ボクノハジマリ
風が通る朽ちた廃屋、生々しい生活感が残っている。
なぜなら、なぜならここは数十分前まで人が生きていた、否、まだ生きている、瓦礫の落ちた墨にたたずんで涙を流す少年と、その少年の足を掴んでいるもう動かない腕
うらみながら死んだ親の腕、なぜお前だけが、お前が死ねばよかったのに、一生許さない
そういって死んだ
たたずむ少年はその足をそっとはずし、冷たいその腕を知ってまた涙を流した
「恨んでやる、この体が朽ちるそのときまで・・・!」
言葉を終える瞬間、爆風が吹き荒れる、死体は脳が飛び出し、下半身と上半身は分かれている、そんな親の死体を見た。
「あ・・・」
少年は恐怖のあまり逃げ出した
そこが戦場だと知らずに
MS、人型ロボット、さまざまな呼び方があるが、これはそんなものではない、
粒子・・・エネルギー粒子と呼ばれる物を増幅、稼動に利用し、人の十倍レベルでの使用を可能とした大型稼動ロボット
オペレーションアーマー、エネルギー粒子の副産物による神経接続システムにより、人の動きと同等の動きを可能とした、しかしそこにはある重大な欠点があった
神経接続システムには、痛覚すら共有するのだ、粒子がでれば動かなくなるしメインカメラをやられれば最悪、死ぬ
機体設計にもよるが、この神経接続システムは粒子の伝達速度、つまり皮膚が粒子を通る速度、そして脳の粒子への反応速度に準拠する。
遅ければ痛覚は軽減されるが動きが遅くなる。
早ければ動きは快適になるが痛覚は増える。
そして粒子は人へ害を与える、精神を蝕み、やがて生きるための機能もなくす
それに乗って人が戦争をしている
信じられない、自ら死ににいくようなものだ、倒されれば死に、生きて帰っても害が残るかもしれない、そして
「人が死んでるのに・・・なんで・・・」
飛んでくる砲弾
死ぬ
よける方法は?どこに逃げればいい?こんなの・・・
走る、誰も追いつかないくらい、誰もついてこれないくらい、でも遅い、まだ生存できない
目の前に赤い機体が見える。
『民間人か!乗れ!』
ハッチが開き、機械の腕に包まれる
その腕はとても冷たかった、だけど、死体の腕とは違った、とても心がこもっていて
そして瞬時にはなれた
コクピットに放り込まれたおれは一瞬の痛みと、目の前の惨事に驚いた
ほぼ平らな場所になっている、ビルも、商店街も
「あ・・・あ・・・」
パイロットが歯を食いしばりながら言う
「悪いが・・・これが戦争だ!」
やっと理解したのだ、なぜ死にに行くようなところにいくのか?
守りたい家族を守れるかもしれないからだ
なぜ精神が壊れるかもしれないのに機体に乗るのか?
それが仕事だからだ
結局ニンゲンは自分の身内しか考えないんだ
爆風が吹き荒れる
突如、真っ暗になった
「何が・・・ちょっと!なんで動かさないんです!」
パイロットに触ると、ひんやりとして動かない。
「ああ・・・今日は厄日だ・・・」
すると耳障りな音が響き、心を不快にさせる
『警告、パイロットの死亡を確認、自爆装置を起動、ハッチを開きます』
ゆっくりとハッチが開き、のっそりと俺は立ち上がり、すぐ死ぬだろう戦場へ、生身で赴いた
あれ?ガンダムじゃね?と思った人、先生怒らないから手を上げなさい