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声
エアコンの風に当たりながら、私はぼうっとしていた。
あれだけ寝たのに、睡魔が襲ってくる。瞼を閉じてしまおうと、私の思考を攫って行く。
しかし、私は恐怖で眠れなかった。
また、あの光景を見るのか。零波が私の前から姿を消す、あの光景を。
ブレーキ音が耳の奥で私を責め立てる。引きずり込まれる……!
嫌だ……零波……!
瞼が閉じていく。暗い谷に落とされるように、夏の一瞬が鮮明に蘇る。また、繰り返されていく……。
──実結。
はっ、と私は目を覚ました。
零波?
そんなわけない。だって今、零波は私の目の前で……。
けれど、私は自然に耳を澄ましていた。
エアコンの風すらうるさく感じる。
──夏祭りで、待ってる。
私は驚きに動けないでいた。
零波の声だった。間違えようもない。
零波だった。
うなされてかいた汗が、じっとりと纏わり付いていた。