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幻の夏祭り  作者: 皐月 満
二人の境内
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温もり

私がもう一度浴衣の袖で目元をこすって顔を上げた時、そこに零波はもういなかった。


零波は行ってしまった。


まるで幻のように一瞬だった。けれど、手にはしっかりと零波の温もりが残っている。疑いなんてしない、今ここであったことは本当だ。


夢の中から覚めたような、すっきりした気分だった。こんな感覚、長いこと味わっていなかった気がする。


私は境界線の役目を終えた鳥居を潜り、ゆっくりと、晃太の待つ本殿への石段を登って行った。

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