オニッシュ村
男は霧深い木々を縫うように歩いていた。霧の濃い森を抜けると、眩しい光が射した。だんだん視界が広がり、草原が見えた。東の空から太陽の光を浴び、南からの風を受ける。それにつられ綿胞子が舞い、青臭い葉の匂いが鼻をそそる。草原を少し歩くと、野花の咲く丘に出た。赤・青・黄色等咲かすチューリップやパンジーなど野花が辺り一面に咲き誇っていた。男はそんな野花の中を歩いていると、下の方に村があった。それを見た男は、村に向かって歩き出した。
オニッシュ村
村は賑わっていた。村の側面に川が流れ、その隣を道が通りそれを子供たちが駆け巡り、通りの市場では女性が商人と話しながら買い物をしている。村の中心には、鐘楼の付いた高い建物がある。この建物は役所やクエストなどの換金を行う組合などがある。時間やイベントになると上の鐘楼で鳴らして村人に知らせる。その下には郵便用の伝書鳩の小屋用のスペースがある。基本この世界のほとんどの通信はこの伝書鳩や馬車等による配送が8割、残りの2割は携帯やパソコンによる電子通信だが、この方法は機械的都市か組合のクエストによるランキングなどのデータ管理位にしかない。伝書鳩の下階は、郵便や世界情勢を語る新聞を管理する通信課がある。その下の階は村長の部屋があり、その下の階は、住民の管理や銀行がある住民課がある。そして基本的どの市町村でもあるクエストによる組合事務がある。この組合は、村人旅人や軍隊の駐留所となっていて、旅人たちが採ってきた物を組合が買い取りそれを商人に売って、商人が住民に売るというこれがこの世界の商品の流通だ。
「今日は鹿が獲れたぜ さぁ換金してくれ」
「わかりました。ジットさん えー今日はメスのシカですか では、料金は3500Gですね」
「 えーたったの3500 おかしいだろ、シカの相場は5000だろ。なぜだ」
「そうですね…シカの基本相場が5000なだけで、状態によっては値下げします。まずこの鹿は、そのまま体を運んできました。ということは、血抜きをされていないってなるのです。血抜きをされていない肉は質を悪くします。そのために値下げしました。次回からは血抜きをするか、生きたまま運ぶことをオススメします。またの訪問をお待ちしています」
「ありがとう。金が入ったし隣の宿屋でクエストを探しながら一杯でもやるか。」
宿屋でクエストを探して役場で獲物の換金をするのが主流になっている。宿屋に行けば酒場で、いろいろな旅人からの情報交換ができる、そして仲良くなった人とチームを組むなどするなどお互いにメリットがある場所である。
「ふー、疲れたし早く一杯やりて」
「 いらっしゃい、やぁジット今日はいいのが狩れたかい」
「やぁ今日は、シカだよ、メスのシカ。血抜きしてなかったから、値引きされたな。あとオスさえとれれば、ツノの大きさで値段が基本価格から値上げや倍額になるのに」
この小人風な茶色のズボンに黄色い服、薄茶のスカーフをした格好をした子供、名はジット、齢9の子供である。弓矢や短剣を使って今は草食動物や草花を狩っている。
「 ははは、そりゃ血抜きしてなかったから、鮮度が落ちて肉が悪くなるし、値下げされて当然だな。それにツノが大きいのなんか、シカの中でも強さの証だ、そう簡単にジットにはやらせてくれないな。」
この男、この宿屋の亭主で通商ギルド(泣かない宿)の連盟会員で、元ハンターで店の至るところに墨絵や一部を飾っている。ジットのハンター技術力の基礎的を教えていたりしている。
「なんだと、俺は将来モンスターや恐竜や幻獣を狩るんだぞ。」
「ひゃははは」
すると奥のテーブル席で、高笑いする声が聞こえた。
「おいおい、ガキ。お前みたいなガキが、幻獣や恐竜やモンスターなんか狩れる訳ねーだろ。せめてこの村で、猟師でもやっていな」
「なに」
「そんな幻獣やモンスターや恐竜は軍の少佐であり、のちにこの国の最強最高の軍、マルナス中央政府軍の将になるラーム様が。」
この男ラーム
体長2㍍はあり、黒く汚れた軍服を着、服をしめず表から肌が見える、腰には剣がささって、髭図らの顔が印象的な男だ。
「だから、この村でガキはチマチマと生きてりゃいいだよ」
「なんだと、ふざけるなぁ」
ジットはラームに向かって持っていた石を投げようとした。しかし亭主止められた。
「よせジット、相手は軍隊だ。お前が叶うわけない。」
