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初顔合わせと初練習

 今日はメンバーの初顔合わせの日。

 午前の授業が終り、午後からは自主活動。

 俺らプロデュース科はアイドル生たちとの活動となる。

 遅刻は厳禁。あの事件の数々から学び。

 一足先に集合場所である学校の屋上に俺は居る。

 あんぱんに牛乳と張り込み刑事の定番食が俺の今日の昼食。

 これが美味いんだよ。

(そろそろ来るかな?)

 腕時計を見て彼女たちの登場を待つ。

 ―ガチャ

 扉が開いた。

 さあ、最初は誰が来るか?

「凱斗? あなたがいるとは驚きです!」

 最初に来たのは詩乃。

「あの教訓を学んだのだ。遅刻は厳禁! えっへん」

「それは胸を張って言う事ではありません。当たり前の事ですよ」

 胸を張って言う俺に詩乃は厳しいコメント。

「厳しいな。詩乃」

「厳しくはありません。これが当たり前です」

「俺は褒められて伸びるタイプだよ」

「本当ですか?」

 怪訝するような眼で俺を見る詩乃。

「本当だよ。たぶん……」

 詩乃の眼に圧され自信無くなってきた。

「眼が泳いでいますよ」

「お、泳いでないぞ」

「はぁ~」

 溜め息を一つ、その後に詩乃は。

「きちんと時間を守って来て、よ、よく出来ました……」

 そっぽ向き頬を赤らめ褒めてくれた。

「詩乃が褒めてくれた!」

「今回だけです!」

 詩乃は恥じらいつつ言い放った。

 ここが、詩乃の可愛い所だと発見した。

「さて、次は誰が来るかな?」

「あと二人ですよね?」

「絢音と心美だ」

「どんな方々ですか?」

「絢音は元気で明るく。太陽みたいな子だな。心美は口調が独特で異色の輝きを放つ子だ」

「そういえば、心美さんはドラフト候補に挙がってましたね」

 記憶を辿って詩乃は心美の存在を思い出した。

「ああ。まさか契約を結べるとは思わなかったけどな」

「絢音さんは聞いたことないですね」

 それもそのはず、絢音はドラフト候補に挙がっていない。

 俺が見つけた原石。

 彼女は絶対に輝く素質が充分ある存在。

 運命的な出会いだったと思う。

 詩乃と心美もだけど。

「絢音は俺が見つけたからな。ドラフト候補関係なく、俺の心にどーーーーんと来たから獲得した」

「何か惹かれるものがあったのですね」

「絢音には天性の人を元気にさせる歌声があると信じている」

「そうですか」

「逆に詩乃には魅了する力がある」

「そ、そうですか?」

「あんなに観客が夢中になってたんだ。それは、詩乃の可愛さと甘い歌声があるからだ」

「お世辞として受け取っておきますよ」

俺が詩乃の魅力を言っているのが、本人は照れつつも真に受けてない。

 ―バタン

 ドアが開き現れたのは。

「すまないでやがる。遅くなったでやがる」

「心美」

「凱斗! 遅刻してないでやがるね。偉いでやがる」

「俺だってやるときはやるんだぞ。どや!」

「そう威張られても。それが当たり前でやがるよ」

 心美にも詩乃と同じことを言われた。

 二人とも厳しいぜ。

「心美も詩乃と同じことを言うのか。二人とも厳しいぞ」

「当たり前の事ですから」

「当たり前のことでやがるよ」

 二人とも息が合っている。

 ブルータス(心美)お前もか!

「二人は初対面だろ? 息が合いすぎるぞ」

「私は桜川詩乃と言います。よろしくお願いします。心美さん」

「心美で良いでやがるよ。私は真田心美。よろしくでやがるよ。詩乃」

 おーい、俺を無視しないでー。

「では、心美と呼びますね」

「お二人とも俺が紹介しようと思っていたのだが……」

「凱斗が遅いでやがるから」

「私たちで済ませた方が早いと思いまして」

 俺、この二人を纏め上げられるのか不安になってきた。

 味方は絢音だけかな?

 ―バン!

 二人の時よりも勢い良くドアが開かれた。

「お待たせー!」

 犯人は絢音だった。

 空に燦々と輝く太陽に、今、眼の前で輝く太陽。

 さすが絢音の笑顔は太陽だぜ。

 あの伝説のスクールアイドルの人と同じ素質を持つ。

 高坂さん。俺はあの人の笑顔をライブで見ていた。

 太陽そのものだった。

 彼女の輝きと歌声、そして、笑顔が観客を笑顔にして元気を与えていた。

 もっと言うなら、人の心を意気軒昂にしてステージを一つにしていた。

 お話したかったが、まだ中一の俺が話せることもなかった。

 遠い存在の人。

ただ、ステージで見て元気と勇気をもらっていただけ。

 今は違う、今度は俺が彼女たちをプロデュースして、観客を喜ばせてやる!

「ギリギリだぞ。絢音」

「だってー、購買のパンに並んでいたんだもん」

「これからは、早めに並ぶんだぞ」

「わかったよ~」

 軽い返事に反省していないような。

「凱斗も遅刻したから言えないでやがるよ」

「そうですね。女の子を待たせて遅刻しましたので、言えないかと思いますよ」

 絢音に援護するように二人は俺に言葉の弾丸を撃って来る。

「私、海崎絢音。よろしくね。え~っと?」

「桜川詩乃と言います」

「私は真田心美」

「よろしくね。詩乃ちゃん。心美ちゃん」

 あれ? 絢音、俺を助けてくれないの?

 普通に無視されて自己紹介?

 そうなの~~~~。

「三人とも俺を忘れてない?」

「忘れてないですよ?」

「忘れてないよ?」

「忘れてないでやがるよ?」

 三人とも何故に疑問形?

 忘れていたでしょ。

 俺は挫けないぞ!

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