輝く新星たち12
アイドルグッズ専門店『アイミル』。
聖桜歌学園の現役人気アイドル生、今、アイドルの第一線で活躍しているOGたちのグッズもある。
壁には写真集、オマケにサイン入り。
グッズを見て回りたいが今日はお預け。
上の階にあるライブ室で心美に会うため来たのだから。
店の中を通って上に行かないといけない。
何とも、生き地獄だ。
眼の前にアイドルグッズがあるのにじっくり見れないとは。
この造りにした設計者に異議申し立てをしたいくらいだ。
階段を上りライブ室に入る。
ドアを開けいざ中へ。
―俺の耳に少女の掛け声が流れ込んできた。
「みんな―、のっていやがりますかー? まだ、行く出やがりますよー」
(なんだ!? あの言葉遣いは! やがる? 変わった言葉使いだぞ! おいおいおい、反則だ。しかも、可愛く聞えるのはもうレッドカード。俺の鼓動も高鳴って来たぁぁー。どーーーーーんが来たぞ)
肩まである赤髪が激しく靡いて、躍動感が生まれている。
俺は心美の口調にハマってしまった。
絶対に彼女を取る。
心美は歌いだした。
甘い声に詩乃とは違う甘さ。すっきりとしている。
瑞々しくも甘い桃だと思う。
詩乃の歌声は甘いイチゴ。少し酸味という美しさというか綺麗さがある声。
絢音は甘味と酸味が面白い様に半分ずつある。
例えるなら万人に愛されるオレンジと言うべきかな。
歌はたしかに聴くものだが、ただ聴くのではない。
歌い手の歌声がどんな歌声をしているのか? も聴く事も大切だと思う。
プロデューサー科にいる俺を含め生徒たちはそれをすべきこと。
ただ、歌声が良いからではなく、そのアイドル生にしかない歌声の声質を感じるべき。
観客も『心美、こころがきれいなここみ。俺たちのこころのよりどころ。ここみ』と声を発してフィーバー中。
ジャンプは禁止されている。
ざっと、数えて三十人はいるだろう。
圏外でも人気の高さが伺える。
(さて、俺と同生はっと)
色とりどりの照明が光っているが部屋は暗がり。
当たり前のことだけど。
(俺を含め六人か)
何人来ようが俺は俺の熱いスピリッツを訴える!
それでダメなら諦める。
アイドルを第一に! それが俺のモットーの一つ。
心美の歌が終わった。
「最後まで聴いてくれてありがとうでやがるでーす。また、ライブするかもしれないでやがりますから、見に来て下さいでやがりまーす」
「はーーーーい」
観客一斉に返事した。
一糸乱れのない返事だった。
観客は出入り口一つしかない扉を目指して帰って行くが、きちんと並んで部屋を出て行く。
これは感心すべきことだ。
普通はこうはいかない。
我先にと足を速める。
観客数の多さもあるけど、このくらいの観客でも揉め事はある時はある。
俺は心美の所へ小走り。
他のライバルは接触した者や、そそくさと帰った者と分かれていた。
「真田心美」
声を掛けると振り向きキョトン顔。
「何でやがりますか?」
「俺はこうゆう者だ。君と話がしたい」
名刺を渡し心美は名刺の名と俺を交互に見た。
「分った出やがる。控室で待っててでやがる」
心美は一瞥して舞台袖へと入って行った。
「本当に変わった喋り方だな。歌ってるときは普通だったけど」
あれが無意識だったらすごい技を持ったアイドル。
武器より凶器に近い品物だと思う。
改めて心美の変わった喋り方を堪能し控室へと足を進めた。