「くそ、離せおっさん。俺の夢を笑われて大人しくしてられるか。」
「ははは、亭主に助けられたなガキ。」
ラームが宿屋を出ようと扉を開けて歩いたら、立っていた青年にぶつかった。ラームはそれと同時にふらついて、壁に手をかけた。
「くそぉ、痛ってなぁ」
「あっごめん」
と男が手を差し出すと、ラームはその腕を掴みそのままラームの居たテーブルの方へと投げ飛ばした。ラームの飲んだあとのグラスや食器があったけど、男が飛んできたと同時にそれらが割れて散らばりテーブルや椅子までも散らばった。
「くそ、ムカつくぜ」
そう言いながら、ラームは店を後にした。ジットや亭主、そしてジットと同い年の亭主の娘で亭主自慢の看板娘のセラが男の元へと駆け付けた。
「大丈夫ですか。」
「うぅ…」
「セラ、水や濡れた布巾を」
「はい」
そうすると金髪で薄いピンクのワンピースを着てエプロン姿のセラは、カウンターに行きコップに水を汲み持って行って亭主に渡し、亭主が飲ませている間にカウンターに戻り布巾を濡らし男の元へと行き、顔を拭く。
「ありがとう。ふぅびっくりした。」
「お兄ちゃんすごいね。ぶつかっていた大男のラームをよろけさせるなんて。」
「兄ちゃん、あまり見ない顔だな。旅人かい?」
「あぁ、さっきこの村に着いた」
「ほぉそれはご苦労なことだ、何処からきたのだい」
「ジルワット。そこが俺の生まれた町だ。そこから着た。」
「ジルワットか、それは長旅だな。」
男は、クスッとニヤついた。するとセラがしゃべった。
「お兄さん、どうしたのですか?」
「いやぁ、行きのいいだけのガキがいるなって」
「行きいいガキで何がわるい」
「いやぁ、悪くはないよ、悪くは」
「なんだとラームをふらつかせていいヤツかと思ったのにがっかりだぜ」
「ハハハ」
男は笑いだした。大きな口を開けて大きな声で人を小馬鹿にするように。
「ふー、ホントにいきのいいガキだ。めでたいヤツ。ムカつくヤツが人にぶつかってよろけて喜ぶのだからな。それならドラゴンはあの軍人に任せてお前はそこら辺の動物を狩るのがお似合いだ、まさにあの男の言う通りだな。」
「何を」
とジットは、男の顔を殴った。2発目取りかかろうとしたが、亭主に腕を捕まれ殴れなかった。
「やめるのだ、ジット」
暴れながら、もがき男を殴ろうとしていた。
「離せ、親父、あいつを殴らないと俺の気が晴れない。俺のプライドが許さね。こいつを殴り倒さないとダメだ。」
すると男が、殴られたのに、そうではなさそうに言う。
「ふん、やろうと思えば出来るではないか。しかしやぶからぼうに飛びかかっても命が足んないぜ。」
そして男は立ち直り去り際にこう言って店を後にした。
「お前らはいい魂を持っているけどまだ若いし、鍛えれば強くにもなれる、そうしないと何も守れないぞ。」
「くそ、なんかムカつくヤツだったぜ。今日は最悪な日だったぜ」
そう言いながら、カウンターに行き座飲みかけのドリンクを飲みながら席に着いた。
「ふー、何だいジットそんなことで腐っていたら本当にあの二人の言う通りだぞ。」
「まぁ仕方無いさぁ、本当にジットは子供なのだから。」
そう亭主やセラはジットを弄るように言った。これはジットを向き直す事にいつもならなっていたが今回は違った。火に油をかけるのと変わりなくさらには怒って出ていった「うるせー」と行って。
「ちょージット」
「まぁこうなる事もいつもの事だ、時期に腹でも空かせて戻ってくるさ」
「確かにね」
と亭主とセラは、後片付けと夜の準備など店の事をしだした。
「あーくそ、ホントに今日どいつもこいつのムカつくぜ。ラームと言いあの男と言い、さらには亭主やセラまでバカにするのだからな。くそ。」
それほどまでに、ジットの心は揺らいでいた。大きな夢を野望を語ったら笑われ、怒られ、バカにされる。少年の心を追い込むには充分だった。そして、近くにあった大きな石を思いっきり投げた。その石は気持ちいい程に放物線を描きずっと前から置いてあったバケツに当たった。バケツは石の当たった側とは反対側に倒れ、そして通りがかった人に落ちた。中には長い間放置されて溜まっていた分の汚れと廃水もぶちまけられた。
バシャッア
「うぅぅ、くそ。一体誰だ、俺にこんなことをしたヤツは。」
「うげ、やべぇ。しかし、どっかで聞いたことのある声だな。誰だっけ。」
