終わりの雷
学校の帰り道、俺は今にも雨が降り出そうな空を気にしつつ全力疾走をしていた。
いつもならもっと早く帰れているのだが、今日は生徒会の仕事で遅くなってしまった。
「家に親がっ、いないっつーのはっ、こういう時大変だっ」
息を弾ませながら思わず口について出たが俺には親、厳密にいえば両親が居ない。
俺が子供の頃に事故と病気でほとんど間を置かずに二人とも死んでしまった。
親代わりの祖父がいるのだが、高校が家から離れていたので現在は一人暮らしだ。
ポタッ、ポタタッ……、バラバラバラッ!
「くっそ~、一気に降ってきやがったなぁ!」
ついに振り出した雨は瞬く間に大粒になり強くなっていく。
空は真っ黒な雲に覆われ、ときどきチカチカと光っているのが分かる。今にも雷が落ちそうだ。
家への近道となる公園に差し掛かり、俺はさらに走るスピードを上げた。
だが、半分ほど進んだところだっただろうか。俺の視界はとてつもない閃光に包まれた。
耳にはつんざくような音が聞こえたかと思うと体がその場で力が抜けたように動かなくなる。
「__ッ!」
何事かと声を上げようとした俺だったが、その声は出ることはなかった。
走っていた勢いのまま地面へと叩きつけられるが衝撃があるが痛みは感じない。
全身は不思議なほど熱く、雨がその熱を鎮めてくれているようだった。
少しずつ、少しづつ、熱が消えていき、今度は体が冷えてくるのが分かった。
身体を強い睡魔が襲い、瞼は一秒ごとに重くなっていく。
俺、死ぬのか……。
やりたい事とか、まだまだあんのに。
だったら__。
生まれ変わったら、全力で生きてやる。
その強い思いを胸に秘めたまま俺の意識は途絶えた。
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これが俺の、古川 透流の人生の終わりを告げた瞬間である。
まさかの一千万分の一の確率ともいわれる落雷の直撃によってだ。
残念なことに古川 透流としての人生はこれで終わってしまった。が、予想に反して
「俺」という存在の物語はまだまだ終わらずに続いていく。
それは遥か遠くの異世界、リベルタスの地で__。