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祖母の案
夕方になっても、私はぐったりと動かなかった。
私の寝転がっている畳の間の隣、台所からは包丁のトントンというリズムが聞こえてくる。もうすぐ夕飯なのだろう。
そう思っても、私は時計を見る気力も無く、ただただ転がっているだけだった。
フラッシュバックの後は、身体が重い。あの記憶を鮮明に思い出すのは、あまり楽じゃない。
私の意に反して、この頭は一片も欠かす事無くあの記憶を覚えている。何故だろう。
「姉ちゃん、卵焼き作って」
実紀が呼ぶ。面倒臭かったが、私は半身を起こした。
「千代ばあが卵焼き作ってって言ってる。姉ちゃんのは美味しいからってさ」
気にくわないらしい。態度がぞんざいだった。
しかし、千代ばあも考えたものだ。こういう事を言われたら、「おばあちゃんをちゃんとお手伝いして来なさい」と言われている私はやらないわけにもいかない。私と雑談するでも気分は軽くなるのだから、私を呼び出すのは名案だ。
「……分かった」
私は立ち上がった。




