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二人目
しばらくぼうっとテレビを見ていた晃太が、突然立ち上がった。
窓の外に誰か見つけたらしい。
晃太は窓越しに「涼介!」と呼んだ。
道を歩いていた涼介がこちらを振り向く。
体操服にタオルを首にかけているから、きっと部活帰りなのだろう。
晃太は玄関から涼介を呼び込んだ。ここは私の家なのだけれど。
「実結、お前部活は?」
リビングに顔を出すなり、涼介は言った。
「今日は森山コーチだったんだぞ。休むなら山田コーチのくる明日休めよ」
「うん……」
明日も行かないかもしれないな、と私はぼんやりと思った。
二人のコーチは、私や涼介が所属しているバスケ部の外部コーチだ。
山田コーチは技量は確かだがスパルタで有名で、バスケ部員に恐れられていた。一方の森山コーチは山田コーチに比べて小柄だし、何より優しい。
「私は別に、山田コーチが嫌いなわけじゃないよ。森山コーチの教え方がいいってだけで」
へえ、と意外そうに頷き、涼介は晃太の横に腰を下ろした。