輝く新星たち14
夜の帳が空を包み込み星屑が空に散りばめられている。
蒸し暑さが残り、昼ほどではないが暑い。
都会の喧騒は今だ健全で、若者やサラリーマンが行き交う。
俺もその群れに紛れて歩く。
片手には缶コーヒー。ブラック。
甘いコーヒーは飲めません。カフェオレとか。
残り少ないブラックを飲み干す。
ふと、携帯をポケットから取り出すと……。
しまったーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー。
詩乃からの着信履歴が十五件。
サイレントモードにして置いたまま気付かなかった。
やばい。完全に怒っているだろうな詩乃。
とにかく、静かな所で連絡しないと。
辺りを見渡し静かな場所を探す。
ビルは会社ビルで無理、店は飲食店で混んでいる。
とても、電話できる状況ではない。
ここはダメだ。
小走りで首と両眼をフルに動かし、電話できる店を探す。
喫茶店『ルーチェ』に入った。
ただ入り電話だけで済ませるのは申し訳ないので、アイスコーヒーを頼む。
席に着きすぐさま電話する。
『なぜ、出なかったんですか? あれほど電話したのに』
詩乃の怒気を帯びた声が聴こえた。
『すまない。アイドル探しをしていて携帯に気付かず』
『寂しかったです……』
『何か言ったか?』
『何でもないです』
小声で聴こえず訊き返したが、何もないと即答されてしまった。
ヤバい機嫌悪いかもしれない。
『本当にすまない。詩乃』
『もう、怒ってないですよ。先ほどのお話の報告を話します』
『分かった』
固唾を飲んで詩乃の次なる言葉を待つ。
電話に出なかったのが理由で契約おじゃんになったら泣けてくる。いや、泣きたいわ。
自業自得だけど。
『鷹月家、家訓、携帯電話の着信にはすぐ出ろ!』と戒めることを鷹月家の家訓にします。
このように運命を左右する時が起こり得る。
『凱斗とのためにこの身この夢を託します』
『それって……』
思わずまた聞き返す。
『凱斗と一緒にアイドル活動をします』
『よっしゃーーー』
大声を出してしまい、周りから驚きの眼が向けられた。
気まずい空気を自ら作ってしまい、苦笑いで軽く頭を下げる。
『耳が痛いです。いきなり、大声を出さないで下さい』
『ごめん。ごめん。嬉しくて、つい。これから、よろしくな』
『よろしくお願いしますね。凱斗』
何という嬉しいことだらけの今日。
二人も一気に獲得できた。
ドラフト有力候補の詩乃、異色の口癖アイドル心美。
俺のストーリーの色が揃った。
ここから、書き始めるぞ。サクセスストーリーを。




