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大通りを
──PTSDですね。治すためには、向き合うしかないでしょう。
嫌だ。
──向き合ってください。過去と。
嫌だ……!
「嫌だ、離してよ晃太!」
私は、半ば引きずられるような形で連れられていた。
晃太は私の腕を掴んで引っ張って行く。
このままでは、交差点に着いてしまう。そしたら……!
私は必死に抵抗した。体重をかけて踏ん張ってみたり、逆方向に走ろうともした。
けれど、晃太の手は離れない。昔は、私の方が力が強かったのに、いつの間にか抗えなくなっている。
晃太は黙って私の腕を引っ張る。
大通りに出た。
ここを真っ直ぐに進めば、あの場所に着く。
街路樹からヒグラシの声が聞こえている。
私は思わず目をかたく閉ざした。
晃太が、立ち止まった。