番外 ハロウィンホラーナイト
クエスト名:ハロウィンホラーナイト
依頼主:パンプキン公爵
前金:50000円+交通費
報酬:50000円
場所:地下鉄東山線栄駅~新栄町駅間
概要
現在、封鎖されているエリアに仮装をした若者達が集まっています。あのエリアはクリーチャーの巣になっており、彼らは『ジャッカーオランタン』というクリーチャーに寄生されて、誘導されたと考えられます。
このクリーチャーは人間に寄生し、クリーチャーにわざと食べられることで糞として広域に拡散する性質があります。早めに寄生された若者達を撃破して下さい。また、救助できるのなら救助して下さい。
なお、ジャッカーオランタンの『親株』を破壊した場合は報酬を追加します。
地下鉄東山線 栄~新栄町間通路
地下鉄の駅と駅の間には、地下街が存在する。これは隕石襲来当時、クリーチャーに対抗して日本人が作ったシェルターなのだ。今は放棄されてクリーチャーの巣だが、今なお通電していて明かりがあり、崩落の危険もないところに日本人の技術的変態さを感じずにはいられない。
「こんな場所あったんだな」
「知らなかったんですか?」
このミッションを受けたのは朝凪一舞とクラリス。新栄町駅のシャッターを開け、地下街の中に侵入する。消耗する能力使用に備え、一舞はキャンディをくわえる。
「日本のサムライガールが、世界でも有名なこのシェルターを?」
クラリスは意外そうに言った。一舞より二つ年上の彼女は、いい意味でハクロウ高校のブレザーが似合わない、褐色の肌に少し癖のある黒髪が特徴の大人っぽいエキゾチックな少女だ。武器は槍と斧が合体した様なハルバードで、故郷スイスの傭兵が愛用したものである。
「いや、俺はサムライでもなければガールでもないんで」
一方、朝凪一舞は黒髪を伸ばした、一見女の子にも見える男子。武器はロングソードだが、クラリスが初めて見た時は太刀を使っていた。ソードは背中に背負っている。
「あれ? 武器変えました?」
「本業はこっちです。あれは上杉先輩に試させられていただけです」
武器変更の背後にあるのは15級長『武器商人』上杉四季。彼の神力故に斬る武器をいろいろ試させていたのだ。
「さて、目標は『ジャッカーオランタン』に寄生された人間の活動停止と、親株の撃破ですね」
「作戦としては、俺がクラリス先輩を親株の場所まで護衛、親株をクラリス先輩が撃破、って感じです」
二人はブリーフィングの内容を反芻し、地下街を歩いていく。地下街は出会い頭に襲われ易い。そこで、クラリスは自分の神力を使う。
「変身!」
銀髪になり多少髪の量が増え、耳が頭に付いた。スカートからは尻尾も出ている。これがクラリスの力、所謂『変身系』というやつだ。狼みたいな姿になることで嗅覚などが冴え、敵を察知しやすくなる。この能力は海外では『本能と理性のハイブリット』として、日本ではケモナー的な意味で人気がある。
尤も、人気があるとはいえほぼ先天的なものなので後から手に入れるのは難しい。自分の能力を書き換えたいなら、クリーチャーの重要な器官を移植するしかない。
二人は十字路に差し掛かる。そこでクラリスは何かに反応した。
「一舞、右に敵3!」
「よっしゃ!」
一舞はそれに呼応して、曲がり角に飛び出す。だが、何を間違ったのか左に向かってしまった。
「一舞くん、後ろ後ろ!」
「あ、ヤベ、左右間違えた!」
その結果、敵に背中を見せてしまう。敵は学校の制服を着た学生達だが、頭はカボチャだ。そのカボチャには、ジャックオランタンみたいな顔が付いていた。
「パンプキンヘッド? もう助からない!」
「セイヤー!」
この状態になるまで寄生されれば、もう助ける手段は無いことくらい一舞にもわかる。よって、振り向き様に一舞は三人を斬った。パンプキンヘッドを確実に破壊し、動きを止める。
「パンプキンヘッドにまでなったら、助からないのね」
「神力が扱えれば、ちょっと腹下すだけで済むのにな」
学生達の着ている制服、その襟元を中心に渇いた血の染みがある。これはジャッカーオランタンが人間の頭部程に成長した時、宿主の頭を食いちぎって乗っ取った痕跡だ。ジャッカーオランタン、則ちパンプキンヘッドが本体であるため、心臓を貫いても死なない。この状態をパンプキンヘッドと呼ぶ。
交通手段が多様かつ長距離であるため、ジャッカーオランタンは人間を繁殖に使う。
「割と躊躇いなく斬るね。スイスの国防軍の入隊試験にもパンプキンヘッド討伐があって、みんな人殺しに抵抗あって結構難関なのに」
「ま、こんなもんですよ。焼いて下さい」
クラリスは赤い鱗や甲殻で出来たハルバードを振るって炎を出し、死体を焼いた。ジャッカーオランタンの実をクリーチャーが食べ、種が拡散して蔓延するのを防ぐためだ。
