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学園軍記スクールブラッド  作者: 級長
スクールブラッド第一万六号「桜花学院の乱」
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エピローグ

 掲示板のカキコミ

 1「感動した!」

 2「何が?」

 3「桜花学院でクーデターあったって?」

 4「何か学ランの女の子が暴れてたって話が」

 5「あれ男じゃね?」

 6「倉木闇人は男だろ? 樹海中のエース」

 7「樹海中学か」

 8「鮫島学園の青嶋牙子とタメ張れるんじゃね?」

 9「最強議論は荒れるから辞めようぜ」

 桜花学院 予備学科校舎 保健室


 「なんだ。あいつら逮捕されたんだ」

 事件から数日後、私はベッドの上で新聞を広げて読んでいた。全身強打と火傷で私はしばらく入院することになったが、桜花学院の理事組織が事態の経過を見る為に予備学科校舎の保健室に入れたのだ。

 新聞は初めて読む。学院では外の情報を選定してプリントで教えており、新聞というものも置かれないのだ。

 新聞には、桜花学院に侵入した反貧困団体が逮捕されたとある。理事長は完全に事故死扱い。何をどうしたらあんな事故になるか不明だ。

 「もう起きてて大丈夫なのか?」

 「紅さんこそ、もう大丈夫なんですか?」

 私のベッドの横には紅さんが立っていた。彼女は予備学科のではなく、私が着ていたものと同じ制服を着ていた。もう包帯もとれている。怪我に関しては予備学科生全員がもう完治してるだろう。

 未だにパジャマで包帯グルグルの私とは違う。神力で傷を治したらしい。紅さんが予備学科の制服を着ていないのは、なんと予備学科が廃止されたからだ。

 いや、正確には予備学科だけではない。桜花学院全体が経営破綻で無くなるのだ。あの事件で理事長が死んで、次の理事長を決める争いが起きたそうである。だけどその際、理事長が学院の予算を使い込んでいたことが明らかになり、なだれ込む様に経営破綻。

 生徒達はそれぞれ別の学校へ。何とか似た様な学校を探す人もいたけど、男性をここまで排除した学校は無いだろう。

 「紅さんはどこへ行くんですか? 学校」

 「考え中だ」

 私はふと紅さんに転入先を聞いてみたが、まだ決まってないらしい。私はもう決めて、制服も用意してあるんだけど。

 「霊歌も今日で退院だな」

 「ええ」

 「じゃあ、私は行くぞ」

 紅さんは病室を出た。また、会えるだろうか。多分、戦ってるところは見られないだろうけど。予備学科が無くなって、紅さん達は戦う必要が無くなったのだ。

 一人になった私は、転入先の制服に着替えた。緑色のセーラー服。スカートは長く、濃い赤色のスカーフが特徴的だ。

 私は闇人の通う学校を突き止め、そこへ転入することにしたのだ。学校の名前は樹海中学。元々富士の樹海にあった学校だが、樹海周辺が開拓されて町になったので、今は樹海にあるわけではない。

 倉木闇人はたまたま助けた私の友達、更から聞いて仇討ちに来た。何故わざわざ、見ず知らずの人間の為に怒り、こんな場所まで来たか私にはわからなかった。だけど、闇人の過去を見れば一目瞭然だった。

 闇人は両腕を獣の様に変身させることが出来る。ただでさえ変身系の神力は差別されやすいのに、闇人のいた環境はさらに特殊だった。

 『斬愚の家はボクの実家だけど、倉木闇人って男がその家の娘に手を出してから没落したらしい。それから、そいつと同じ神力を遺伝で受け継いだ子供が倉木闇人にされて、殺される』

 闇人は自身の家を没落させた仇敵と同じ力を持っていた。斬愚の人達はそんな闇人を虐待して、最終的には殺し、仇敵に打ち勝った気になっていたのだ。

 その過程で闇人は多くの傷を負っただろう。闇人が更の為に怒ったのも、それだけの痛みを知って、他人の痛みも理解できたからだろう。

 余談なのだけど、斬愚家の人達は紅さんと違い、没落した家を建て直せないだろうと私は思う。紅さんは予備学科に転入させられて、再興の手立てを断たれても希望を失わずに生き残った。だけど斬愚の人は仇敵と同じ神力を持つ子供に仇敵の影を見て、それを殺して勝った気になるだけだ。同じ没落した者同士だけど、全然姿勢が違う。

 私は荷物をまとめ、保健室を出た。予備学科校舎の保健室にはもう誰もいない。

 私は初めて予備学科校舎に降りてきたエレベーターに向かう。そして、エレベーターに乗って地上へ上がる。エレベーターを降りた時、私の目の前には闇人がいた。

 「退院おめでとう」

 「それを言うためだけに来るのが貴方らしいわね」

 闇人は私の退院を見届ける為だけに来た。どのみち、同じ学校に通うことになるのだからその時確認すればいいのに。でも、それもまた闇人の優しさなのだろう。

 私は結局、ある目的の為に闇人に会わなければならないので好都合なのだが。

 「! その制服は?」

 あのボンヤリした闇人が、私の制服を見て驚いた。まさか私が樹海中学に来るとは思うまいよ。

 「卒業までの短い間だけど、よろしく頼むわね」

 「む……」

 闇人は気恥ずかしそうに頭を掻いた。私は本題に入る。これの為に、まず退院したら闇人に会おうとしていたのだ。

 「さあ、早速更のいる場所まで案内をお願いするわ。会いに行くって決めたからね」

 闇人は私の言葉に黙って頷き、先を歩き始めた。ここから先は、私の新しい人生だ。箱に仕舞われるだけの生活は終わり。私は外の世界で生きる覚悟を決めて、闇人についていく。

 報告書

 今回の事件は一つの学校を崩壊させるほどのものであった。よって、文部科学省は防衛学科導入以来から神力にまつわる学生が起こした事件をまとめた資料、『学園軍記』へ今回の事件を記載することとした。

 学園軍記への記載。つまりは今回の事件が国際社会がいうところの『スクールブラッド』に指定されるということだ。

 今回の事件はスクールブラッド日本国第一万六号『桜花学院の乱』として学園軍記へ記載された。

 文部科学省は事件再発の防止に向け、対策に追われるが無駄であろう。全てのスクールブラッドに適切な対策が取れないから、一万回以上もスクールブラッドが起きるのだ。

 スクールブラッドは戦争。人類が戦争を無くせない様に、スクールブラッドも無くせないのだ。

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