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向かいの窓
私は、その写真を水槽の下に滑り込ませた。
──何も変わんないよ、多分。
違う。変わらないはずだったかもしれないものを、私が、変えてしまったんだ……。
私はベットにもたれて床に座った。
窓の向こうに、もう一つ、窓が見える。
向かいのうち、晃太の部屋の窓だ。
その窓を開けて、晃太がうちわをあおいでいた。
「暑ぃなぁ。早く、俺の部屋にもエアコン付けてくれねぇかな……」
晃太がブツブツと文句を言う。
晃太の家は、道路を挟んで私の家の向かいにある。
幼い頃からずっと、私にはこの部屋があったから、宿題をする姿、友達と遊ぶ姿、時には泣いている姿も見てきた。
つまり、私と晃太は幼馴染だ。
小学生の時は、この窓で糸電話を渡して遊んだりもしたっけな。
私はエアコンを消して窓を開けた。
「あ、実結。調子良くなったか?」
うん、と私は頷いた。