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刹那の中に
「実結!?」
零波が叫ぶ。
いつもはそんな鋭い声をあげたりしないのに。
考え直してくれたかな……?
そう思っていた。
けれど、私は、いかに愚かな行為をしてしまったのかすぐに悟った。
零波の手からスポーツドリンクのペットボトルが落ちる。
零波は、私を追っていた。
零波が私に手を伸ばす。
嘘だ……!
私は大型車が零波に迫っているのを見た。
思わず目を見開く。
私は零波に手を伸ばした。
嫌だ、こんなの。
こんなことを望んでいたんじゃない。
手は届かない。
──どうして……?
なんで届かないの?
夏の刹那が通りすぎて行く。
「零波ぁ!」
一瞬にして、零波の細い身体が視界から消えた。
同時に、私も吹っ飛んでいた。