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Kissin' The Flames  作者: J.Doe
Rollin' The Flames
28/77

Just Hold Your Lips 3

 焦点の合わないエメラルドの瞳で見詰めてくるソフィアを静音に預けて、クロードは無造作に作業代の下から出て立ち上がり、作業台の上のアンチマテリアルライフルを手に取る。


「リュミエール様、テストを始めましょう。どうかお耳をお塞ぎください」

「ちょ、ちょっと待ってください!」


 ドロシーは思わず声を張り上げてしまう。

 スタンドもなしでアンチマテリアルライフルを構えるクロード、熱に浮かされたように白い頬を紅潮させるソフィア。燕尾服を纏う腕に持たれた高火力の暴力と、着物を纏う腕に抱かれた尋常ではない様子の少女。ドロシーが戸惑うのも無理はない。

 しかしクロードは銃床を肩に当てて平然と構えてしまう。


「リュミエール様、こちらのライフルは?」

「す、水平2連装式アンチマテリアルライフルのヒステリック・スコーチャーと、オブセッスド・プレイヤーです! それは反動が強すぎて固定しないと撃てな――」


 声を張り上げていたドロシーは突然塞がれた耳に目を白黒させる。耳をふさいだ手がトニーのものだと理解しているが、愚かで無謀な行いをしているクロードを止めない訳にはいかない。


 だが返された答えは、冗談のような銃声だった。


 放たれた2発の弾丸は窓を突き破って、うっそうとした草木の向こうの金属質を捕え、爆音と共に熱波を飛散させる。

 窓という限られた射程内での1回の射撃で成果。マシンを使用した実験と同じ結果。


 望外な成果、異常な結果にドロシーは呆然としてしまう。

 ただでさえ反動の強いアンチマテリアルライフルを、単純に2倍にしたヒステリック・スコーチャーと、オブセッスド・プレイヤー。その異常な銃を撃ったというのに、クロードは2歩ほど下がっただけで平然と次弾をリロードしていたのだ。


「だ、大丈夫、なんですか?」

「ええ、私であればこそ、ですが――しかし威力も精度も申し分ありませんが、特殊な専用スタンドが必要になるという点はデメリットですね。分解と合体の機構も面白いですが、はたして2連装にする意味があるのかは」


 分かりかねます、という言葉の代わりにクロードは引き金を引く。

 大きくはない窓と窓の向こうの木々のせいで視界は殺されているというのに、外から聞こえてくるのは爆音と野太い悲鳴。紛れもない殺人の証だった。


「こちらの拳銃は?」

「だ、大口径マシンピストルのマジェスティック・アナイアレイターとシステマティック・デストラクターです」


 マガジンの弾丸が尽きたアンチマテリアルライフルを作業台に置き、クロードは正方形のキャリーケースからマシンピストルを取り出して長いマガジンを装填する。

 分厚い装甲を纏う銀色のスライド、重厚でありながらしなやかなデザインのグリップ。言葉の通り大型だというのに、マシンピストルのグリップからは更に長いマガジンが顔を出していた。


 一丁ずつ両手に構えたクロードは安全装置をはずして、窓に銃口を向けたマシンピストルの引き金を引く。

 連なるように吐き出された弾丸達と共にけたたましい銃声の洪水が溢れ出し、窓から銃身を差し込んでいたタクティカルスーツの男達を吹き飛ばす。


「銃座などを必要とせずに大口径を連射出来るのは素敵ですが、連射が重要なのであれば大口径である必要はありませんよね。もっとも――」


 言葉を切ったクロードが反転して入り口の扉へと銃口を向けたその瞬間、扉が弾かれるように開かれ、ライオットシールドを構えた敵対者が姿を現す。

 ジュラルミン製の頑強そうな盾を前に、クロードは躊躇う事無く引き金を引く。吐き出された弾丸達は徹甲弾のようにライオットシールドに食い破り、さらにはタクティカルスーツの体を吹き飛ばす。


「――ライオットシールド装備した相手や、先ほどのアンチマテリアルライフルを併用しての砦攻略戦などでは威力を発揮してくれそうです」

「……マジかよ」


 平然と初めての銃器を扱っているクロードに、トニーは毒づきながら顔を引きつらせる。

 正面切っての殴り合いというケンカ格闘技だけでなく、銃の適正が高かったトニーでも、強い反動のせいで2種類の銃のテストプレイヤーには選ばれなかったのだ。


 しかしクロードは反動を吹き飛ばされる事もなく、高い命中精度を維持したまま銃撃を行っていた。それがトニーには信じられなかったのだ。

 人見知りの親友が頬を赤らめ、本人も気付かぬ内に呼んでいる男のファーストネーム、熱い視線を送っている事も含めて。


「最後は、これですか」


 2丁のマシンピストルをケースに戻し、今までのとは様子の違う細長いキャリーケースを開いたクロードは、笑みを浮かべていた顔を僅かに引きつらせてしまう。

 水平2連装式アンチマテリアルライフル、大口径マシンピストル。その次に姿を現したのは、グリップの上に取り付けられた真っ赤なデバイス、光を湛えるほどに黒い(さや)

 それは紛れもなく、太刀だった。

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