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Kissin' The Flames  作者: J.Doe
Rollin' The Flames
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Fools On The Edge 2

「同じ問いを繰り返させていただきますが、家業は大丈夫なんですか?」

「信憑性が高いだけの情報で得た収益、ファイアウォーカーはんとの協力をしている事実があれば十分です。欲しくてたまらない情報と最強の傭兵とのパイプ、誰もうちに文句なんかつけられへん」


 確かめるような問い掛けの答えにクロードは十分だ、とカップを両手で持つソフィアへと向き直る。

 取引相手をあくまで執事(クロード)に限定した和装の客人。それはソフィアが置かれている状況を性格に把握しているという事であり、ソフィアに対しては何も要求しないという事でもある。不要な後ろ盾(あしでまとい)を得てしまう訳にはいかないソフィアの安全を買うには破格だ。


「ソフィア様、いかがされますか?」

「え、アタシが決めんの?」

「ええ。私はただの従僕、ソフィア様のご意思に従うまでです」


 そんな事を言われても、とソフィアはカップをローテーブルのソーサーに戻す。

 話を聞いていなかった訳でないが、全てを理解できた訳でもない。理解出来た事と言えば、自分の事を第1に考えてくれるクロードが乗り気であるということ。だが考えなしに話に乗れるようなソフィアに度胸などない。


 しかしこれは試練だ、ともソフィアは考える。


 優秀な執事に身を委ねれば万事上手くいくだろう。だがソフィアはクロードに誓ったのだ。

 辿り着くべき終わりへ、自分の足で歩み始める事を。

 ならばこそ、ソフィアは選ぶための一歩を踏み出す。


「……この取引は"Sheep Tumor"の価値を操作するものなのよね?」

「はい。より信憑性の高い情報を織り交ぜる事により、"Sheep Tumor"の情報を粉飾、およびソフィア様の安全を確保するものです」

「会社みたいにアタシ達を拘束したりは?」

「お互いがイーヴンの立場を保てる条件を提示していただいたため、それだけはありえません。隠れ家を用意していただく事はあるかもしれませんが、こちらから頼りきりになる事もありません」

「彼女に迷惑は本当に掛からないの?」

「そう仰っていただけました。もっとも、協力関係を結ぶために、私がお客様のために尽力する事はあるかと思いますが」


 自分の失言をさりげなくフォローしてくれたクロードに感謝しながら、途端に沸いた偏頭痛を誤魔化すようにソフィアはワンサイドアップにした赤毛の毛先を玩ぶ。

 つまりはクロードという傭兵が協力する事で、和装の客人がソフィアを守る1人となってくれる上に、ストロムブラード社と違ってソフィア自身には何も要求しないという事。

 クロードに負担を掛けてしまう事にはなるが、情報戦という洋平には縁遠い戦いをエキスパートに任せる事が出来るのは紛れもなく好手のはずだ。


「なら請けようよ。クロードがそうすべきだと思うのなら、多分それが正しいんだと思うし」

「もったいなきお言葉です」


 ひとまずは求められた答えに辿り着けただろう、と安堵するソフィアにクロードは恭しく頭を垂れる。事実ソフィアにはクロードという最強の切り札はあるが、それだけが手札なのも事実。選択肢などありはしなかった。

 頭を上げたクロードは和装の客人へと向き直り、再度恭しく頭を垂れた。


「お話を請けさせてください」

「はいな。御巫(ミカナギ)静音(シズネ)、しっかり務めささせてもらいますわ」

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