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ある男の手記

作者: 咲谷まき

ーー西暦2XXX年。

 人類は今、ある侵略者により住処を奪われ、地下シェルターでの生活を余儀なくされている。


 そう、奴らは侵略者……間違いなく人類の生活を脅かす侵略者だ。

 しかし、別に宇宙から来た地球外生命体や異世界から来た未知の生物を指しているわけではない。


 奴らは、この地球に生命が誕生したであろう太古の昔より、ずっと地球で生き続けている「地球内生物」なのだ。

 それが今、長きに渡る日陰生活を捨て、人類に牙をむいた。


 ーー発端は戦争だった。


 ある時、人類は国の存亡をかけ、これまでにない戦争を起こした。

 その結果、地上に残されたのは見渡す限りの死体と漂う死臭。


 一般市民の食料はつき、飲み水すらままならない。

 地上には、すでに人間が快適に暮らせる場所などどこにもなかった。


 僅かに残された我々人類は地下シェルターにその居住を移し、しばらくの間窮屈な生活を強いられることとなる。


 ーー地下シェルター。


 ここは見てもらってわかるとおり、何もない。

 地下十メートルの位置に作られた、分厚いコンクリートの壁で固められた、ただの箱だ。もちろん窓なんかない。

 避難した人数から算出された、国民一人一人に与えられた空間は約二畳。

 風呂はない、トイレは共同。

 シェルター下に大きく掘られた穴に垂れ流すだけのものだから換気の行き届いていないシェルターではかなりキツい。 入ってきてすぐにわかったかな?

 まぁ、しばらくすれば慣れる。

 慣れるまでの我慢だ。頑張ってくれたまえ。


 話が逸れてしまったな。本題に戻そう。


 そして、ようやく戦争も終わり、地上に出られる日が近づいてきた頃には、すでに奴らの勢力は人間ではどうすることもできないレベルに達していた。


 奴らは、人類が地下シェルターにその身を隠した頃を見計らって地上に這い上がり、死体を貪り血を啜った。

 生命力の強い奴らにとって、まさに地上は楽園だったに違いない。

 さらに、子孫を増やし今も尚その勢力をのばしているであろう。


 このシェルターも何時までもつかわからない。

 奴らは人肉の味を覚えたのだ。

 このシェルターが奴らに見つかれば生きている我々は餌となるしかないだろう。


 もし、これを読むことのできる人類がいたなら心して欲しい。

 奴らは手強い。


 しかし、必ずや根絶やしにして欲しい。

 この地球を奴らの好きにさせてはいけない。


 ーー地球は人間のものなのだから。


 こうして書いている今、気づけば足元に奴らの偵察隊が数匹這い回っている。

俺の人生も終わりに近づいたようだ。


 最後に、侵略者の名前を記してペンを置くことにする。


 黒く光ったその身と不快な音で長きに渡り、人類を恐怖に落としめ続けた生物。

 その名を口にするのもおぞましい存在。




 

 侵略者の名は「G」。



おわり

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