行方
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五時半を回っていることに気がついたのは、山車が中心の大通りに入ったときだった。
この広い会場、つまりこの商店街をくまなく探すにはかなりの時間が必要だ。ここの商店街は神社から扇型に広がった変わった形をしている。通りが三本、神社に突き当たるように伸びており、そこから細い路地が大根の毛のようについている。細い路地まで探すとなれば、夜が明けてしまうだろう。
「どうしよう……」
まだ零波を見つけられていない。もう交代する時間の筈だが、一時間も抜けてしまったものだからどうしようもない。本来は山車を曳く為に呼ばれているのだ。ただ、これ以上山車を曳きながら探しても見つからないような気がした。
晃太に相談しようか、と一瞬迷った。が、これ以上彼に心配をかけられない。すぐに首を振り、辺りを見渡した。
ふと、私は、零波が本当にこんなところを歩いているのか、と不安になった。そもそも私はなぜ、零波の実態が見えると思っているのだろう。
「実結、痛えって」
晃太が振り向いた。どうやら下駄で脚を蹴ってしまったらしく、晃太が顔を顰めていた。
「あ、ごめん。大丈夫?」
「ぼけっとしてるからだろ。痛えよ、わざとかと思った」
「本当にごめん」
晃太が不満そうに前を向いた。よほど痛かったらしく、うっすら涙目になっていた。