「へぇ、神力流すとこうなるんですね。一舞くんも試したら?」
「それ、上杉先輩がくれたやつですよね」
四季はこのクエストに合わせ、炎を出せる武器を用意した。クラリスの『ガランダバード』はあの15級長『燃える刀剣』烈火紅蓮の大剣にも使われたクリーチャー、ガランダランダの素材が使われている。
一舞のロングソードは髄に神力を流すと発火する『グレンジシ』の素材を利用した『紅蓮剣シラヌイ』だ。
「それより、右と左を間違えましたね?」
「たまにゴチャゴチャに……」
「だったら……お箸持つのはどっちですか?」
クラリスは左右を間違えた一舞に対策することを決めた。一舞は右手を挙げる。
「じゃあ、お箸とお茶碗で合図します」
そこで、お箸とお茶碗で左右を示すことにした。
「お箸の方に敵4!」
「よし!」
一舞は順調にパンプキンヘッドを排除していく。彼の武器からも炎は出るので、問題なく燃やせる。むしろ、飛ばす斬撃に炎が乗るため効率がいい。
「前方、後方から敵5ずつ!」
「セイヤーッ! で、あっちにうおりゃーッ!」
狭い地下通路に一舞が渾身の突きを放つと、熱風のカマイタチが舞ってパンプキンヘッドを刻む。熱風、とはいえ非常に高熱なので見た目は完全に火炎放射。
「【黒龍咆】……!」
とにかくパンプキンヘッドが多いのだが、これくらい一舞には朝飯前。これがスクールブラッド認定されたら記録が伸びるぞ、とクラリスは思った。
「広場に出ましたね」
「あれは!」
しばらくすると、広場らしきところに出た。そこには、カボチャが豊作だったという。全てジャッカーオランタンなので食べちゃいけない食べられない。
その中央にある、巨大なカボチャがフラフラ歩いてくるパンプキンヘッドをむしゃむしゃ食べていた。こうやって栄養を補給しているのだ。
「あれが親株か!」
「排除します!」
目標の親株を見つけ、クラリスが走り出す。妨害しようとするパンプキンヘッドは一舞が斬撃を飛ばして倒す。
大量のパンプキンヘッドが道を塞いでいるので、一舞はとっておきの必殺技で片付けることにした。クラリスは飛び上がり、ハルバードを振り下ろした。
「とう!」
「日本式西瓜割り!」
まず、パンプキンヘッド達が腰の辺りで真っ二つにされ、風景ごとズレる。そのズレが戻った時、斬られた場所から臓物をぶちまけ、燃え上がる。そしていつもの様に、後で技名を言う。
「【黒龍斬】!」
クラリスの一撃を受けた親株は真っ二つに割れて死んだ。切り口から発火し、種をクリーチャーが食べる心配もない。
「クラリス先輩、技名はもうちょっと考えて下さい」
「黒龍斬に言われたくありません……これは?」
技名についてあれこれ話していると、今度は人間と同じ骨格の犬、ドギーマンに囲まれていた。二本足で歩く獣人だが、クラリスと違ってあちらは本能一辺倒の獣だ。そのドギーマンもまた、パンプキンヘッドだ。それも広場に入る通路からぞろぞろやってくる。
「まんまと引っ掛かったな。騙されたとも知らず、馬鹿な奴だ」
「お前は……依頼主の!」
物影から現れたのは、依頼主であるパンプキン公爵だ。頭にカボチャを被った黒マントである。
「私はジャッカーオランタンを制御する力を手に入れた! 死んでもらうぞハクロウ高校!」
大量のドギーマンにさしもの一舞とクラリスもピンチ、と思われた。だが、クラリスは腕に時計の様なものを付けていた。その腕時計のボタンを押すと、電子音が流れる。
「ふ、ファイズアクセル?」
『Start up』
するといきなりクラリスの姿が消え、次々にドギーマンが切り裂かれていく。
「ひ、ひぃ!」
『3、2、1……』
それに恐れをなしたパンプキン公爵は早々に逃げようとする。それでも、護衛のドギーマンが撃破され、いつの間にかクラリスに抜かれていた。
『Time Out』
「セイっ!」
時間切れと同時にパンプキン公爵は回し蹴りで倒され、逮捕された。
「いやー、やっぱり日本製の時計は優秀ですね」
「玩具ですけどね」
クラリスは10秒間程度だけ音速になれる。その目安を計るために、ストップウォッチの玩具を使っていたのだ。
二人はパンプキン公爵を捕獲し、そのまま帰還した。こういう、たまに罠の様な依頼がある。ただ、圧倒的力を持つ者に、その悪戯は無意味だ。
政府広報 スクールブラッド速報
名古屋の地下鉄東山線栄、新栄町駅間で起きたジャッカーオランタンによる被害をスクールブラッドとして学園軍記に記録しました。
犠牲者100名余りの惨事ですが、今回の事件は防衛科の履修で十分防げました。教員連の感情的な規定違反が惨事を招いた事例は多数あります。
にしても毎回記録が残る朝凪一舞、ホント運ねぇな。




