送る元気一杯な女の子』
あながち間違っていないかもしれない。
壁に寄りかかり絢音の歌声を耳を起てて聴き入る。
鼓動が速くなり絢音に鼓舞されている気分。
何だろう? 絢音の声が俺の意気を上げている。
例えるなら、暗闇の中から小さな火が付き、それが徐々に燃え盛るように。
俺の心がどーーーーーん! と言っている。
俺が育ててやる。彼女はきっと開花する。
いや、俺が開花させてやる!
決めた。彼女を取ろう。
たぶん、ドラフト有力候補には上がっていないから、交渉権は貰えるだろう。
けど、油断はしない。




