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Kissin' The Flames  作者: J.Doe
Callin' The Flames
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Because Must Burnout 4

 案内された部屋に思わずソフィアは息を呑む。

 敷き詰められた畳からはイグサの香りが漂い、縁側の窓からは月明かりが差し込む庭園が見えている。

 そのテレビで見たような光景は、ソフィアに異国情緒では片付けられないオリエンタルな魅力を感じさせていた。


 スウェーデンを発ってからというもの、ソフィアは昂揚する気持ちを抑えきれないでいた。

 ストロムブラード邸、ストロムブラード社、学校の寄宿舎。そのの狭い世界が確かに広がっていくのを感じていた。色褪せた世界に鮮やかに加害焼いていくようにすら感じていた。


 それもこれも、クロードが来てくれたおかげだ。


 これまで抱く事もなかった正直な感想に、ソフィアは思わず口角が緩んでいくのを感じる。

 クロードが居てくれたから皆がと出会えた。クロードが居てくれたからいつだって生き延びられた。

 気恥ずかしさからその事を口に出す事は出来ないが、偽らざるソフィアの本心だった。


「あの、あなたがソフィア・ストロムブラードさんですよね?」

「……ええ」


 早速座布団に胡坐をかくトニーと、そんな従者をよそに掛けられた掛け軸に目を奪われているドロシー。そんな2人に混じろうとしていたソフィアは、背後から問い掛けて来た泰明の方に振り向く。


 お礼こそ忘れていたが、部屋の案内はとっくに終わっている。

 それでも泰明は当然のように、それでいて意を決したようにソフィアのエメラルドの瞳を見つめていた。


「不躾ながらお願いがあります。例のナノマシンを譲っていただけませんか?」

「はい、分かりました。なんて言うとでも思いましたか」


 突然の切り出された聞き飽きた要求に、ソフィアは失望したように眉を顰める。

 他でもない静音の努力を踏みにじった上に、最強にして最高の守り手であるクロードが居ない時に切り出した泰明。1つ年上の少年の言葉は一考する価値すらなかった。


「言ってもらえなきゃ困るんですよ。そうでもしなきゃ、静姉さんが危ない橋を渡り続けなきゃならないんです――優しい静姉さんがこんな面倒ごとの渦中に居るのは御巫と俺達兄弟を守るため、そうじゃなきゃ優しい静姉さんが武器なんて売る訳がないんです」

「それは、知っているつもりです」


 フラッシュグレネードから身を挺して守り、ソフィアのために教師役を引き受けてくれた。

 そんな静音の優しさに救われていたソフィアだからこそ、静音の努力をふいにしかねない泰明をキツイ目つきで睨みつけてしまう。

 静音にとって泰明はクロードにとっての自分と同じ。トニーにとってのドロシーのように支え合う存在ではなく、守られているだけの存在。そんな矮小さを理解もせずに、静音を守っているとすら思っているだろう泰明がソフィアには苛立たしくてしょうがなかった。


 しかし続けて告げられた泰明の言葉は、ソフィアが考えた事すらなかったものだった。


「なら、そのために静姉が学校の先生になる夢を諦めた事は?」


 突きつけられるような言葉にソフィアは息を呑み、言葉を失ってしまう。

 両親に被検体として扱われ続け、寄宿舎ではミカエラのくれたクリスマスカードに縋りつき、自分の夢ですら考えた事がなかったソフィアが、誰かの夢など考えられる訳もなかった。

 しかしソフィアに勉強を教えてくれる静音はとても楽しそうで、ソフィアも学校の授業よりも静音の授業が好きだった。


 だからこそ、とソフィアは行き着いてしてしまう。


 静音の夢を妨げている存在に、自分と"Sheep Tumor"が含まれている事実に。

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