初顔合わせと初練習2
「これから、この三人で活動していく。仲良くするようにと言っても、すでに、息の合ったコンビプレーで、俺の心に鋭いシュートしたから大丈夫だな」
「大丈夫だよ。ねっ?」
「はい」
「大丈夫でやがるよ」
(綺麗な花だな。三人とも可愛いぜ)
三人の姿を見て見惚れてしまう。
いかん。いかん!
俺は三人をこれから導いて行かないといけない立場だ。
恋愛はオッケーにするが、俺以外に。
アイドルは恋愛御法度と禁忌があるが、俺はそう思わん。
恋愛することで自身の心を豊かに出来るし、人を思いやれる。
それは、アイドルとしても重要な事だ。
恋に耽るのはいけないけど。
「よし、これからの事を話すから、テキトーに座ってくれ」
俺の指示と共に三人は横に並んで座った。
「まずは、これから言っておくべきことは三点ある」
先ほどまでの眼とは違い、三人の双眸は真剣そのもの。
「まずは、センターだが……」
三人は俺の顔から視線を外さず、言葉を待っている。
「センターは絢音だ!」
これは、絢音を最初に見た時から決めていたこと。
「え? わ、私!」
絢音は自分に指を指し眼を大きく見開く。
「歌は詩乃と心美には劣るが、これから練習して行けば上手くなる。俺がセンターにする理由は、お前の歌声が人の気持ちを鼓舞し元気にする能力があると思っている。こう、胸の奥底から溢れ出してくるような」
「私、普通に歌っているだけだよ? 上手いなら、詩乃ちゃんや心美ちゃんが良いよ」
絢音は自分には無理と訴える様に二人を推薦する。
「普通に歌ってそれが出来ている事は、それが、絢音の持ち味であり天性の歌声だ。誰にでも備わっている訳ではない。ほんの何人かにしかない素質だ。センターは歌の上手い下手で決まるわけではない」
「本当に私?」
確認するようにもう一度、訊いて来るがその声色は元気な絢音らしからぬ、自信のない弱々しい声だった。
「ああ。これは俺が決めた事だ」
頷き彼女の双眸を見つめる。
いつもの明るい笑顔がどこにもなく不安な表情をしている。
絢音が自信なかろうと、俺は絢音がセンターにすることは変わらない。
「絢音。やるべきですよ」
「私と詩乃でいくらでもカバーするでやがるから、絢音は自信を持ってセンターで歌うでやがる」
二人は絢音の気持ちと表情を察して言葉で背中を押した。
今日が初めての対面なのに、二人には気配りと仲間を思う気持ちがある。
俺は本当に良いアイドルを見つけた。詩乃も心美も最高だぜ!
「わかった! 私やる。センターで歌う!」
決心した絢音の顔は凛々しく燃えていた。
彼女ならなれるだろう。
俺が憧れた太陽の輝きを放ったセンター高坂さんに。
「センターは絢音に決まりだな。二人がセンターに向いていないからセンターにしないわけではない。分かって欲しい」
「はい。分ってますよ」
「わかってるでやがる」
「だが、二人にもセンターをやらせることもある」
「わかりました」
「まかせてでやがる」
これで俺の一つ目が決まった。