ジットは少し考えたが、諦めすぐさまに立ち去ろうとし、塀の脇の小道を抜けて行った。「ぜぇぜぇ、もうすぐ抜ける。」小道を抜けた瞬間に、誰かに押され横に吹っ飛ばされた。
「ぐぁあ、くそ。一体誰だ。」
それは、背丈は170ぐらいの細身、腰には長銃を備え付けていた軍服の人だ。
「ボス、先回りして出てきたネズミがこいつです。」
その軍服の人の言った先には、何とも見慣れた光景のあの男、ラームがいた。そしてジットは、バケツを被った男がラームであることに気づいた。
「よーお、ジット。てめぇこの俺に何て事をしてくれるんだ。よっぽど死にたがりなもんだな。」
「ふん、知るかボケ。お前が悪いだろ、大口叩くわりには、バケツを避けられずに水を被るはめになるのだから、どんくさいなぁ」
ジットは起き上がり、ラームにたてつくように言い返した。
「なんだとこのガキ」
ラームはキレた。それもすごく日々の尋常な程とは遠く。何故なら、これから本隊に合流する予定でいたのだが、それをジットに汚されたのだ、無理もない。その怒っている隙にジットは木の棒を持ちラームの頭上にめがけて降り下ろした。しかしそれを軍服の人が長銃で受け止め振り払った。ジットは後ろ向き飛ばされたが、片膝を着きながらで着地した。ふーと息を吐き次の一手へと出ようとしたとき、ラームに顔面パンチをもらいながらうしろに倒れた。
「うぅぅ、くそ、俺をバカにするな。」
四つ這いになりながら叫び、ラームに突進していた、しかしラームも突進に合わせて拳を打ち返す、しかし今回は吹っ飛ばされず耐えて次の一発は当て様としているが、ことごとくラームにかわされお返しのパンチをもらうはめであった。あげくのはてにはむなぐらを、捕まれ持ち上げられた。
「くそくらいにムカつくガキだ。こんな奴らを喰らっている獣が可愛そうだ。」
「ハハハ、確かに言えるぜ、ボス」
バシン
そこには、一瞬弾く音が響き渡った。それはジットが、ラームの顔色に拳を一発入れた音だった。
「ガキでも、拳を打ち返すことも出来たぜ、ラーム。貴様も獣に喰われる仲間だな。」
「あぁーくそ、痛てなぁガキ」
「このガキ」
すると、軍服のヤツがジットをぶん投げた、ジットは投げられるままに受け身にとれずに転がった、そしてジットが四つん這いになり顔を上げた瞬間、軍服のヤツは顔面に向けて長銃を構えた。
「死ね」
「くそぉ、ここまでか」
そう思った瞬間、俺はとっさにと言う表現ではなく流れるままに目を瞑ってしまった、あとがなく終わりを感じた。軍服のヤツが、引き金を引こうとした。その瞬間…(ぐぁあ)と声とガシャと物がぶつかる音が同時にした。そのすぐ後にガシャ、ガシャと物が飛び散る音がした。俺はとっさに目を開け辺りを見ると彼の手にあった銃を弾き飛ばされていった。
「くそぉ、だれだ」
「あぁ~あ、まったく情けいな、これでお前は一回死んだぜ」
俺は声のする方へと振り向いた。それは酒場で出会したムカつく旅人の男であった。その男は40mも離れた距離から左手をジャンバーのポケットに入れて右手は石を持て歩いてきた。そう男は50mも離れた距離から石を投げて軍服のヤツの持っていた銃にぶつけて弾き飛ばしたのだ。
「てめえ、よくもなめた真似をしてくれたな」
軍服のヤツは機嫌を怒らせ俺を後ろ蹴りして、軍服のうちに仕込ませて置いたサバイバルナイフを右手で取り出し男へと走って行った。男と軍服のヤツの距離、10m。
「死ねぇ」
軍服のヤツは、ナイフの間合いに入った瞬間にサバイバルナイフを男の顔面へと突き刺しにかかった。男は右手に持っていた石を上に投げサバイバルナイフを弾いた。軍服のヤツはサバイバルナイフが手元から弾かれ焦ったが、事既に遅し。男は石を投げる動作と同時に右手を上に上げ、すぐさま降り下ろし軍服のヤツの額に平手を当て、そのまま後ろに押し倒し右手から離れるも勢いはそのまま伝わり、軍服のヤツは反転し後頭部から地面へと叩きつけられた。それと同時にサバイバルナイフと石が地面に落ち散らばった。
そのまま歩きながら男は右手をジャンバーのポケットに入れて俺に言った。
「情けないが、俺がいて運が良かったな」
今までの一瞬の出来事にフリーズしていた俺はとっさに頷いた。
「あぁ、いや、何で助けに来た。」
「はぁ」
男はため息をつきながら上に向いていた、頭を下に降ろして俺に言った。
「そこにいる宿屋の娘さんか、えっとセラだったっけ、その子がすごく慌てた顔をして「ジットが殺されそうなの。助けてください。」って言うから、付いてきたらこのありさまって訳。」
