第二話
全く話が進んでませんな
ごめんなさい
ではでは
「は?」
訳のわからないことが荒波のごとく押し寄せてきて僕は口を開けたまま
呆然とするしかできなかった。
そんなのお構いなしと言わんばかりにこの状況を作った原因である少女は、
勝手に話を続けはじめる。
「私の住む世界...この門の先にある“ミラーアース”を救ってほしいのです...!」
「門?そんなものどこに...」
と言いながら僕は少女の指さす方向へ視線を向けた。
「!?」
そこには鏡があった。
そう、ただの鏡。
でも僕には悪魔の道具にしか見えない。
だから、
「あああああああぁぁぁぁぁぁ!?」
一目散に逃げだした。
超ダッシュ
今まで走ったことのない速さで家に向かって走り出した。
「えっ!?ちょっと待って!?まだほとんど何も...」
最後まで聞こえる前に少女の声は聞こえなくなった。
「昨日は散々だったが、今日こそ普通に一日過ごしてやるぞぉ!」
昨日のことなどなかったことにし僕は学校へ向かった。
最初よりさらに遠回りの道で。
だがそんなに上手くいかなかった。
今日一日最後の授業までやってきたが、まったく集中できていない。
朝から視線を感じるのだ。
席に着いてからずっと。
「(あぁ~もう!!なんなんだ誰なんだよ!!)」
そんな感じにずっと思っていると、
よほどひどい顔だったのか
「あの、大丈夫ですか?」
隣の子が小声で話しかけてきた。
「あ、ごめんなさい、集中切らせちゃって。ちょっと考え事してて。」
「いえいえ、こちらこそいきなり話しかけてすみません。ちょっと気になってしまって。
でもよかったです。一輝さんがなんともなくて。」
「ありがとうございます。...あれ?でもなんで僕の下の名前知ってるんですか?」
「あ、えぇーっとそれは...」
と何か言おうとしたところで
「こら~、初対面の人が多いからって授業中にナンパするなよ~桐島君。」
と今の授業、国語の担当である国分寺先生に注意された。
ちなみにかなりの美人で男の教師全員のハートを鷲掴みにしている。
「なんてこと言うんですか!?俺が変態だと思われるでしょ!」
「いやなら、ちゃんと授業受ければいいの。わかったかしら?」
「うぐぅ...」
とうなりながら僕は渋々席に着き、授業を受けた。
「さっきはすみませんでした、巻き込んでしまって...」
授業が終わったすぐあと、隣の子に向かってそう言った。
「いえいえ、全然大丈夫ですよ。 私が話しかけたんですから私が悪いんです。
それよりさっき言おうとしたことですけど...」
「言おうとしたこと?」
「なぜ私が一輝さんの名前を知ってるかです。実は私...」
「入学試験の時、鉛筆を貸していただいたんです、一輝さんに!」
「入試の時...?うーん、貸したような貸してないような~」
「その鉛筆に書いてありました、名前が、ひらがなで!」
「マジか...(小学生の時のやつだな、ちくしょう)」
「これを返したくて捜してました。」
「わざわざいいのに...ありがとう!えっーと...」
「あ、すいません。まだ自己紹介してませんでした。
私、西園寺 咲織です。よろしくお願いします!」
「うん、改めてよろしく!タメ口でもいいかな?」
「はい、大丈夫です!呼び方も好きに呼んでください!」
そう話していたらとっくに次の授業の時間になっていた...