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Kissin' The Flames  作者: J.Doe
Rollin' The Flames
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Baby Bloody Beauty 4

 やがてエレベーターは地下階で止まり、エレベーターの灯りが駐車場へと続く暗い廊下を照らし出す。

 ソフィアはボタンを押しているクロードを横目に、冷たい空気が出迎える廊下へと踏み出す。

 キーを持っているのはクロードなのだから、先に行ってくれればいい。ソフィアはそう思うも、どうせ人の考えている事など理解出来るわけがないと言葉を飲み込む。

 かけられる言葉に感情はなく、誰もが自分を通して両親を見ている。これまでの人生で、それだけは理解しさせられているのだから。


「お嬢様、お待ちを」

「今度はなんなの?」


 背後から掛けられた声にソフィアはため息をつきながら振り向く。

 気分の悪さは感じなくなったが、このままでは疲れてしまう。

 しかし振り向いたソフィアは背後の光景に息を呑んでしまう。

 背後に居たクロードが見知らぬ男を片手で締め上げていたのだ。


「な、なにしてんのよ!?」


 予想外の光景にソフィアは声を張り上げてしまうも、クロードは不愉快そうに顔を歪めて意識を失った男を床へと打ち捨てる。

 その躊躇いのない動作にソフィアは思わず男に手を伸ばそうとするが、力を失った手から零れ落ちたスタンガンに動きを止めてしまう。

 それは、明らかに護身用の類のものではなかった。


 しかし困惑するソフィアを状況が許しはしない。


「ソフィア・ストロムブラード、そこに居るのは分かっている。大人しく投降しろ」


 廊下の向こうから聞こえてきた男の声に、ソフィアはポケットから取り出した黒い手袋を嵌めているクロードを睨みつける。

 ソフィアの価値を正確に理解し、会見でその価値を公表し、他者との接触を拒んでここまで引きずり出す。

 そんな事が出来た人物を、そして床に崩れ落ちた男の標的を推測するのなら、答えは1つしかない。

 自分が狙われる理由を理解しているソフィアには、そうとしか理解できなかった。


 彼らの目的はソフィアの拉致であり、内通者は銃を所有する彼らをここまで侵入させた。


 ソフィアから逃げ道を奪う程度のことなど、会場準備以外の会見を仕組んだ執事には容易いはずなのだから。

 あまりにも浅慮な自分と狡猾な執事のやり口に苛立つソフィアは震える拳を握り締める。


 両親と社員達のような信頼関係が築けるなんて考えた事も、願った事もなかった。自分に与えられた役職にも役割にもプライドも執着もなかった。それでも感情とは違う本能がソフィアに苛立ちを抱かせるのだ。


 自分を害する何もかもを燃やし尽くせ、と。


 だというのに、クロードはソフィアを捕えようとするどころか、どこか悲しげに目を伏せていた。


「申し訳ありません。出来れば、お嬢様がお気づきになる前に処理しようと思っていたのですが……」

「しょ、り?」


 心底残念そうに呟いたクロードの言葉に、ソフィアは理解出来ないとばかりに言葉を繰り返す。

 正面を向けば現実離れした容貌の執事が顔を曇らせ、下を見ればその執事によって意識を失わされた男が横たわっている。その異常な状況に、ただの少女でしかないソフィアがついて行ける訳がなかった。


 息を吸う度に増していく困惑に身を任せるようにソフィアが廊下の向こうへと視線をやると、見えたのは駐車場で陣取っている男達。製薬会社の社屋に相応しくない風貌の男達は誰もが銃を手にしていた。

 しかし状況はソフィアを置き去りにするように更に加速していく。


 硬質なヒールと共に1人の女が現れたのだ。

 白いスカートスーツを纏う、ブリュネットの髪の女が。

 Spree Mouth >> error

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