そう言いながら、左手で来た方に親指を指した。男の言っている方を見るとそこにはセラがいた。
「くそぉ、余計な…みっともないな、俺」
「あれー、照れてんの」
男はニヤリとしながら言った。その瞬間、大きな影が現れた。
影の正体はラームでありラームはそのまま持っていた大剣を大きく振りかざし、俺達に襲いかかった。「二人とも死ねぇ。」と同時に大剣は空を斬り、ラームの後ろ側に振り抜いた。ところがそこに二人の遺体いや、姿はなく。二人を探すと二人はセラいた位置から10m手前まで移動した。寸前で交わしたのだ。ジットにもいつ自分を掴んでそしてラームの一撃をかわしてセラのいる方に移動するというおこないを認識することができていなかったのだ
「ふぅーびっくりしたなぁ」
ラームは俺達を見つけたら前へと跳びだし俺達に襲いかかってきた、男は俺を置いて、ラームへと歩いていった。手をジャンバーのポケットに入れながら。男とラームの距離が近づいた瞬間、ラームの剣撃が襲いかかった。斜めに振りかざし男は避ける、ラームは一旦足をつき体制をととのへ横ぶりに剣を左右に振る、男はその度に交わしたが、後ろをコンクリート壁に捕らわれ逃げ道がない、そこにラームが突き刺そうとする、男は壁を上がるように駆け上がりラームの突きを避けそのまま空中で一回転してラームの後頭部に足を当てそのまま後ろに蹴り押した。ラームは蹴られた勢いにより、壁にドシャっと音と同時にぶつかった。男は体制を崩すことなく地面に着地した。
「・・・すっげー」
それを見ていたジットとセラは、感心していた。
「ぐぅ、痛ってぇなぁ」
男へと振り返ったラームは左手で顔を抑えていた。
「あぁ、もうムカつく、まずガキから殺す」
そう言った瞬間ラームは脇差しにあったピストルをセラの方に向けた。男の顔が険しくなっただが、ラームはそのまま躊躇うことなくピストルの引き金を引き撃った。男は、セラの方に目を向けた。セラは怖じ気づいて動くことができなかった。がそこへジットが飛び掛かりセラをかばった、弾丸はジットの身体へと命中した。
「くそっ、がジットには当たった」
ラームが大いに喜んだ。だが次の瞬間、男はラームに飛び掛かり身体の捻りから放たれた左フックがラームの顔面へとぶつけられた。ラームはそのまま身体を浮かせて壁に叩きつけられたそしてラームは地面へと崩れ落ち壁は砕けラームの身体に覆い被さった、男はそのままジット達の所へ駆け寄りジット達の様子を見た。
「おい大丈夫か?」
と駆け寄りながら、近付くとセラが(ジット、ジット)と泣き叫びながらジットの身体を揺すっていた。男は膝を着いてジットの傷の具合と様子を見た。
「肩を撃たれたが、命に別状は無いなあ」
「お、俺だって人を守ることはできるぜ」
意識を保ち踏ん張りながら、ジットはセラをかばった事を男にと訴えた。セラは(ばか、ばか)泣き叫びながらジットを叩く、ジットの訴えを聞いた男はふっと笑った。
「さぁーて、ジットを医者に連れて見てもらいに行くか!」
とその時ガシャガシャと物が崩れ落ちる音がした、男やセラは音のなる方を覗いた、そこには男が殴り飛ばしたラームが寝ているところだ、そして次の瞬間ドンとはぜる音と同時にラームが立ち上がっていた。額に左手をやりながら。「くそぉ、よくもこのラーム様の顔を何回しかも不意討ちで殴ってくれたなぁ」と同時にラームは大剣を頭上に構え男達の方へと飛びかかった。男は舌打ちをし(やっぱ、殴り飛ばしたからって倒れてくれないか)と呟きながら、男は右手を広げラームに構えた、ラームとの距離が近まったその途端に男の右手は微かに赤く光って消えた、その次の瞬間に爆発するように炎がラームにめがけて広がりながら噴射した、同時にぐあぁ、と泣き声と同時に燃えたラームが堕ちてきた。二人は驚愕しながら男の顔を見ていた、ジットは相変わらずスゲって言いたそうな顔をしていた。
「お兄さんって一体何者なの?」
男は頭の上にハテナを浮かべて、そして頭を傾けて名乗った。
「俺か、俺はダルフだけど?それがどうした?」
そうこれが僕達の出合いであった。がそんなに簡単に終わらせてもくれず、カチャと言う音と同時に(そこのもの、少し話をいいか)と声が聞こえて来た。そこラームの現に所属しているマルナス自治軍の軍隊のご登場であった。