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実結と晃太
「かっこいいこと言っちゃってさぁ。わー恥ずかしいねえ晃太! 優佳とか亜美に教えよー」
「うっせえ! もう帰る」
「じゃあアイス食べないんだ? もうすぐそこなのに」
このまま帰ると二百メートル分損をする。ただ暑いだけになってしまう。舌打ちをして、俺は引き返した。
「……ありがと」
脇の街路樹で蝉が鳴き始めた。実結の呟きは、それにかき消されてほんの小さくしか聞こえなかった。それでも、今はそれで満足だ。
「じゃあ、おっ先ぃ」
実結が駆け出した。アイスを先に選んで、俺に買わせるつもりだ。なんだよ、ついてきてやったのに。……今月末の夏祭りでりんご飴たっぷり買わせてやる。




