7/100
金魚
顔の上をエアコンの風が撫でていく。
あの金魚は、去年の夏祭りに零波と一緒にとったものだった。
赤と白の金魚。赤の金魚。赤と黒の金魚。
それぞれ、「朝」「夕」「夜」と名前が付いている。
そういえば、朝、餌をやってなかったっけ。
私は水槽の横に置いてある餌を手に出し、その小さな玉をパラパラと水槽の中に落とした。
三匹はあっという間に寄ってきて、浮いている餌を食べている。
ああ、単純だ。
私も、金魚だったらいいのに。
人間は、餌を食べて生きることだけに集中して生きてはいけない。金魚とは、違うんだ。
餌をもともとあった場所に戻してから、私は水槽の向こう、壁に挟まれたあるものに気付いた。