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Kissin' The Flames  作者: J.Doe
Fallin' The Flames
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Strike Back Blames 2

「例を挙げれば、私の"戦闘技術"と"日本語などの知識"。ソフィア様は直樹・楠本の腕を効率よく破壊され、桜井様と流暢な日本語で会話をされていました。どれも完璧に使いこなされている事を考えれば、決して短くはなかった処置の間にソフィア様は"相応しい存在"にされてしまわれたのかと」

「会見と言ってる事が違うじゃねえか。どういう事か説明しろよ」


 イライラと人差し指でベッドの柱を叩き始めたトニーに、クロードは頷いて続ける。


「会見では、あくまで因果性は不明と前置きしておきましたから――データの送受信に耐えられるように脳神経を含めた肉体的な強化、相手の脳へのアクセスシステムとリミッター強制解除システムの構築、特殊なフェロモンの分泌器官の増設。それらは全てソフィア様に施された処置であり、"Sheep Tumor"自体には皆様が思うほどの価値はないという事です」

「全ては、ソフィアさんの進化と、お母上の復讐のため、ですよね?」


 焦燥するように言葉を尖らせるトニーは、どもりもせずに割り込んできたドロシーの言葉に顔を顰める。

 ソフィアの母、マザー・パス・ストロムブラードがテロによって死亡した事は有名な話だが、ソフィアが復讐に身を焦がしていたようには見えなかった。更に言ってしまえば、進化という言葉の意味が分からない。気に入らない事ではあるが、ストロムブラード社を任せられるように成長させるという方が、まだ理解も納得も出来る。

 ソフィアに施された処置の全てを、グレナ・ストロムブラードによるものなのは間違いないのだから。


「ソフィア様をお守りするには"復讐"を成就させない事が、"Sheep Tumor"を使わせない事が不可欠だと後になって判明しました。皆様にはそのためにソフィア様の傍らに居ていただいたのです」


 だからフラッシュグレネードを使って、本当にソフィアを守るかを試した。

 だからドロシーを守る事で、トニーの出方を窺った。

 だから皆がソフィアのそばにいる事を許した。


 自分達を利用していたというクロードの告白にも顔色1つ変えず、ドロシーは赤いフレームのクリックリーダーを指先で押し上げる。

 そもそも、財力だけで言えば、リュミエールはストロムブラードに劣らない。世界がナノマシンによる治癒を求めるように、武器による支配を求める者達は少なくないのだから。


 だが、リュミエールに手厚く保護されていたドロシーでは、ファイアウォーカーの望みに応えることは出来ない。

 燃えるような赤毛が特徴的な可憐で美しい容姿、誰よりも強く優秀となりえる才能、失踪した父親と殺された母親。ソフィア・ストロムブラードほど、ファイアウォーカーに相応しい人間は居ない。


 それこそ、最強にして最高の傭兵を供物とするほどに。


「ですが、その考えすらも向こう側は織り込み済みだったのかもしれません。荒事に慣れていない御巫様をジェスターに紹介し、私に戦わせる事でリュミエール様とトバイアス様をソフィア様の傍に呼び寄せ、楠本氏に泰明様とパーシヴォリ氏を利用させる事でソフィア様と我々を隔離する。そしてお優しいソフィア様が全てをご理解され、孤高をお選びになられてしまった」

「……ほんま、ほんまにソフィアはんはかいらしゅう程にアホやんなあ」


 否定しようのない事実とソフィアに選ばせてしまった答えに静音は、こみ上げる何かを堪えるように固く口を結ぶ。

 守ってやりたいと心から願っていたが、守って欲しいなどと考えた事などない。悲しみを理解してやる事は出来なかったが、悲しませたい訳ではなかった。

 その傍らに寄り添っていられるだけで良かった。必要とされているだけで、兄弟や部下に求められた時とは違う歓喜に静音の心は震えていた。

 慈愛や母性とは違う、どうしようもない程に心を満たしてくれる根源的な衝動。

 愛情、献身、忠誠心。どの言葉も陳腐に思えてしまうほどの、狂おしいほどの感情によって。


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