If Only Had A Blaze 4
「い、いえ。こちこらこそ昨日は止められなくてすいません。それと、取引受けていただけてうれしい、です。ありがとうございます」
「請けたのは、アタシじゃなくてクロードですから。離れの居心地はどうでしたか?」
「よ、用意してもらえて助かりました。警備もトトに一任してくださっておかげで、トトも安心して過ごせたみたいです」
つっけんどんな言葉を吐き出してしまうソフィア。どもりながらも歩み寄ろうとするドロシー。
そんな人知らずと人見知りな2人が微笑ましく、静音がクロードへと視線を向けると、クロードも穏やかな笑みを返してくる。
知らず知らずの内に2人が保護者のように顔をしていたのも、ドロシーが自分を疑っているのも気に入らないトニーは、舌打ちをして全長160cmほどの長方形のキャリーケースを乱暴に開ける。
カーキの合金の蓋から露わになったのは、2丁を並べてくっつけたような2連装式のアンチマテリアルライフルだった。
「ドロシー、準備は出来てんだ。さっさと始めろよ」
「ご、ごめんね、トト」
ドロシーはどこか冷たいトニーの言葉に、ソフィアと静音に頭を下げて作業台へと駆け寄って行く。細かな調整は昨日のうちに終わらせていたが、用意を任せてしまったトニーにこれ以上迷惑を掛けるわけには行かないのだ。
その道の途中でドロシーは転びそうになるが、トニーはそれを見越していたようにドロシーを支え、説明を促すように顎でクロードを指す。
その背を見送りながら、ソフィアはつい問い掛けてしまう。
「トニーさんとドロシーさんって仲悪いの?」
「んな訳ねえだろ、オレとドロシーは雇用関係を超えた親友だ。オレはアイツに救われて、アイツはオレが守り続ける。仲が悪いなんかありえねえよ」
ドロシーの作品の精度を疑えば怒り、ドロシーとの関係を疑えば怒る。ソフィアの中でトニーは暴力を許してくれる年上から、直情的な良く分からない人になりつつあった。
その中でもソフィアはトニーの救い、守るという言葉に引っ掛かっていた。
守るというのはトニーの護衛という立場から理解できるが、おどおどしているドロシーが腕っ節の強いトニーを救うというのが想像出来なかったのだ。
「こ、今回試して欲しい武装は3つです」
きっかけを作るように咳払いをしたドロシーは、トニーが用意してくれていたキャリーケースを指差して説明を始める。
それをどこか遠くに聞きながら、ソフィアはふと脳裏をよぎった嫌な予感にクロードへと視線をやる。
この離れはドロシー達に使わせ、トニーに警備の一切を任せていた。
忙しいクロードは時間がなかったからこそ、庭を切り開きながら進む必要が出来た。一部とはいえ、ストロムブラード邸の敷地内の警備をトニーに委ねるしかなかった。
だが、もしも、"しなければならなかった"ではなく、そうする"必要があった"なら。
そして、どうしてドロシーがクロードの蛇腹剣を知っているのか。
クロードがソフィアに覚悟を決めるように促したように、静音がソフィアを守る事で信頼を示したように。
「まずは水平2連装式アンチマテリアルライフルのヒステリック・スコーチャーとオブセッスド・プレイヤーです。2連装の形にはなっていますが、アタッチメントを解除する事でそれぞれ一丁ずつに――」
ドロシーがクロードに持たせた拳銃の説明をしていたその時、轟音と共に離れが大きく揺れる。
おそらくは迫撃砲を用いた襲撃。経験と直感から状態を把握したクロードとトニーは、視線をぶつけるなり近くの非戦闘員を避難させる。クロードはドロシーを作業台の下に引きずり込むように、トニーはソフィアと静音を押し倒すように。
「襲撃、か」
2回目の轟音と揺れに舌打ちをしたトニーは、2人の背に手を回して体を起こさせる。
「ソフィアはん、ドロシーはん、うち。襲撃を掛けるには十分ってことですかえ?」
「そういうこった――ドロシー達の所まで行く、2人ともオレの傍から離れるなよ」
今のところ直撃は免れているのか、幸いにも離れに被害ない。しかしいつ離れに迫撃砲が直撃して、天井が崩落してもおかしくはない。
その事から静音の問い掛けにおざなりに答えたトニーは、作業台以外にシェルター代わりになる遮蔽物はないと判断し、クロード達が居るほうを指差し、ソフィアは一気に眉間に皺が寄っていくのを感じる。
クロードとドロシーが頑丈そうな作業台の下に避難しているのは分かる。
だが、吐息が掛かるほどに近い距離で見詰め合っているその状況までは、理解してやる事はソフィアには出来ない。
真っ黒な燕尾服に映える白銀に近いプラチナブロンドの美男子。やぼったい格好をして入るが、ひまわりのようなブロンドが似合う美女。その限りなく絵になっているその光景が、ソフィアの嫉妬心を刺激してやまないのだ。ドロシーと仲良くなれそうな気がしていても、それとこれとは話が別なのだ。
「おい、いいか? もういくぞ?」
歩き辛い格好の静音の腰に腕を回したトニーは、整った顔を怒りに歪めるソフィアにどこか引いたように言って姿勢を低くしたまま走り出す。自分の親友に向けられた険しい視線に思うところがないわけではないが、その事を言及する勇気はなぜか出なかった。前日までは必要とあれば暴力すら躊躇わないつもりだったというのに。
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