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Kissin' The Flames  作者: J.Doe
Callin' The Flames
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Who Ignited Flames 6

 二条城の天主を門外から見上げながら、ソフィアは左腕に感じる肉感的な温もりに眉尻を下げる。ワンサイドアップにした赤毛も、本人の消沈した意気を表すようにしなだれていた。


 ただでさえ盆地の心地良いとは言えない気候だというのに、薄手のシャツを纏う左腕はスカートスーツ姿のドロシーに囚われていた。


 茶屋を後にした3人は仕事が早く片付いたドロシーの連絡を受けて、二条城近くで合流する事にした。車中で手の平の手当てをしたとはいえ、転んだ際に手をつけばどうなるか分かったものではなく、山中にある狸谷山不動院を見送られる事になったのだ。

 ソフィアはその過保護な2人の決定を嫌がったが、観光を続けるには受け入れる以外なかった。静音の兄弟や楠本に会う可能性がある御巫邸にはまだ戻りたくなく、京都はソフィアの好奇心を刺激してやまないのだから。


 しかしドロシーとトニーと合流したソフィアは、その選択を後悔する事になる。

 朝食を一緒に摂った時にはなかった左手の包帯に、ドロシーが気づいてしまったのだ。


 それからのドロシーは凄かった。


 今までの内向的な気性が嘘のようにソフィアにくっつき、傷ついた左手で何もさせまいと世話を焼き始めたのだ。

 血が沁みたハンカチでさえ、処分に困る立場を理解してはいる。それでも今までその気配はなかったドロシーの過保護ぶりは、増えてしまった保護者、そして突き刺さる周囲からの視線以上にソフィアを戸惑わせた。

 タイトなシルエットのスカートスーツを豊満なボディに纏うブロンド美女。そんなドロシーに世話を焼かれる、燃えるような赤毛の可憐な少女。その光景は絵になる以上に人目を引いてやまなかったのだ。


「楽しみですね、ウグイスバリ」

「……鳥の剥製でもいっぱい貼ってあるの?」

「どんなホラーハウスだよ」


 待ち切れないとばかりにドロシーの言葉にソフィアは首を傾げ、その光景を想像してしまったトニーは心底嫌そうに傷の刻まれた顔を顰め、ドロシーの口からキャンディの棒を引き抜く。博物館や邸宅に剥製が並ぶ分にはインテリアで済むかもしれないが、城の床一面に張られれば悪夢の光景でしかない。


「いいか。ウグイスバリっていうのは、人が通ると音が鳴るように設計された特殊な床の構造、当時の警備システムだったはずだ」

「トニーさん、よくそんなこと知ってたね」

「どこかの誰かさんが日本行きを楽しみにし過ぎててよ。おかげで土産を買う場所まで頭に入ってんだ」


 そう言ってトニーは高速でそっぽを向いた親友にじっとりとした視線を向ける。旅の用意をさせてしまった手前、文句は言えないが、機内でずっと語られた二条城の歴史は重く長いものだったのだ。

 もっとも、半分寝ていてたトニーは内容のほとんどを忘れているのだが。


「あ、あの、さっき桜井さんとお話されてた方々ですよね?」


 左腕を囚われているせいで振り向く事が出来ないソフィアは、忌々しい名前を紡ぐ声の方へと首だけで振り向く。

 自業自得とはいえ、現状の窮屈さと左手を支配する痛みを考えれば、ソフィアには無理もないことだった。


 予想通り、そこには明日香と同じセーラー姿の少女達が居たのだから。


「せやけど、明日香はんはどうされはったん?」

「それが、ここで待ち合わせのはずだったんですけど……」


 ソフィアの不機嫌さを察した静音の問い掛けに、セーラー服姿の少女は戸惑いを隠しもせずに答える。

 修学旅行という学校行事で来ている明日香に度の越えた自由は許されるはずもなく、自由を許した彼女達にも責任はのしかかる。それでも6年ぶりに行方不明だった兄を見つけた明日香を少女達は止める事は出来ず、後で合流する事を約束して予定していた観光に戻るしかなかった。


 しかし明日香が約束の場所に現れる事はなく、"件の兄"をはじめとした一同が現れただけ。少女達が不安に駆られるのも当然だった。



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