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俺の妹が異世界で魔法少女やってたんだが  作者: ソウブ
一章 Magical Girl Guardian
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9話 咲実と同じでな



 アイリスちゃんと別れた後、特にやることもないので帰った。

 そして夜。

 夕飯後のダイニング。

 俺は、真剣に話しておくべきだと思った。


「咲実、話いいか?」

 咲実は俺を見る。

「うん。いいけど」

 姿勢を整えて、聞く姿勢に入ってくれた。

「咲実は、あの世界に行ってどれぐらい経つ?」

 思い出す素振り。

「そうだね……たしか、一年くらいかな」

 一年。

「そうか。咲実はその間に、自分のやりたいことを見つけたんだな」

「うん……」


 咲実は、その一年で何を考え、何をしてきたのだろう。


「咲実は、やめるつもりないんだよな」

「うん」

「やめて、引きこもったままでいいと俺が言っても? 俺が養ってやるから生活の心配はするなと言っても?」

「それでもだよ」


 即答だった。

 世の人間の大半が魅力的だと思う提案に対して、この妹はバッサリと即答した。

 でも、それでこそ、俺の好きな魔法少女なのかもしれない。俺が憧れた咲実なのかもしれない。


「だったら、俺もあの世界で何ができるか探すよ」

「お兄ちゃん……」

 咲実は、諦め顔だ。

 俺も、何を言われても譲る気がないと解ったのだろう。

「真剣に、俺はあの世界が、自分が何かできる場所だと、いや、何かしたい場所だと思った。何ができるかって言われたら、確かに何もできない。それでも、俺はあの世界で見つけたい。あの世界でこそやりたいことがあると思うんだ」

 この現代世界よりも、誰かを助ける人が必要とされている世界。

 魔法少女の咲実という、俺の憧れたヒーローが存在する世界。

「そう、なの……」


「例え、今度レノラさんに調べられる俺の体が、咲実たちの力になれるものでなくても、俺は自分のできることをするよ」

 ただの人間でも、やれることはあるはずだ。

「とめても、無駄なんだよね」

「咲実と同じでな」

「うん……」

 咲実は、諦め顔だったが、微笑んで頷いていた。



咲実side



 複雑な、心境。

 そんな感じ。

 ――あの世界でやれることをやりたい。

 わたしとお兄ちゃんは、奇しくも同じことを考えている。

 でもお兄ちゃんは、魔法少女ではない。

 敵と戦えない。

 

 わたしの場合。

 この世界、現代世界ではいじめられてる子を助けて、逆に自分がいじめられた。

 しかも助けた子は助けてくれない。

 そんな理不尽に耐えられなかった。誰かを助けられる人でありたかったのに、助けても、自分が傷つくだけだった。

 わたし一人が何かをできる世界ではなかったんだ。誰かを助けるなんて、おこがましい考えだったんだ。

 そう思って、何もかも嫌になってしまって、引きこもった。何もしたくなくなってしまったんだ。

 そんな時に、引きこもってた部屋でいきなり異世界に転移させられて、最初は戸惑ったけど、あの世界ならわたしはやっていけるって思えた。

 だから、わたしはあの世界の方があってるんだよ。

 守る為に、助ける為に進んでいける。わたしの力が必要とされている世界。

 友達もできたんだ。だからわたしはあの世界がいい。

 でも、お兄ちゃんはこの世界の方が、できることがあると思う。 


 そもそも、お兄ちゃんはわたしなんかよりずっとすごいんだよ。

 わたしは、諦めてしまった。

 けど、お兄ちゃんは誰かを助ける人を、ヒーローを続けていた。

 ボランティアとか、人助けとか、小さなことだけど、まだ続けてた。

 意味のあることだって信じて、貫き続けていた。

 道場にも通っていて、人相手だとかなり強い。

 だから、すごいって思ったんだ。

 この世界で、人を助けられる人であろうとし続けた。

 失敗しても、めげなかった。

 だからわたしは、そんなお兄ちゃんに憧れてたんだよ。

 お兄ちゃんみたいになりたいって、ずっと思ってた。


 そんなお兄ちゃんだからなのか。

 あの異世界で、わたしよりも何もできないあの世界でも、何かしたいと考えたんだろうな。

 でも、それでこそ、わたしの憧れたお兄ちゃんなのかもしれない。



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