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蕎麦屋
駅近くの手頃な蕎麦屋に入り、私と晃太は席に着いた。
お品書きを見ながら、晃太はまたもうちわをぱたぱた扇いでいた。
「なんか、お祭りの宣伝してるみたいだね」
定員を呼んでから、私は晃太のうちわを指した。晃太がうちわを見て苦笑する。そうこうしているうちに、
「ご注文は?」
と声がした。
晃太が、お先に、という仕草をする。私は分かった、と頷いた。
「ざるそば一つ」
向かいで晃太が手をあげる。
「あ、もう一つお願いします」
なんだ、同じだったのか。私は「以上で」と言って注文を終え、出されたお冷を一気に飲み干した。もう朝御飯からずっと水分を摂っていなかったため、十分に冷やされた水は喉に甘かった。




