Strike Back Blames 4
「リュミエール様の仰られますように、私にとっての世界はソフィア様であり、あのお方の言葉に逆らう事は出来ませんでした。ロングアイランドに足を踏み入れる事も出来ず、御巫様を通して面会を申し出る事くらいしか出来ないほどに」
自分と試せという命令のせいで日本では力になる事が出来なかった。自分を放っておいて、好きに生きろという命令のせいで近くに行く事も出来ず、守るという自分の望みすら叶えられなかった。
しかしクロードにはソフィアを責める事は出来ない。相応しい終わりを見つけようと立ち上がるその姿は美しく、ソフィアの選択は気高いものなのだから。
「それでも、私はあのお方をお救いせねばなりません。望んでもいない力のために孤高を選ばされてしまったソフィア様を。ただの少女で居る事すら許されなかった、哀れなほどに愛しい主様を」
そう言ってクロードは燕尾服の襟に着けられた、ストロムブラードのエンブレムに触れる。蔦のような模様が入ったハートはまるで、しがらみに囚われた主のようだった。
ソフィアがクロードから様々なものを得ていったように、クロードもソフィアが感じていた苦痛を共感していた。
睡眠薬による暴力的な支配、命そのものを陵辱するような苦痛、その優しさとは裏腹な他人への諦め。
裏切りを受け入れ、苦しみに歯を食い縛り、不毛な大地へ1人で歩き出す。
考えるまでもなく、ソフィアに復讐を決意させてしまったのは自分達だった。
だからこそ、レイア・ブレームスはもう止まれない。
人を利用するのではなく、圧倒的な実力とカリスマ性で圧倒するレイアだからこそ、クロードが殺さなければならない。
視野が狭く、思い込みが激しく、厭世家で寂しがりな彼女だからこそ、ソフィアという存在に魅入られてしまうのだから。
「敵は、レイア・ブレームスはどこに居るんですか?」
「ドロシー、お前……」
「ゴメンね、トト。この気持ちもソフィアさんから与えられたものかもしれない。けど、私はもう引き下がれないの――」
驚愕したように目を見開くトニーを制し、ドロシーは言葉を切っておもむろに指を鳴らす。隙間風の入る部屋にその音が響き渡った瞬間、ドロシーの足元に置かれていたスーツケースが独りでに開き、真っ黒な外郭を展開してラックをせり出させる。
「――だって、ワタシはソフィアさんの友達なんだもの」
続けられたドロシーの言葉に呼応するように姿を現したのはコンバットスーツと武器。
赤いロングコート、黒いライダースジャケット。それぞれをはじめとした長身の男女のためにあつらえられたコンバットスーツ。
そして2丁の特殊拳銃と赤いポイントが穿たれた振動刃。
日本の研究所で修正を重ねたそれらこそが、ドロシーの答えだった。
「ほな、はよう行きましょか。悪戯にもおサボりにも、やいと据えたらんとあきまへんな」
そう言って静音は吹っ切れたように、そして覚悟を決めたように微笑む。
ドロシーの言う通り、今感じている寂寥感も焦燥もソフィアに与えられた影響なのかもしれない。
それでも、ソフィアを守りたいと思うのは、紛れもなく静音の衝動だった。
「……しょうがねえ、か。ダメにされたケーキ代、取立てねえといけねえじゃん?」
共感を求めるように両腕を広げて、トニーは犬歯を剥き出しにするように獰猛な笑みを浮かべる。
戦い理由も戦う為の装備もあり、主は戦う事を命じてくれた。思うままに気に入らない敵対者を殺す事を。
番犬でもなく、猟犬でもない。トニー・トバイアスの思うままに。
だからこそ、クロードの薄い唇が紡ぐ言葉も衝動から生まれたものだった。
「おそらくレイア達が居るのはソマリア沖の孤島、ファイアウォーカーの本拠地です。最後のファイアウォーカーとして、あのお方の最初の従僕として、私は私のなすべき事をなしましょう」
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