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真実
私も花火を見つめた。
「これが最後だもんね、実結。私はもう、ここにいないから」
もう何度も考えたことなのか、あっさりと、零波はそう口にした。──危ない、抑えなきゃ。ここで泣くわけにはいかない。
「……でもね、私、実結のために死ねて本望だとか、そういうキザな言葉は使いたくないけど、本当にこれでよかったと思ってるよ」
目下に見える露店の列に、花火の色が映った。
零波がこちらを見ていたずらっぽい笑みを浮かべた。
「もちろん、死にたくなんてないけどね」
再び花火に目を向けて、零波は続けた。
「それでも、私は実結に死なれたら今ここにいなかったと思う。今もいないけど、後を追ってたよ、きっと。私にとったら、実結が唯一の心の支えだったの」
山車のお神楽が近くなってきた。お祭りの光が花火と重なっている。私は黙っていた。どうして、と訊かなくても、零波が切り出してくれることを分かっているからだ。
零波はそれを察したように、口を開いた。
「本当はね、兄さんはもういないんだ……」




